早く大人になりたかった

子供の頃はとにかく早く大人になりたかった。


大人は学区外にも自由に行けるし、好きな仕事をしてどんな高い物でも買える。大人になればできる事が増えるからだ。


先日ある飲食店を訪れた。

そこにはセルフで綿菓子を作れる機械が置いてあった。


子供の頃よく親に連れて行って貰ったラーメン屋にも同じ機械があった事を思い出す。


そんな郷愁にかられ、久しぶりにまたその綿菓子が食べたくなった。

しかし僕は綿菓子を作る事ができなかった。


手順自体は機械にザラメを入れ、割り箸で綿を絡めとるだけで難しくない。

子供でもできる。

しかし僕は綿菓子を作らなかった。


なぜならその日は土曜日のランチ時だったこともあり、周りには子連れの客で溢れかえっていた。


その中で成人男性が子供に紛れて、綿菓子の列に並ぶのは生き恥を晒すようなものである。


大人になってできる事が増えた。同時にできない事も増えたのである。

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