第十二章 束の間の思い出

その日の夕方、同級生であった竹飛は警察に南野の則島殺害計画に加担していた事、全て白状した。




そして、御神はツインホテルの事件の真相の一部と今回の事件であるフクマデン事件の全ての経緯や首謀者がいるという事も警察に話した。




勿論、山鍋社長殺害の依頼者が笹野誠である可能性がある事も。




今回の事件が全ての終わりではなく、始まりだ。




そして、僕達はこれから闘い続ければならない。




今日は夏休みにも関わらず、昼から緊急で全校集会が開かれる。勿論、その理由は全生徒には知れ渡っていない。




間もなく、ニュースで話題が出る頃だ。










「全く、昨日はあれから急に何処に行ったの?私達あれからずっとあんたの家で待っていたんだから。何回も電話しても蓮司全く、出ないし、メールも全く返さないし」




「ごめん、ごめん、ちょっと大事な用事があってね」




僕達はあの後、警察に半藤君の遺体を引き渡し、その後、警察署に行き、今回のMDの事件、前回のツインホテルの事件の件の事情を話していた。気付いた時には二十一時を回っていた。




その後、御神君が慌てて大谷さんに電話して、「今日は遅くなるから、先に帰っていて」と告げた。




「全く、勝手何だから。何かあったらメールでもいいから連絡してよね」




「本当に、ごめん」




「・・・・・わかったわ。今回だけは許すね」




「ありがとう」


 


大谷さんと秋山さんが僕達の先を歩く。


 


僕は学校に行くのが怖かった。




「所で昨日のあれは本当なの?本当だったら誰なの?」




「あれって?」




「今好きな人は?の正解よ」




「うーん、・・・・・秘密」




「ちょっと!昨日のお詫びに答えなさいよ」




「さっき、許すって言っただろ」




「それはそれ。これはこれよ」


 


私は少しホッとしたかもしれない。




「それはそうと、昨日突然、連絡が回ってきた全生徒への緊急の説明会って何かしら?」




「そうだね。びっくりしたね」


 


まだ、事情を知らない大谷さんと秋山さんが不思議そうな顔をしている。




僕達は黙るしかなかった。




「そう言えば、半藤君は今日は休みなの?」




「あっ、そう言えば、昨日から貴新見ていないわね」




「・・・・・後で、分かる」




また二人が不可思議そうな顔をした。




僕達はそれから会話を大谷さんと秋山さんに任せ、一言も話さず、教室に向かった。


 


チャイムが鳴り、後藤先生がいつもより少し遅れて 深刻そうな顔で教室に入った。




「・・・・・えー、今日は緊急で集まって頂いたのですが、皆さんにとても残念なお知らせを伝えなければなりません。・・・・・・・・・・」




怖かった。




それが皆に知り渡る瞬間が。




後藤先生が話を続けた。




教室にいる皆が驚愕し唖然となる。誰も言葉を発しない。




今まで感じた事のない教室の空気だ。




・・・・・痛い。怖い。御神君に助けを求めたい。




しかし、御神君は表情を変えないままだ。




ああ、そうだ。大谷さんは?




今の話を聞いてどうなっているのだろうか? 




僕は勇気を出して右斜め前にいる大谷さんの方を見てみた。




首を振る動作が自然とゆっくりとなった。




・・・・・やはり血の気が引いている。




近くの席にいる秋山さんは放心状態だ。




予想はしていたが現実を目の当たりにするとどうしようも出来ない。




目を瞑ってみた。




二年生になってからのこの四カ月の思い出が走馬灯の様に蘇って来た。




・・・・・今年の夏は静かになりそうだ。

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