シフトアップ
実桜みみずく
華の金曜日
この1週間、仕事がそれなりに忙しく金曜日にはだいぶ疲れがたまりへとへとになっていた。この会社に入社してから3年になるので、学生時代考えたくもなかった社会人生活にもすっかり慣れ、基本的には自分1人で仕事をこなすようになっていた。しかし今週から自分に割り当てられた仕事は先輩のバックアップ。相当大きい案件らしく、先輩はかなり優秀だがそれでも1人では厳しということらしい。その先輩が厳しいというのだから自分にとってもっと厳しいというのは考えなくてもわかる。
くたびれているのが外からでも分かったのか先輩が、
「長谷川、今日は定時で上がれよ。」
「でもまだ、」
「いいから、俺も今日はちょっと残って帰るから。今日はもう休め。」
「はい!ありがとうございます!」
「三連休明け、勝負だからな。」
先輩に挨拶をして会社を後にする。この先輩の気遣いは本当にありがたい、仕事もできて気も回せるので何をどこから真似すればいいかすらわからない。そしてもう一つありがたいのが明日からの3連休だ、帰り道の駅前は明日からの休日に浮かれた大人たちがすべてを忘れるようにはしゃいでいた。
ふらっと居酒屋に入ってしまいたかったが未だに1人○○ができたことが無いので今回もあきらめてしまった。仲のいい同期はまだ残業をしているのでまっすぐ家路についた。
とは言えせっかくの週末なので自宅の棚にある瓶に手を伸ばす。”フォアローゼス”と”ジャックダニエル”。迷ってフォアローゼスに手を伸ばす。ウイスキーはバーボン派だ。「何とかの香りが~」とか「後味の深みが~」とか言えたら格好もつくが何となく自分の口に合うのだ。無理に理由を考えて勉強なんてしようものなら逆に嫌いになってしまいそうなのでバーボンについてこれからも深く知るつもりはない。
今日はロックで飲むことにした。これが自分なりの華の金曜日。シックな服でも着ていたら優雅に見えたかもしれないがすでにお風呂上がりでパジャマにしている高校時代のジャージに着替えてしまっていた。一人暮らしを始めた時に実家のクローゼットから引っ張り出してきたものだが3年間雑に使っても壊れないようにできているので意外とものがよく、捨てるに捨てられない。
ロックグラスはいつの間にか3杯目も終わりかけていた。明日は車を走らせようか、そんな風に考えてグラスに口をつける。すでにお酒なのか水なのかわからないくらい薄まっていた。お酒は弱いほうではないが疲れで酔いが回ったのか、意識が遠のき、眠りについた。
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