第二章 殺人ダウト

「ネットに依存している人達なんて、誹謗中傷している相手の顔が見えないから粗を探し、難癖付けて見下しているだけですよ。そのくせ独善的で、プライドが高く、言葉も荒く、もし自分が考えていた結果と違ったらお得意の掌返しで物事に浅慮な連中ですよ」




「そうですか」




御神君がそう返した。




僕達は今、店を出て、夜の道を歩いている。




目的先は御神君の自宅だ。




この急展開にたじろぐしかなかった。




いや、従うしかなかったと言うべきか。




御神君に依頼して来た人物が唐突に現れた。




そして、その目的はにわかには信じられないゲームの為だった。






「あっ、あのー、僕を助けて頂けませんか?」




「・・・・・なっ、何ですか?突然に。貴方は一体?」




 謎の男の突然の頼みに反応したのは御神ではなく亜理紗だった。




「あっ、とっ、突然にすみません、申し遅れました。私、東明工業大学、工学部の四年の南野と申します。実は貴方があのツインホテルの事件を解決なさったという噂を巷から聞きまして折行って、御神君にご相談したい事がありまして訪ねてみた次第です」




男が目線を変えずに亜理紗を見つめそう言った。




「それは貴方が今、何か事件等に関わっていて、私にその解決の依頼をしに来たという事ですか?」




「その通りです。実は今、私、他人に言っても信じて貰えない位のとても危険な状況に立たされているのです。そして、貴方にそれを解決して頂いたく先程、貴方の高校へ行きました。そこで偶然、宮内君という生徒にお会いし、彼から貴方がこのファミレスにいるとの情報を聞き、現在に至った次第で御座います」




「そうでしたか。・・・・・その貴方が今直面している危険な状況とは一体どういったものなのですか?」




「依頼を受けてくれるのですね。有難う御座います。その状況は・・・・・」




「・・・・・すみません。取り敢えず、店の中で話しませんか?実は店の中で同級生を待たせているので」




「はい、分かりました」


 


亜理紗は突然の展開にまだ驚いていた。








僕達は不安を抱えたまま、食事に手を出さずに待っていた。




一体、何の用で大谷さんは御神君に呼び出されたのか?




「遅いな、一体何なんだよ」




半藤君がそう愚痴った。




大谷さんと御神君が外へ出てから十分以上経過したが、それ以上に長く感じる。




その後暫くして、御神君と大谷さんが店の中へ入って来た。




何を話していたのか気になる。




うん?




御神君と大谷さんと一緒にこっちに向かって来る人物がいる。




うん、確かに御神君達と共に誰か一緒に付いて来ている。




彼は一体何者なのか?




御神君が大谷さんを呼び出した要件に関係しているのか?




それともそれとは関係なく全くの偶然でタイミング良く御神君か大谷さんを訪ねてきた人物が現れたのか?




僕は今、起こっている状況が全く分からなかった。




御神君達が僕達の席へ戻って来た。




突然の事に僕達は戸惑った。




見ず知らずの若い男が目の前にいる。




顔は何か引きずっている様子だ。




そして、どことなく不気味だ。




「御免、皆、お待たせ」




 


御神君が僕達に詫びた。




やはり、その隣には男もいた。




黒色のプリンTシャツにジーンズ、銀色の腕時計をしている。




「それより、そちらは?」




半藤君が男を睨みつける様に今最も僕達が気になるであろう質問を投げ掛けた。




男は言葉を発せないでいる。




御神君が代わりにその男の紹介をした。




名前は南野浩平と言うらしい。




僕達は御神君から外で起こった経緯の一通りの説明を受けた。




大谷さんが御神君を呼び出した理由はこの事ではなかったのか?




・・・・・でも何故唐突にこんな事になったのか。




まだ状況が整理出来ていない。




いや、それは半藤君や秋山さんとして同じ事である筈だ。








「ふーん、危険な状況ね」




半藤君が不審がった。




それは僕として同じ事だ。




そんな危険な状況に立たれているのに何故、警察ではなくわざわざ御神君を頼ってきたのか?




「南野さん、取り敢えず、今貴方が置かれている状況を話して頂けませんか?」




 


御神君がそう切り出した。




「はい、分かりました。・・・・・皆さん、突然ですがMDというゲームをご存知でしょうか?」




一瞬固まった。




なんだそれは?




MD?




新しいTVのタイトルか?




