第13話 邪竜バハムートが襲撃してきた!
「うおおおおおおし! 完成じゃー!」
俺は両手を突き上げて叫ぶ。
目の前には、人間大サイズのラジコンヘリが鎮座していた。
カラーは白と黒で警察ヘリ風にしてあるぞ。
カッケェからな!
「それは何に使うんですか?」
「俺の元いた世界じゃな、デカい畑や田んぼなどに農薬散布する時ドローンっていう道具を使ってたんだよ。で、これはラジコンヘリといってドローンの親戚みたいなもんだ。今日はこれで農薬散布していくぜ!」
一度やってみたかったんだよなぁ~、これ。
ちなみにラジコンヘリを使っているのは、純粋にドローンよりこっちのがカッコよくて好きだからだ!
「家庭菜園レベルなら人力で散布したほうが効率よさそう」
「分かってないな~、シロナは」
『これだから素人は』
「お前もラジコン初心者だろ」
「『ラジコンヘリはロマンなんだよ』」
俺と零華はロマンの何たるかを熱弁したのだが、シロナとコンちゃんには伝わらなかった。
くっ……! お前たちはニチアサに戦隊モノを見ないタイプだったのか……。
巨大ロボとか作っても興味示さなさそうだな。
気を取り直して散布していくか!
俺はラジコンを操作して農薬をまき散らかす。
やっぱラジコンは楽しいな~!
『我も! 我もやりた~い! なぎさ、変わって~!』
「ほれ」
『わーい!』
人化した零華は四苦八苦しながらラジコンを動かす。
五分をほど飛ばしているとコツをつかんだようで、メキメキと操作精度が向上し始めた。
さすが伝説の神獣、飲み込みが
『空中ホバリング! アクロバティック飛行! 森の中を高速飛行! 我すごくない!?』
「スゲー! 俺よりうまいじゃん! やるなぁ、零華!」
俺と零華は無邪気にはしゃぐ。
ふとその時、面白いことを思いついた。
「ラジコンヘリで釣りしてぇな! よし、やるか!」
「なぎさの行動力のすごさは素直に尊敬です」
「こん」
思い立ったら即行動!
俺たちはラジコンヘリを抱えて川にやって来た。
ここは魔境だ。
当然魚も馬鹿みたいに強い。
というわけで、ラジコンヘリのサイズを実際のヘリと同じくらいにしてみた。
動力源を電力から魔力に変更したので、魚程度に馬力負けすることはなくなったぜ。
機体に糸と重り、針をつけたらさっそく川に投下だ!
五分経過した。
「釣れんなぁ」
「川の上に大きな物体が浮いてたら魚が警戒しちゃうのでは? 音も大きいですし」
「なるほど」
シロナの助言を受け、俺はラジコンヘリを改良する。
「無駄にハイテクすぎる」
十分が経過した。
「釣れんなぁ……」
「そもそもラジコンヘリで釣るのが無謀だと思いますよ。普通の釣りですらダメなのに」
『まあほら、釣りってのんびり待つものだから……』
二十分が経過した。
「…………」
「…………」
『…………』
三十分が経過した。
「ハハッ。やあみんな。僕ミッ」
『助けてシロナぁ! なぎさが壊れた!』
「いつもこんな突拍子のない感じですけどね」
もうダメだ!
おしまいだぁ……!
結論、ラジコンヘリで釣りはできなかった。
かくなる上は素手で釣るしかねぇ!
俺はまたもや服を脱ぎ散らかすと、勢い良く川の中に飛び込んだ。
「川の中に魚がいる! アッ、この川深いッッッ! ボボボゴボボボ……!」
川の中に飛び込んだはいいものの、水難事故の典型例のようになってしまった。
陸に向けて傾斜を駆け上がろうとしても、踏んだ部分の砂が崩れて全く前に進めない。
下りのエスカレーターを登ろうとして進めないのをイメージしてもらうと分かりやすいだろう。
だが、俺はいたって冷静だ。
川で溺れたくらいじゃ死にようがないからな。
酸素ボンベ【創造】するなり、爆弾【創造】して爆発で陸まで吹っ飛ぶなりどうとでもできる。
そもそも五分は潜水していられるし。
「ボボボ……!」
俺は水中で両ひざを曲げる。
そのまま跳躍したところ、勢い余って空高くまで吹き飛んでしまった。
「しまった! 力込めすぎた!」
「込めすぎたとかいうレベルじゃないだろ」
大砲の時ほどではないが、視界が目まぐるしく移り変わる。
五キロほど進んだところで、遠くに
なんだあいつカッコよくてうまそうだな!
