詠み人知らずの詩歌物語【'23秋】

杉野みくや

9月なのに……

夏が過ぎ 衣替えの セプテンバー

早く涼しくなれと 切に願ってんだ


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 過去最大級の世界的な猛暑となった8月が終わり、9月がやってきた。

 うだるほどの暑さが続いた今夏ともようやくおさらばし、実りある過ごしやすい秋がやってくる。


 食欲の秋。読書の秋。芸術の秋。


 秋と言えば、さまざまなものが思い浮かぶ。

 衣替えも始まり、秋らしい落ち着きのあるかわいい洋服たちが店頭に並び出す。それを想像するだけでも楽しみがどんどん膨らんでいく。


 なのに、それなのに、


「どうしてぜんぜん涼しくならないのー!?」


 9月に入って数日が経ったが、気温が下がる気配は一向にない。連日30度を超える暑さが続き、外に出るだけで汗が噴き出てくる。運動不足の私にとっては、数分歩くだけでも体力がごっそり持って行かれてしまう。


 というわけで私は今、クーラーの効いた部屋でアイスをむさぼりながらぼんやりインスタグラムを眺めている。画面には今年来る秋コーデがずらりと並んでいた。その中から気になるものをスクショしては頭の中で秋コーデに身を包む自分を想像して、というのをただひたすらに繰り返していく。


 そうして写真フォルダがある程度溜まったところで、アイスの最後の一口を食べ終えた。ゴミ箱に向かおうと横を向くと、窓から差し込む橙色の夕日と目が合う。「この時間なら大丈夫か?」と思った私は、アイスの棒をゴミ箱に捨てると閉めきられた窓に近寄った。


 期待を込めて窓を開けると、もわっとした空気が顔面を直撃した。猛暑とまではいかないが、秋らしい涼しさともいえない微妙な温度感に思わず顔をしかめる。晩夏の残り香を色濃く感じながら、私はそっと窓を閉めた。


 ベッドにどっと横たわり、RADWIMPSの『セプテンバーさん』を流しながら、保存した写真の数々を見返す。どれも秋らしい大人びた色使いでかわいいものばかりだ。これらをまだ着ることができないのが心底悔やまれる。


「早く涼しくなんないかな~」


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夏が過ぎ 衣替えの セプテンバー

早く涼しくなれと 切に願ってんだ


(詠み手:秋が恋しいファッション好きの女子大生)

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