第17話 前世と同じ人生を歩みたくはない
俺は、こうして前世のことを思い出した。
今までは、前世の存在がわからなかった俺。
前世というものがあったということがまず驚きだった。
そして、それだけではなく、全般的に悲惨な人生だったことに、さらに驚かされた。
細かいところまで思い出せたわけではないので、いいこともあったのかもしれないが、それは、ほんの少ししかなかった可能性は強い。
それにしても、と思う。
今までの俺の人生は、ほとんど前世と同じだった。
生まれは仲の良くない両親のところ。
友達はおらず、幼い頃からずっと一人ぼっち。
高校生になって、恋人はできたが、イケメン先輩に奪われる。
前世でこの世を去る時、この悲惨な人生を繰り返したくないと思っていたはずなのだが、結局、同じような人生になってしまっている。
違うところは、両親と今、離れて住んでいることぐらいだ。
このままでは、今世での瑳百合さん、もしくは瑳百合さんと同じようなタイプの女性に出会い、恋をしたとしても、何もできないまま過ぎて、苦しみを味わってしまう可能性が強い。
それは避けたいと思っている。
いや、絶対に避けなければならない。
前世で、俺は瑳百合さんの力になれなかった。
今度は力になりたい。
もちろん、前世の瑳百合さんの生まれ変わり、もしくは彼女のような女性に出会わない可能性はないとはいえない。
このままそういう女性が現れず、一人ぼっちのままということも、可能性としてはあると思わなくもない。
しかし、ここまでの人生の歩みがほとんど前世と同じだったことを思うと、出会う可能性の方が強いと思っている。
理想の人に出会い、恋人どうしになることを、心の底から望んでいた俺。
まずその人にまず出会いたいと思っていた。
出会うことができれば、想いのまず第一歩がかなうことになる。
そして、恋人どうしへの第一歩ということになっていくので、喜ばしいことだ。
喜ばしいことだと思っていたのだけど……。
こうして前世のことを思い出していくと、前途は多難だと思わざるをえない。
前世の瑳百合さんは、才色兼備の女性で、平凡な人間とは釣り合いがとれていなかった。
今思い出しても、その思いがあったからこそ、容易に声をかけることはできなかった。
そして、結局、何のアプローチもできないことにつながってしまった。
現時点での俺も、前世と同じく、平凡な人間にすぎない。
俺が前世の瑳百合さんの生まれ変わり、もしくは彼女のような素敵の女性と、これから出会うにしても。そういう女性にふさわしい人間に俺がなっていなければ、また前世のように、アプローチができないままになってしまうだろう。
そう思うと、絶望感しかない。
ではどうすればいいのだろう?
今のままではどうにもならない。
でも前世のような悲惨なことにはなりたくない。
いや、今でも十分前世と同じで悲惨な人生だ。
これは、もう根本的に、人生を変えていくぐらいの意気込みでこれから生きていくしかない。
でも俺にそんなことはできるのだろうか?
どうしても弱気な心が湧いてくる。
いや、できるわけがないという思いの方がどんどん強くなってくる。
意気込もうとしても、その思いの力に押しつぶされてしまいそうだ。
このままでは、前世と同じことになってしまう……。
そう思っていた時、前世の瑳百合さんの微笑みが心に浮かんできた。
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