俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。
第38話 このままでは間に合わない (すのなサイド)
第38話 このままでは間に合わない (すのなサイド)
イケメン先輩は、
「俺はこの女性が好きなんだ。愛してるんだ。きみもそれはわかるだろう」
と言う。
わたしは今まで呆然としていたが、この言葉を聞くと、だんだん腹が立ってきた。
「先輩の恋人はわたしだったはずです。わたしのことが好きだったはずです。それなのに、なぜこの女性のことを恋人だというのでしょうか? わたしは先輩の言っていることがわかりません。わたしのことが嫌いになったのでしょうか? もしそうであれば、嫌いになった理由があると思います。そこは言ってくだされば良くしていきたいと思っています。この女性のことを恋人と言わないでください」
わたしがそう言うと、イケメン先輩は厳しい表情になる。
「きみは自分でもそう思っていると思うが、俺も学校一の美人だと思う。俺はきみのその美しさに惚れた。でもそれだけだった。俺の好みは美しくて、ゴ-ジャスな女性。きみにはそのゴージャスさが足りない。最初はきみの美しさを素敵だと思っていたが、あっという間に飽きてしまった」
「飽きてしまった……」
「そんな時に仲良くなったのが、ここにいう彼女だ。美人だし、ゴージャスだ。あっという間に、わたしは彼女の魅力に包まれていった」
「ゴージャス……」
「キスもしたし、ここ一週間で何度も二人だけの世界にも入っていった。幸せだよな、俺たちって」
「もちろん、幸せ」
「二人だけの世界……」
わたしが望んでいて、一月中旬より前にしか入ることができなかった二人だけの世界。
この同級生の女性は、ここ一週間で何度もそこに入ることができている。
なぜわたしは一月中旬より前までしか入ることができなかったのだろう……。
この女性がここまで行った以上、もうわたしが巻き返すのは難しい。
わたしは一気に力が抜けてしまった。
「そういうわけできみとはもう恋人どうしではない。別れることになる」
「別れる……」
「もう俺には、きみに対する想いはないはないんだ。別れるしかない」
イケメン先輩は冷たい口調で言う。
「わたしのことを、好きだと言ってくれたのに……。キスもしてくれた。そして、何度も先輩と二人だけの世界に入ることができたのに……」
目から涙がこぼれてくる。
「すべてそれは過去のこと。いつまでも昔のことを思っていてもしょうがない。これからは、この女性と一緒に楽しい時を過ごしていくのだ」
そう言うと、イケメン先輩は、再び同級生の女性を抱き寄せる。
そして、唇と唇を重ね合わせた。
どうして、こんな苦しみを味あわなければならないの……。
わたしの目から、とめどなく涙が流れてきていた。
その日の夜。
わたしはベッドで横になっている。
食欲がなく、夕食をとっていない。
つらくて、苦しい。
ああ、わたしはイケメン先輩に振られてしまった。
もうこれでわたしの青春は終わってしまったような気さえする。
思えば、数か月前、わたしは島森くんを振ってしまっていた。
しかも今日のように、目の前でキスをして大打撃を与え、わたしのことをあきらめさせた。
今度は、わたしがそういう立場になったのだ。
「あっという間にあきてしまった」
イケメン先輩の言葉。
ここまで冷たい人だとは思わなかった。
わたしはイケメン先輩に告白された時、心の底からやさしい人だと思った。
イケメンというだけではなく、そういう面があると思ったからこそ好きになった。
しかし、それはわたしの大きな思い違いだった。
その点、島森くんは、いつも心の底からやさしかった。
付き合って最初の頃のイケメン先輩も、それなりに気づかいをしていたと思う。
しかし、今思い出すと、島森くんの方がはるかに気づかいをしてくれていた。
デートの時もそうだった。
気づかいをしてくれたので、予想以上に楽しかった。
付き合っている時は、あたりまえのこととしか思っていなかった。
こうして振られることによって、改めてその良さを理解するようになった。
わたしもイケメン先輩に声をかけられるまでは、島森くんに心が傾きかけていた。
もう一度、島森くんとやり直すことはできるだろうか?
あれほど手厳しく振った相手。
その相手から、
「あなたと、もう一度付き合いたい」
とお願いしても、無理な話だろう。
このままでは間に合わない……。
わたしは涙を流し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます