第五章 順調

七月十九日十八時二十分。




僕達は則島殺害現場の最寄りの木場駅に着いた。




「所でなんで着いて来たんだ?」


 


御神君が尤もな事を言った。




「だって、今、私達が関わっているゲーム内で起きた殺人だよ。行かずには行かないわ」




「私もそう思う」




「ぼっ、僕も」




「興味本位」


 


半藤君が最後を締めくくった。




「ったく」




御神君がそう嘆いて暫く歩くと、灰色の鉄鋼のアパートが見えてきた。




周りにはやはり、赤く光るパトカー数台が停まっていた。




僕達は野次馬を掻き分け、前線に出た。




そこにはやはり、人混みを遮断するように黄色の関係者以外立ち入り禁止のテープが貼っていた。




そして、中には警官がたくさん立っていた。






「警視庁の榎田だ。御神君かい?」


 


30代前半と思われるスーツ姿の男が話し掛けて来た。




「はい、そうです。榎田警視ですね」




「ああ、そうだ。愛知県警の安藤警部から君の事は聞いているよ」




「そうですか。・・・・・早速で恐縮ですが、現場を見せて頂けないでしょうか?」




「ああ、構わないよ。こっちだ」


 


そう言われた僕達は則島殺害現場の部屋に連れて来られた。




鑑識の人達が作業をしていた。テレビドラマで観た事がある光景だった。




「則島の死因はなんだったのでしょうか?」




「鑑識からの報告によると、則島の左胸にはナイフの様な刃物で刺された痕があり、それが原因で死亡したとの事だ」




「そうですか。具体的に則島はどういった状況で殺害されたのでしょうか?」




「ああ、第一発見者のアパートの管理人の話によると、今朝、部屋の住人から


則島の部屋から、則島の部屋の前を通ると腐敗した匂いが漂って来たらしい。そこで、アパートの管理人に連絡し、合鍵で部屋に入ると血を流して倒れていた則島を発見したらしい。死体の周りには血が飛び散った形跡がなく、凶器に使われた刃物も発見されなかった」




「という事は殺害現場はこの部屋ではなく、どこか別の場所で則島を刺殺し、ここに運んだという事になりますね」




「ああ、我々もその線で捜査している」




「所で報道された例の則島の死体の傍にはカラスのマークは本当に落ちていたのでしょうか?」




「ああ、落ちていたよ」




「そうですか。少し、現場を拝見させて頂いても宜しいでしょうか?」




「ああ、もうほとんど鑑識は終わっているから、良いよ」




「有難うございます」


 


そう御神君が告げると室内を無言で物色し始めた。




僕は当然として、さっきから御神君以外誰も喋らない。




独特の現場の空気が原因か?




それとも、まだ微かに残る悪臭か。




いずれにしろここには僕達に居場所はなかった。




ふと、部屋の壁を観てみると黒くRで書かれたマークが貼ってあった。




なかなか、センスのあると思った。




「これは・・・・・」


 


御神君が床を指で触り、指に付着した物を見てそう呟いた。




「灰か・・・・・」


 


そう小さく呟いたのが聞き取れた。




「どうした?」




「いや、何でもいない・・・・・・よし、そろそろ帰るか」




「ああ、そうだな」


 


半藤君がそう反応した。




他の二人も早く帰りたがっていそうだ。




「榎田警視、我々はこれで失礼します。有難う御座いました」




「ああ、また何か解ったら、君の推理を聞かせてくれ」




「はい、また何か判明した事が出てきましたら、連絡ください」


 


御神君がそう告げると、僕達は現場を後にした。








七月二十日九時三十七分。




雑貨ビルの一室。




「計画通り、則島を殺害出来きましたね」




「ああ、これで次の計画に移れる。さっそく準備に取り掛かるぞ」




「分かりました・・・・・後、KYUMが私だという事はもう既に御神に気付かれていますね」




「ああ、恐らくそうだろうな。いや、もしかして薄々フクマデンの正体までもか・・・・・しかし、これも計算の内。全体の計画は順調に行っている。支障は何もない。一応確認しておくが例の方は今日の十七時から会う約束になっているから、代理を頼むぞ」