────────
種族:ガルーダ
ランク:S
称号:聖鳥
────────
俺は手足を勢い良く動かす。
その風圧で進行方向を調整し、ガルーダの背中に飛び乗った。
「こんにちは!」
「ピヒャア!?」
「いただきます!」
俺はハンティング手刀斬を放つ!
仕留めたガルーダを抱えてシロナたちの下に戻った。
「昼メシ獲ってきたぜ!」
「まぁ~たやらかしてやがる。飛んでった時点でそんな気はしてましたよ」
「今日の昼メシは鳥の照り焼き丼だ!」
『うまそーう! 早く帰って食いたい!』
「きゅう~!」
「それじゃあ帰りますか」
荷物を片付けて俺たちは帰宅。
ガルーダを捌いたところでクッキング開始だ!
『野菜の裁断は我に任せろ! 我の爪は切れ味バツグンだからな!』
「じゃあキャベツとパプリカと白ネギのカット頼む」
『了解! うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ~!』
零華は料理歴こそないが、裁断作業においてはプロ顔負けの実力だ。
野菜があっという間に均一にカットされた。
『ドヤ!』
「すごい! 最強最高包丁ウルフ!」
「なんだその褒め方」
零華が野菜の処理をしてくれている間に、俺は鳥肉に下味をつけ、タレを調合しておく。
肉に下味をつけるコツは、最後に片栗粉をまぶすことだ。
こうすることでうま味をギュっと閉じ込めることができるぞ!
ちなみにこの時、片栗粉を多くつけるとカリっと感が増すのでお好みで調整してくれ。
『我、片栗粉多めで!』
「私も多めでお願いします」
「きゅ~」
「みんな多めね。了解!」
フライパンに油を敷き、中火で皮目から肉を焼いていく。
裏返して両面に焼き色をつけたら、パプリカと白ネギを投入する。
肉に火が通ったらタレを加えて煮絡める。
じゅわ~というジューシーな音と共に、香ばしい匂いが周囲に漂い出した。
「ガルーダの肉めっちゃうまそうやんけ!」
『生のガルーダとは比べ物にならんうまさになってそうだな!』
「わくわく……!」
「きゅい~!」
どんぶりにほかほかの炊き立てコシヒカリを注ぎ、千切りキャベツを盛る。
その上に鳥の照り焼きを乗せ、タレを回しかける。
「そこにマヨネーズを投入! こってりさをブーストするぜ!」
「罪深い味になってそうですね……!」
最後にミニトマトを乗せたら完成だ!
「ガルーダの照り焼き丼! いったっだっきまあ~す!」
俺たちは速攻で食べ始める。
ガルーダ肉を噛むと、濃厚なうま味が口の中いっぱいに広がった。
「あ~! やっぱ照り焼きのこの甘辛い味付けたまんねぇな!」
『マヨネーズでこってりさが爆増してるのも好ポイント! 一億フェンリルポイントあげちゃう!』
「おいし~! キャベツとパプリカのシャキシャキ感や、タレの染みこんだお米との相性が最高ですね!」
「きゅん!」
ガルーダ肉の照り焼き丼は想像以上にうまかった!
俺たちはあっという間にどんぶり一杯食べ尽くす。
おかわりをよそって堪能していると、不意に俺たちの周囲が暗くなった。
「天気悪くなってきたんか?」
空を見上げると、俺たちの真上に巨大なドラゴンが滞空していた。
「は……?」
ドラゴンが俺たちの目の前に降り立つ。
体長は優に十五メートルを超えていた。
漆黒の光沢を放つ鱗に覆われている。
全身から禍々しい威圧感を放っていた。
『お、お前は……!』
「零華、何か知っているのか? お前の結界が機能していないのはどうしてなんだ?」
『我と同格の相手に守護結界は意味を
フェンリルと対を成す伝説の神獣。
『久しぶりに会いに来てやったぞ、フェンリルよ!
邪竜バハムートが俺たちの前に現れた。
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