洗濯日和
洗濯物干し終わったあとにふと見えた
入れた覚えのない 容器がポツリ
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今日は秋日和。心地良い風が吹き、強すぎない日差しが明るく差し込む。連日雨だったというのもあり、久々の晴れ模様はなおさら気持ちよかった。
こんな日こそ、たまりに溜まった洗濯物を天日干しするっきゃない!
ということで、ズボラを体で表したような私生活を送っている俺は鼻歌交じりに洗濯物を洗濯機へと流し込む。今から天日干しした後のすっきりした洗濯物に出会うのが楽しみで仕方なかった。
およそひとり暮らしとは思えないほどの量を入れ終えて蓋をし、スタートボタンをポチッと押し込む。大量の水が流れ込み、数日溜まった洗濯物がゴウンゴウンと回る様は見ているだけで既に気持ちよくさえ感じた。
しばらく優雅にアニメを見ながら時間を潰していると、ピー、ピーと無機質な機械音が洗面所の方から聞こえてきた。ルンルン気分で洗濯機に向かって蓋を開けると、脱水された洗濯物の山がお目見えだ。それらをカゴに放り込み、今度はベランダへと向かう。
土曜の昼間に浴びる秋晴れの陽光はなんと気持ちが良いことか。ムシムシしていない、透き通り始めた空気は格別に美味かった。
さっそく、カゴに入れた洗濯物をひとつひとつ、物干し竿に干していく。思ったよりもあまり芳香がしないことに気がついたが、最近の寒暖差のせいで鼻が常に詰まっていたため、あまり気にとめなかった。
数日分の洗濯物を干し終えた俺は手を腰に当て、目一杯息を吸って吐いた。秋風になびく洗濯物たちを見ていると、とても清々しい気持ちになる。これだけでQOLが上がりそうだ。
一仕事したし、買い置きしていたチューハイを引っかけるか、と思い立った俺はカゴをしまいに洗面所へと戻った。洗濯機の近くにポイッっと投げ起きし、冷蔵庫へと足を向けたその時、洗濯機の足下に並ぶ2つの容器が視界の端に映り込んだ。普段なら特に気にするものでもないのだが、今日はそこから目を離さずにはいられなかった。
今、俺の頭の中ではこれまでの洗濯の一部始終がまるで回想のような雰囲気で再生されていた。
洗濯をしようと腰を上げ、洗濯機に洗濯物を放り込み、スタートボタンをポチッと押す。洗濯が終わった後は外へと運び、物干し竿にかけ、カゴを戻す。
そう、ここには『何か』が足りない。そして、何度も思い返す度に、その『何か』の存在がどんどん強まっていく。現実から目を逸らそうとした自分を、脳が否が応でも拒否し続けた。
そしてついに、俺は現実に屈した。
「洗剤入れてねーじゃねーかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
どうやっても取り返せない時間と期待を前に俺は膝から崩れ落ちた。そんな持ち主の失意とは裏腹に、洗濯物たちは悠々と秋の日光浴に浸っていた。
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洗濯物干し終わったあとにふと見えた
入れた覚えのない 容器がポツリ
(詠み手:上手くいかないズボラな青年)
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