「分かっております」




「ならば良い」










七月二十日九時三十八分。




御神宅。


 


僕達は昨日の事件を知り、「今日は事情がある」と方便を言い、全員学校を休んだ。




「あの後、MDの件は勿論伏せ、榎田警視に殺害された則島の情報を教えて貰ったのだが、驚くべき事実が発覚したんだ」




「何だよ。驚くべき事実って?」


 


半藤君が御神君に訊いた。




「実は則島と南野さんとの関係性を調べて貰ったんだ。そして、そこから発覚したのは殺害された則島智は南野さんと中学の同級生だったらしい」




「本当なのか?だったら、ますます怪しくなってきたな。いや、もう南野さんがフクマデンで決定という事か?」




「そうだな。南野さんフクマデン説が有力説だな。そして、則島の死体は温かく、そこから死亡推定時刻を割り出したら、七月十八日の八時から九時頃だったらしい」




「そうね。確かにここまで、被害者との関係性があると、そう考えられずにはいられないわ」


 


大谷さんもそれに同意した。




「しかし、警察の調べによると南野さんは則島が殺害された死亡推定時刻である七月十八日八時から九時頃にはバイトに行っていて、アリバイがあったらしい」




「アリバイか。何か死亡推定時刻を誤魔化すトリックを使ったのかもしれないね」


 


大谷さんがそう推論した。




「その可能性もあるが、則島の殺害される前日の行動を詳しく話すと、七月十七日は十八時から中学校の同窓会に参加していたらしい。そして、それには南野さんは参加していなかったらしい」




「俺達と会った日か。確かその日はバイトがあると言って、途中で帰っちゃったもんな」




「則島がその次の日に殺害されたのか?それとも死亡推定時刻を誤魔化すトリックによって、その日に殺害されたのか?どちらにせよ、これからじっくり調べる必要があるな」




「南野さんがフクマデンだとしたら、バイト先を調べれば、その日の南野さんの出勤記録が残っている。嘘を言っていたかどうか判るかもな」




「そうだな。それも後で調べよう」




「そういう事だな。後は主催者X側の目的か・・・・・」




「主催者側の目的の一つとして考えられるのは、南野さんと則島が中学の同級生だったという事に対して、南野さんと知り合った俺達が驚き、俺達が南野さんをフクマデンだと決めつけるという目的だ。つまり、ミスリードを誘う事で捜査や推理を撹乱させる事だ」




「なぁ、そもそも、MD自体が仕組まれたものではないか?」




「えっ、どういう事?」


 


大谷さんが半藤君にそう訊いた。




「則島が殺害される事、つまりMDで負かされる事は最初から全て決まっていたという事だよ。つまり、則島に対し殺意を持った人間が存在し、その為にMDが存在したんだ。そうする事で殺害動機がうやむやにされるからな」




「・・・・・そうだな。半藤の言う事も一理あるな。誰かがゲーム中に則島に対して殺意が生じたとは考えにくい。よって、これは元々、則島を殺害したかったんだ。その為にMDを利用した。つまり、前々から則島に対し殺意を抱いていた者は陰の共犯者に則島殺害を依頼し、MDとは元々則島を殺害させる為の仕組まれた計画だったという事だな。そうなると、どうやって則島さんを負けさせたのかが重要になってくるな」




「でも、則島だけがゲームに負けさせる方法なんてあるのかな?」


 


