第43話 幼い推しが可愛すぎるのですが
昨日更新できなかったこと、および本日(10/12)の更新が遅くなってしまい大変申し訳ございません。
▽▼▽▼
お母様が初めて主催するお茶会。
本番の日はあっという間にやってきた。
お父様への告白を乗り越えたお母様は、それ以上に緊張することはないと落ち着いた雰囲気で会場へと向かった。
(よし、私も行こう)
今回出席することはしないが、行く末を見届けるために隠れて覗きみようと動き出す。
(お茶会の会場は既に下見済み。隠れられる場所も見つけてあるわ)
今回は屋敷の大広間を使ってお茶会を行うことになっている。大広間は二階建ての構造。当然ながらに会場は一階なので、私は二階に身を隠すつもりだ。
音を出さないように二階からの入り口を開ける。
お母様はお客様を出迎えるために、一階の入り口にいるので、気が付くことはまずないと思う。
(二階ならどこでもいいかなって思ったのだけど……意外と下見をしてみるものね)
そうっと隠れたところで、下の階から声が聞こえ始めた。
「ようこそいらっしゃいました」
「ご招待いただきありがとうございます、ルイス夫人」
さすがに入り口の方は見えないので耳を澄ませていれば、突然背後から声がした。
「何してるの、姉様」
「!!」
バッ!! と勢いよく後ろを向けば、バランスを崩して転びそうになる。
「わっ、危ない」
「……あ、ありがとうジョシュア」
「怪我はない? どこか痛むところは」
「ないわ、大丈夫よ」
ぐっとジョシュアに引っ張られたおかげで、床に体を叩きつけずに済んだ。
(……意外と力が強いのね)
まだお互いに子どもだと思っていたが、怪我をしないように助けてくれたジョシュアの力に少し驚いていた。
「本当に? 今僕が強く引っ張ったから」
「おかげさまで助かったわ。本当にありがとう」
心配そうに腕を見るジョシュアに、微笑みながら無事を伝えた。
問題ないことがわかると、ジョシュアはもう一度純粋な疑問を浮かべる。
「それで、何してるの?」
「お母様を見届けようと思って」
「こっそりと?」
「こっそりとよ。私は招待客ではないもの」
「ふーん……」
疑問が解消されたジョシュアは、流れるように話を続けた。
「じゃあ僕も見届けよう」
「あら。今日の授業は終わったの?」
「うん。授業終わりに部屋を出たら姉様がこそこそしてるのを見つけたんだよね」
「そ、そうだったのね。そんなに怪しかったかしら」
「うん。凄く」
忍んでここまで来たつもりだったが、見る人が見れば目立っていたようだ。その事実にどこか敗北感を覚えてがっくりとする。
「こっそりってことは姉様は隠れてるんだよね。……僕は邪魔になるかな」
(え、可愛い)
しょんぼりとしながら辺りを見渡すジョシュア。眉の下がった表情は、言い表すことができないほどに可愛らしい。珍しく年相応な姿を見れて反射的に好きが浮かび上がった。
「ぜ、全然そんなことないわ。一緒に隠れましょう」
(あの表情は一生忘れないわ。宝よ、宝)
あくまでも推しに迷惑な態度にならないよう、興奮しないように心を抑えながら、姉らしく冷静な対応をした。
「ありがとう。隣にいるね?」
「えぇ、もちろん」
(どこでそんな上目遣い覚えてきたの……! ちょっと、どうして今日に限ってこんなに可愛すぎるのよ……!!)
あまりにも可愛すぎるジョシュアに、心は終始乱れていたものの、なんとか顔に出さないように踏ん張っていた。
私が謎の葛藤をしている間に、招待客のほとんどが会場入りを済ませていた。
「さすがルイス侯爵家。とても豪華で綺麗な会場ですわね」
「それに加えてオフィーリア様の会場づくりが秀逸ですわ」
「えぇ、とてもセンスがありますよね」
ご夫人方の楽しそうな会話が聞こえると、私まで嬉しくなってしまった。お母様が時間をかけて作った会場は、ご夫人方にかなり好評のようだった。
「それに……やはりオフィーリア様はお綺麗よね」
「同じことを思いましたわ。というよりも、今日は格段にお美しくないかしら……!?」
「えぇ。もう、背後が輝いておられますよね」
他のご夫人方からもお母様に好意的な言葉が聞こえてきた。
(わかります、わかります。お母様、凄くお綺麗ですよね)
うんうんと一人頷きながら、もはや気持ちはお茶会に参加しているつもりだった。
「私、今日こそはオフィーリア様とお話ししようと思ってて。もちろんご挨拶以外に、ですわ」
「まぁ、抜け駆けは駄目よ」
「いいでしょう。もうあの方はいらっしゃらないんだから」
(抜け駆け……あの方……)
気になる話に注目して話を聞き取れば、やはりお母様は人気が高いことがわかった。
(わかる人にはやっぱりわかるんだわ。……キャロライン様とお母様、どちらが支持されているかは明白ね)
盗み聞きをして情報を得るたびに、お母様が多くの方々に良い意味で関心を持ってもらえていることが確信できた。
「お母様、人気者だね」
「えぇ……!」
それが娘として嬉しくて、凄く誇らしかった。
入り口の閉まる音がすると、ようやく二階の端からでもお母様が見えるようになった。
「皆様、それではお茶会を始めましょう」
▽▼▽▼
いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
感想をお送りいただき本当にありがとうございます。全て目を通して励みにしております!! 私の個人的な事情で大変申し訳ないのですが、少々多忙な時期の為、返信は気長にお待ちいただけますと幸いです。
遅くなり申し訳ございません。今後ともよろしくお願いいたします。
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