「グラーキの黙示」シリーズについて


 「グラーキの黙示もくじ」はイギリスの作家、ラムジー・キャンベルの短編集です。


 1、2巻目はラムジー・キャンベルが手掛けた短編集「cold print」をやくしたもので、3巻目は「The Last Revelation of Gla'aki」という中編を訳したものとなっています。


 そのタイトルの通り、『グラーキの黙示録』が登場する作品が多いです。


 『グラーキの黙示録』というのは、どこぞのカルト宗教が生みだした12巻からなる魔術書――この設定はTRPG発なのですが、グラーキの黙示3では作者に否定されてます。よっぽど気に食わなかったのでしょうか。


 作品によっては、ショゴスだったりミ=ゴだったり、アザトース(貝のすがた)が現れるものも。「ユゴスのあな」では、ミ=ゴの風俗を垣間かいま見ることができます。汚い話なので書きませんがたぶんアレ。


 基本的にはクトゥルフみが強いものがほとんどで、特に1巻に収録されている初期のものは、ほぼほぼラヴクラフトのオマージュみたいな感じがあります。


 逆に2巻目は、アイホートやらイゴーロナクやらが出てきて、作者のらしさというものが現れてくるようになってきます。


 「パイン・デューンズの顔」はラヴクラフトにはない若者の恋愛模様を織りまぜていますし、「砂浜の声」では神話的要素をあえて少なくしているそうです。


 3巻目では、グラーキの黙示録という魔導書がどんなものかが描かれています。グラーキの黙示録の一節を抜粋ばっすいしていることもそうですが、TRPGの設定を作者自ら否定しているのは興味深いところです。


 ただ、少し1、2巻と比べるとあくびが出るほどのんびりしてます。でもたぶん、わざとしてるんだろうな、という感じがあります。


 それこそ、グラーキが送り込む夢にまどろんでしまうかのような錯覚さっかくを読者に与えるために。






 本自体としては電子書籍版がありますので手に取りやすいと思います。値段はお高めですが、注釈ちゅうしゃくとか解題かいだいもあります。さらに1巻目には、作者のラヴクラフトに対する考察や、自作の解説まで収録されています。


 ラヴクラフトをぎつつも新しい神話、ぜひいかがでしょうか。

 

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