大谷さんが疑問を持った。




「それはまだ解らない。がその方法は必ず存在すると思う。」




「なぁ、こうは考えられないかな。DAI以外、つまり御神以外の他のプレイヤーが協力する事が最初から成り立っていたんだよ。つまり、お前以外のプレイヤーはREDPALを負けさせる事が目的だった。六人が協力すれば、一人集中攻撃をしさえすれば簡単に負かす事が出来るからな。そうなればあの第一回目のMDは全て出来レースで、則島がゲームで負ける事は最初から決まっていたという事になる。南野さんがお前にそれを依頼したのは一人でもこれは八百長なしのゲームだという証言が欲しかった為だとも考えられるしな。つまり、南野さんも含め、プレイヤー七人が則島に対し殺意を持った人間達で、実際に殺害したのがあの七人の中の一人であるフクマデンだという事だ」




「しかし、REDPALが集中されて狙われた感じはなかったけどな」




「なら、何か別の方法で則島を負けさせたんだよ。六対一なら、他にも幾らでも方法があると思うからな」


 


僕は口を挟めなかった。




話が進むにつれて南野さんがどんどんフクマデンにされていく。


 


私は亜理紗が何か別人の様な気がした。




何かに取り憑かれている様だ。








「ところで敗北された則島はフクマデンで、別の者に殺害された可能性はないのか?」




「それは今は分からない」




「ねぇ、蓮司に訊きたい事があるから、話題を南野さん自身についての事に戻しても良いかしら?」




「ああ、なんだい?」




「蓮司の中では南野さんが陰の共犯者つまり主催者側と繋がっているという事は確定なの?」




「ああ、それは間違いないと思っている。何故なら今、MDに参加していた則島が殺害され、その則島と同じ中学の同級生で同じくMDに招待された南野さんが俺に代役を頼んで来たという事実から、少なくとも南野さんと則島は今回のMDでかなり強い関係で結ばれている。そして、殺害されたのは則島で生きているのは南野さんだという事から、南野さんが則島の殺人に対し、何か関係があるという事が言える。つまり、南野さんがフクマデンだろうが、なかろうが南野さんが則島に対し殺意があり、それを目的として、影の共犯者に依頼した場合と陰の共犯者が事前に殺意を持っている人間がいるかいないかを調べ、南野さんと則島をMDに招待し、南野さんが則島殺害に乗った場合と二通り考えられるがどちらの場合でも則島に対し、殺意を持っていて殺人に加担しているという事になる。また、南野さんはそもそも知らない間に主催者Xに協力させられていただけという可能性つまり、南野さんが俺の存在を陰の共犯者から聞いて、俺を訪ねて来て、南野さんはその俺の存在を教えて貰ったその人物の名が主催者Xだとは知らなかったという事だが、さっきも言った通り則島に対し殺意を持っていた。つまり、主催者側との共通目的である則島殺害という繋がりがあるという事になり、南野さんと陰の共犯者側つまり、主催者側と繋がっている事は確定という事になる」




「でも、南野さんがあのMDに参加していたという事はまだ判らないんだよね?」




「ああ、しかしバイト中でも参加出来る方法はあるな。いや、そもそもその時間帯に本当にバイトをしていたかどうかを調べる必要があるな」




「確かにね」




「後、皆には本当は黙っておくつもりだったが、この際話しておく事があるんだ」




「何だよ。御神?」




「実は昨日、陰の共犯者のサイトらしきものが見付けたんだ。そのサイト名は復讐R。そして、そのサイトには誰でも殺人依頼が出来る様になっていた。恐らく、MDのサイトと同じく発信先が解らない様に色々なサーバーを経由していると思う」




「何だと。じゃ、山鍋社長も誠さんもそのサイトを利用して、今川さん、山社長殺害依頼を・・・・・」




「・・・・・そうだな。その可能性はあるな。そして、今回はそのサイトで南野さんが則島の殺害を依頼したのかもしれない。・・・・・これから、殺害された則島に当日会っていた人がいないか、聞き込みをしようと思うのだが」




「そうだな。そうしよう」




「まずは、則島が通っていた大学からかな。その後、南野さんの通っている大学だな」


 


