第8話 俺の前世・中学生から高校一年生

 中学生になっても一人ぼっちの状態には変化はなかった。


 小学生の頃は。まだそれほどいかなかったカップルは、中学校三年生にもなると、かなりの数になっていた。


 その中には、キスをしている人たちもいるのだろう。


 いや、もしかすると、それ以上に進んでいる人たちもいるのかもしれない。


 小学生の時は、カップルといっても「ボーイフレンド」「ガールフレンド」止まりの人たちがほとんどだっただろうが、最近は、恋人どうしにまで進んでいる人たちが多いように思う。


 そう思うと、嫉妬心が沸き上がってくる。


 そういう思いを持ったとしても、自分を傷つけるだけだと思っている。


 しかし、その気持ちは、決して抑えられるものではない。


 カップルたちを見る度に、腹が立ってしようがない。


 俺は一人ぼっちなのに、なんでそんなに仲睦まじくしているんだ!


 俺だって、俺だって、恋人がほしいんだ!


 そう強く思うのだが、状況は全く変わらない。


 るやのさんと俺は中学校の間、クラスが一緒だった。


 この三年の間に、るやのさんはますます美しくなっていく。

 俺の彼女に対する好意は、次第に恋へと変化していった。


 そして、恋人にしたいという気持ちは強くなっていく。


 しかし、依然として、告白するどころか、そばに行くこともできない状態が続く。


 今日こそは告白したい!


 そう思ったことは、何度もあった。


 しかし、その度に途中で、


「俺はるやのさんとつり合いが取れない……」


 と思って、意志が弱くなっていき、断念をしてしまう。


 その度に自分の情けなさに涙を流していた。


 小学校六年生の時と状況は変化しないままだった。


 俺はギャルゲーで心を癒すしかなかった。


 こうしてつらく苦しい中学校生活が続いた。




 高校生の入学式の日。


 高校生になったので、今度こそ、今までの生活から脱出をして。幸せな高校生活を送りたいと思った。


 そして……。


 俺は高校一年生でもるやのさんと同じクラスになっていた。


 これは、運命だと思った。


 俺は中学生の間、結局、るやのさんに告白ができなかった。


 高校は一緒のところに通うことになったが、クラスが違えば親しくなれるチャンスはないとはいえないが、大幅に減ってしまうことは間違いないだろう。


 もちろん、クラスが同じだったのに、小学校や中学校時代はアプローチすることはできなかったのであるけれど……。


 今度は失敗するわけにはいかない。


 告白をして、恋人どうしにならなくてはいけない。


 それからの俺は、中学生の時以上に彼女のことしか想わなくなった。


 とはいうものの、彼女はますます美しくなってきている。


 今の状態でも、手の届く存在だとは到底思えない。


 彼女に告白する人もますます増えてきている。


 小学生の頃から今までは、まだ誰とも付き合ったことがないという話。


 まだ俺にもチャンスはあるとは言えるだろう。


 しかし、このままでは、その内、誰かの恋人になってしまう。


 才色兼備なるやのさん。


 平凡な俺とはつり合いは取れそうもない。


 しょせん彼女は俺とは住む世界が違う。


 あきらめるしかないか……。


 そう思っていた。


 しかし、彼女への想いはつのるばかり。


 結婚したいという気持ちも強くなっていた。


 高校一年生の夏も恋人と過ごすことはできなかった。


 クラスのカップルたちは、海水浴に行って、存分に楽しんだことだろう。


 俺も恋人と一緒に海水浴に行きたかった。


 海水浴だけではない。


 夏ならでは楽しい思い出を作りたかった。


 もう我慢ができなくなってきている。


 想いをるやのさんに伝えたい。


 撃沈してもいい。


 その時は、つらいだろうが、告白しなければ一生後悔するかもしれない。


 その方がよっぽどつらいと思う。


 俺はるやのさんに告白することを決めた。


 とはいうものの、なかなかそのチャンスは訪れない。


 いや、俺自身の決心が、揺らぎ続けているのも大きい。


 るやのさんに声をかけようとしても、寸前になると声がかけられなくなってしまう。


 声を出そうとしても出てこない。


 そうしている内に、月日は過ぎていき、十一月を迎えてしまった。


 このままでは、どんどん時が経ってしまう。


 るやのさんとクリスマスデートをしたい。


 そして、できるものであれば、夜も一緒に過ごしたい。


 それが俺の夢だった。


 ギャルゲーでクリスマスデートのシーンが出る度に、あこがれを持つようになっていった。


 もうここで告白をしなければ、クリスマスに間に合わない!


 断られるのは怖い。


 でもそんなことはもう言っていられないのだ!


 俺は決断をして、今度こそ彼女に告白することにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る