第四話 合同実技演習、その準備

「さて全員揃ったな。では三限目を始める。諸君、明日は待ちに待った合同実技演習だ。今回演習を共にするのはヨハネス国軍第12旅団だ。かの有名な独立聖歌大隊の所属する旅団だな。」

 ヨハネス国軍は全12の旅団があり、その中でも唯一独立して活動可能な部隊が第12旅団所属の独立聖歌大隊となっている。本来であれば1大隊が独立して活動することは不可能だが、聖歌大隊入団時の厳しい審査、及び1大隊での戦力レベルが1連隊級ということを考慮し、特例とされているのである。

「先生、聖歌大隊ってあのアース隊長が有名なあの部隊ですか。」

「ああ、その聖歌大隊だ。例年この合同演習は行われるが独立聖歌大隊が来て下さるのは100年以上続く我が校の歴史上二回目になる。要は滅多にない貴重な経験をすることができるというわけだ。毎年ヨハネス国軍総隊長ランス殿に依頼をして軍の中から部隊を派遣してもらうよう取り合うが名簿を見せた瞬間にokが出たくらいだ。ジャディを初めとしたメンバーを相手にするなら聖歌大隊から見ても充分訓練になると判断したらしい。その評価には自信を持てばいい。だが決して傲るなよ。相手は実戦のプロだ、君たちとは経験値が違う。そのことを考えて今から4人1組みでグループを作ってくれ。」

「先生、装備に関してはいつもみたいになにか制限とかあるんですか?」

 本来であれば実戦訓練でない限り、安全のため生徒は魔道具、または衣服などに制限がかけられている。

「その事だが、今回の演習は装備の制限はなしだ。独立聖歌大隊が相手ということで全力を出せるようにとの事だ。他に質問はないな。なら各自解散して明日の演習に備えて準備しろ。それからグループだが今から名前を呼ぶものはアース隊長の方から指名が入っている、では読み上げるぞ。1人目、ジャディ」

「やっぱジャディは入ってくるよな」

「当然よね」

「静かにしろー。では2人目、マヒロ。3人目、カナタ。4人目、リーナ。今名前を呼びあげた4人でグループを作ってくれ。あとは自由に組めばいいぞ。」「それからマヒロとジャディ、少し話があるから来てくれ。」

 俺とジャディはマフユについて行きながら、不安になっていた。

「マフユちゃんに呼び出しの内容ってなんだと思う?」

「よくわかんねぇけど、演習メンバーの中で指名されてるからそれに関することだとは思う。」

 そんなことを話しているとマフユの教官室に着いた。

「よし、中に入ってそこにでも座ってくれ。」

 そう言われて俺らはマフユと向かい合う形で座った。

「早速だがマヒロとジャディ、お前たちにひとつ明日の演習についてアドバイスしておく。あのアースがお前たちを指名してきたということは、おそらく明日の模擬戦で貴様らとひと試合するつもりだってことだ。ただでさえ第12旅団のメンバーは戦闘に重きを置いてるってのに、その上聖歌大隊の、それもアースが指名までしてくるなんて。あいつは称号持ち《ディジクター》だからな。あいつが初っ端からぶっ飛ばして来るとは思わんが十二分に警戒していけ。」

 称号持ち、それはヨハネス国内における一種のステータスとも言える。と言ってもなるのは簡単ではなく、魔法ありの戦闘において1小隊から1中隊程度の戦力を発揮したと認められる者にのみ送られるものであり、称号持ちの存在自体貴重なものだ。

「それは指名が入った時点で重々承知ですよ。しかもアース隊長となれば尚更。それはそうと先生ってアース隊長の知り合いなんですか?」

「アースと私は同期だよ、学生時代は光の聖王アース、氷の女帝マフユなんて呼ばれ常に競走し続けるライバルだったんだよ。この学校から出た称号持ちのうちのふたりがアースと私って訳だ。これ以上アースについて話しても何も進まないからこの辺で終わりにするか。まぁとにかく全力で当たっていけ。貴様らならもしかしたらいい所まで行けるかもしれんからな、期待してるぞ。」

「どこまでやれるかわかんないですけど、やれるだけやってみますわ。」

「やはり、貴様ららしいな。頑張れよ。よし教室に戻れ。」

 そうして俺らは明日に控える演習の準備を進めた。

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魔法専門学院の魔術使い piko @piko-kumityou

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