御神君がそう言うと、僕達は御神君の家を後に大学へ向かった。








僕達は則島が通っていた園都大学に着いた。




「則島は確か経済学部だったから、こっちか」


 


経済学部のキャンパスへ向かった。




御神君が近くを歩いていた恐らく学生だと思われる男に声を掛けた。




「あの。突然にすみません。則島智さんという方はご存知でしょうか?」




「則島?ああ、昨日ニュースで死亡したとやっていた奴ね。身近な奴だったから驚いたよ」




「その則島さんの大学生活やプライベートについてご存じないでしょうか?」




「さぁーね。あんまり付き合いがなかったから詳しくは分からないけど、何か危ない事でもしていたんじゃないかな。あまり良い噂は聞かなかったからね」




「では、何か他人に恨みを買われるような事をしていた可能性もあると?」




「ああ、あるね」




「そうですか。お忙しい所、有り難う御座いました」


 


御神君がそう告げ、名も知らない男は去って行った。




「則島についての性格については判ったな。・・・・・よし、次は南野さんが通う大学だな。確か、今日も昼からバイトって言っていたから恐らく、大学にはいないだろう」








僕達は足早に駅へ向かった。




一時間後に東明工業大学に着いた。




「南野さんは確か工学部だったから、こっちの方だな」


 


僕達は工学部のキャンパスへ向かった。




御神君は目に入った人達に適当に声を掛けていた。




「突然すみません、南野浩平さんという方をご存じないでしょうか?」




「いや、知らないな。違う学科じゃないのかな」




「突然すみません、南野浩平さんという方をご存じないでしょうか?」




「ごめん、分からないかな」




「突然すみません、南野浩平さんという方をご存じないでしょうか?」




「うーん、知らないな」




「可笑しいな」




南野さんは果して、キャンパスメイトと繋がりがあるのか?




実は僕と同じ人種なのか?


 


そう思っていると、御神君が歩いている男女二人組に声を掛けていた。




「すみません、南野浩平さんという方をご存じないでしょうか?」




「いや、知らないな」




「えっ、あの人じゃないの?何時も一人でいて、前の方に座っているあの暗そうな人じゃない」




「ああ、そうだ。そいつだ。えーと、そうだ。詳しい事は岡本という学生に訊くと良いよ。確か同じ研究室で、一番仲良さそうだったから。えーと、研究室は三階の304号室だよ」




「有り難う御座います」










僕達は研究室に向かった。




情報工学科の情報プラットフォーム室という研究室だ。




僕にはそれが何の研究なのかは理解出来なかった。




御神君が研究室をノックした。




「すみません、岡本さんという方はいらっしゃいますでしょうか」


 


暫く、場が沈黙した。




「えーと、僕が岡本ですが・・・・・あなたは?」




そこには小柄の男が立っていた。




青のジーンズに白のプリントTシャツと極めてオーソドックな格好だ。




「南野浩平さんの知り合いの者ですが、その南野さんの事で貴方にお訊きしたい事がありまして参りました。宜しいでしょうか?」




「ええ、良いですよ。立ち話でもなんですから、カフェテリアに移動しませんか?」




「有難う御座います」




僕達はカフェテリアに向かった。




席に着くと、早速、御神君が質問した。




「南野さんは、普段どういった生活を送っているのですか?」




「まぁ、明るい性格ではないかな。だけど、悪い奴ではないし、一生懸命卒業研究にも打ち込んでいるかな」




「そうですか。・・・・南野さんはバイトで研究室にあまり遅くまで残っていないのでしょうか?」




「ああ、しょっちゅうバイトが入っているかな。今日も確かバイトで大学に来ていないしね」


 


大学ってそんな理由で来なくとも良いのか?




これが普通なのか?




それとも南野さんが異常なのか?




「七月十七日も大学に来ていなかったですか?」




「いや、確か午前中だけ居たと思うよ。その後、予定があるから直ぐ帰ったけど」




「分かりました。最後ですが、南野さんのバイト先はご存知でしょうか?」




「えーと、確か、西日暮里駅前のレンタルビデオ店だった気がする」




「有り難う御座いました。卒業研究頑張って下さい」




「ああ、うん」


 


御神君がそう言うと、僕達は岡本さんと別れ、キャンパス内を出た。




「皆、もうこんな時間だから取り敢えず、お昼にしないかい?」


 


御神君がそう提案した。




「そうだな。もう十四時過ぎているしな」


 


半藤君が同意した。




気付いたら十四時六分だった。




僕達は適当に近くのファミレスに入った。




店内は空いており、席に着いて注文した。




そう言えば、こんな事になったのはファミレスで南野さんが現れたからだ。




もう直ぐ夏休みなのに、僕達は何をやっているんだろう?




本来なら、何処か遊びに行くという計画を立てているのが普通なのに。




いや、僕の場合はそんな事は関係ないのか。




暫くし運ばれて来た料理を黙々と食べ、腹ごしらえをした。




「さぁ、次は南野さんのバイト先だな。この時間はシフトは入っていないって言っていたから、恐らく今はいないだろう」


 


僕達はファミレスを後にして、西日暮里駅前のレンタビデオ店に向かった。










「なぁ、さっきから何か視線を感じないか?」


 


御神君が唐突に言い出した。




「そうかしら、気のせいじゃない?」




大谷さんがそう反論した。




御神君が立ち止まって、後ろを振り返った。




僕もつられて振り返ったが、そこには誰もいなかった。




「ほら、やっぱり気のせいじゃない」




「ああ、そうだな」


 


そう言って、僕達は足早にレンタルビデオ店に向かった。




「ここだな」




御神君がそう呟くと、僕達は店に入った。




「いらっしゃいませ」




「あのー、店長さんはいらっしゃいますでしょうか」




「私が店長ですが」




「そうですか。折り入って、お聞きしたい事があるのですが、お時間宜しいでしょうか?」




「ええ、いいですよ。何ですか?」




「この店に南野浩平さんという方が働いていますでしょうか?」




「ええ、働いていますよ」




「そうですか。ちなみに南野さんは七月十四日九時頃から十三時頃までと、七月十八日八時頃から十時頃までの間にシフトで入っていたでしょうか?」




「ちょっと待って下さい。今調べますから」




そう言って店長はパソコンを操作した。




「ええ、確かに、その日とその日の時間帯はバイトに出ていましたよ」




「具体的に何時頃から出ていたのでしょうか?」




「えーと、十四日は八時から十五時、十八日は前日の十七日の二十三時から十八日の十二時までですね」




「分かりました。有り難う御座いました」


 


僕達は店を後にした。




「これで、南野さんには一応アリバイがある事になったな」


 


半藤君がそう述べた。




「ええ、そうだね」


 


大谷さんも納得した。




「皆、実は、昨日同窓会に参加していた人達についても情報を警視庁の榎田警視から教えて貰った。今日の十七時にその同窓会に参加していた木元さんという人に喫茶店で会う約束をしているんだ」




「そうなんだ。・・・・・あっ、ごめん。そう言えば俺、明日は用事があるんだったわ。悪いけど明日はパスだわ」




「何、貴新。この大事な時に何の用があるのよ」




「ちょっとな、そんなに大した用じゃないけど、どうしても行かなきゃならないんだ」




「そうなの?」




「分かった。明日は半藤はなしだな。・・・・・皆、今日は疲れただろうし、帰りな。後は俺一人でも大丈夫だから」




「・・・・・じゃあ、今日は結構歩いたし、帰ろうかな。妙子と三堂君はどうする?」




「じゃあ、私も帰ろうかな」




私がいても邪魔なだけだ。




御神君に迷惑は掛けたくない。




「じゃぁ、僕も」


 


いても特にやる事もなさそうだし、御神君の足手まといになる気がした。




ここは帰った方が御神君の為だ。




いや、御神君と二人きりになって、話す自信がなく困るが正しいか。




それは御神君として同じ事な筈だ。




「後、警察にもMDの事は秘密にしているから、引き続き、家族や友達にはその事は内緒でお願いな。もし、南野さんがMDに参加しているのならば、それ突き止める方法はないけど、その目ぼしいプレイヤーがいたのなら、ゲーム中にそれとなく挑発してみる事にするよ。勿論、遠野さんも・・・・・取り敢えず今日はこれで解散だな。明日は先週と同じく、九時に俺の家に集合で」








十六時五十分、御神は一人、リフエムという喫茶店に入った。




まだそれらしい人物は見当たらなかった。




十分経った。




すると、黒のネクタイを締めたスーツ姿の男が入って来た。




店内を見渡し、店員に話し掛けた。




「もしかして、君が御神君?」




「そうです。木元さんでしょうか?」




「そうだよ。君も大変だね。警察に調査協力しているんだって?」




「ええ、まぁ。すみません、わざわざ、呼び出してしまい」




「いや、良いよ。ここから家が近いもんでね。でも、驚いたよ。則島がまさか殺害されるなんてね。今日はこれから、地元の埼玉で則島の葬式なんだ。でもまだ、結構、時間があるから大丈夫だよ」




「有り難う御座います。では早速ですが、七月十七日に行われた中学校の同窓会についてお聞きしても宜しいでしょうか?」




「ああ、良いよ。で何が訊きたいんだい?」




「同窓会はどちらで行われたのでしょうか?」




「僕達は埼玉の川口市出身でね。地元の居酒屋で行われたんだよ」




「そうでしたか。その同窓会には則島さんが参加していたと小耳に挟んだのですが、それは本当でしょうか?」




「ああ、本当だよ」




「何時頃まで同窓会が行われていたんでしょうか?」




「酒が入っていたから正確には覚えていないけど、えーと、確か二十時半までだったような気がするな」




「そうですか。・・・・・その同窓会が終わったら、そのまま解散になったのでしょうか?」




「いや、あの日は二次会があって、それが終わったら解散になったよ。確か二次会が終わったのは二十三時頃だったかな。始まったのは二十一時頃だったような」




「その二次会には則島さんは参加していたのでしょうか?」




「ああ、確か参加していたと思うよ」




「その参加している姿を目撃した人はいましたか?」




「さぁ、あんまり覚えていなかったけど、誰かが則島も来ていると言っていたから、参加していたと思うよ。・・・・・ああ、思い出した。確か、二次会のカラオケ店に行く道中に則島の姿を見かけたんだった。だから、則島も二次会に参加していたと思うよ」




「そうですか。・・・・・二次会にはどれ位の人達が参加していましたか?」




「確か、殆ど参加していたと思うから、三十人位だったかな」




「そうでしたか。・・・・・少し話題を変えたいのですが、宜しいでしょう


か?」




「ああ、良いよ」




「中学時代の則島さんと南野さんとの関係についてご存じないでしょうか?」




「・・・・・本当はこんな事言いたくないけど、南野は則島に陰でいじめられていたよ。だけど、それを南野は皆に知られたくなかったから、ずっと学校にも親にも黙っていたけどね」




「そうでしたか。・・・・・最後に一つお訊きしても宜しいでしょうか?」




「ああ、良いよ」




「その同窓会は誰が中心となって企画し、幹事は何方でしたでしょうか?」




「企画したのも幹事も竹飛敏彦という同級生が中心だったよ」




「その方の連絡先分かりますか?」




「ああ、分かるよ」




「でしたら、竹飛さんと私が一度、直接会う様にコンタクトを取って頂けませんか?」




「ああ、良いよ」




「有り難う御座います。今日はわざわざご足労頂き、有り難う御座いました」






七月二十日十八時二十分。雑貨ビルの一室。




「ノエムさん、明日も宜しくお願いします」




「ああ、そうだね。そちらも明日も頼むよ」




「分かっています」

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