「いいえ、存じませんが」


 


大谷さんがそう答えた。




「そうですよね。でしたら、私が今立たされている危険な状況をお話するにはまずそのMDというゲームについてお話しなければなりません。MDとはMurder Doubtの略語であり、その名の通り殺人ダウトというゲームの事です」




「さっ、殺人ダウト!」




秋山さんが声を張ってそう驚愕した。




「ええ、そのゲームの詳しい説明は長くなるので控えさせて頂きますが、簡単に言えば私は一ヵ月前にひょんの事からその殺人ダウトの参加者になってしまいました。そして、その殺人ダウトの参加者がもし敗北すると、フクマデンというそのゲームに参加している殺人者に殺害されてしまうのです。ですからそのゲームから私を救って頂いたく、御神君を訪ねた次第であります」




唖然となった。




それはそうだ。




ゲームで負けた者が殺される?




にわかには信じられない。




「そんな非現実的な事を言ってもとてもじゃないけど信じられませんね」




半藤君が切り出した。




それはそうだ。




同意見だ。




信じられない。




周りを見渡すと大谷さんも秋山さんもそういった表情だ。




しかし御神君だけが真剣な表情だ。




何故だ?




この人の言っている戯言を信じているのか?




「そう思うのは仕方の無い事だと私も思います。しかし、本当にそのゲームが過去に行われ、その参加者の内が二名死んでいるのです」




そう言われてもまだ信じられない。何かその証拠が存在するものなら、まだ信じられるのだが・・・・・。




「そのゲームで負けたから殺害された証拠か根拠は何かありますか?」




半藤君が僕の心の意見を代弁した。




「いえ、明確な証拠や根拠はありません」




「では、何故貴方はそのゲームが過去に行われた事を知っているのですか?」


 


今度は御神君が間髪容れずに質問した。




「それは一ヵ月前にそのゲームを企画した主催者側から送られて来たメールに、そのゲームに参加して敗北し、死亡した参加者の写真と過去の全ゲームの内容が添付されていたからです。しかし当然それだけでは、それがMDで死亡した者の写真だとは判りませんし、合成写真かもしれないと思い、後で自分で新聞やインターネットで調べた所、2016年に東京都墨田区と鹿児島県鹿児島市で変死体で発見されたという記事を見付けました。そして、そこにはMDで殺害された者が解る様にその死体に貼るマークが貼ってあったと記されていました。そしてそれは、今回送られていたメールに記されたマークと同じだったのです。それは私に送られて来たメールを確認すれば判る事だと思います」


 


そう説明されても僕はまだ信じられない。




「これは本当に起こり得る事なのです」


 


南野さんが目を大きく見開いて強い口調で主張した。




「そんなに心配だったら、俺達より警察に相談すれば良いじゃないですか?」


 


半藤君が最もな事を言った。




それにしても少し、不機嫌だ。




せっかくテストが終わった後の幸せな時間を邪魔された腹いせか?




「それは出来ないのです」




「どうしてですか?」




半藤君が僕も直ぐに思った疑問を投げ掛けた。




「実は、警察等、大きな組織にこのゲームの存在を言ってはならないというのがMDの規約にあり、もしそれを破ってしまったのならば、その時点でその参加者はフクマデンに殺されるのです」




今の話が本当に現実なのか信じられない。




そんな裏の組織の存在は漫画の世界だけだと思っていた。




「南野さん、今手元にパソコンはないですよね?」




「はい、ありません」




「でしたらこれから、南野さんのお宅にお邪魔する事は可能でしょうか?」


 


御神君が南野さんにそう懇願した。




「申し訳ありません。私の家はここから遠いので今からでは厳しいかと・・・・・」




「でしたらこれから俺の家に来ませんか?割とここから近いので。そのメール内容を見るだけですから、それは出来ますよね?」




「はい、御神君が良いというのならば私はそれで全然構いませんが」




「分かりました。・・・・・皆はどうする?」




「俺は別に良いけど」




「私も行くわ」




「わっ、私も」




「ぼっ、僕も」




全員が御神君の自宅に向かう事になった。








まだ半信半疑だった。




何故こんなにも規模が大きい事になっているのか?




この感覚は僕、特有の感覚なのか?




 


私は御神君の家に行けるのが率直に嬉しかった。




以前から一度行きたいと思っていたがこういう機会がなければなかなかそのきっかけが出来なかった。




不謹慎ながらも少し楽しみだった。




「御神君の家ってここから近い所にあったんだ」




「・・・・・」




「亜理沙、聞いている?」




「えっ、うん、ゴメン妙子、聞いているよ、そうだね」


 


亜理紗の様子が何か変だ。




御神君を呼び出された理由が原因なの?




それとも南野さんが言っていたMDというゲームの存在自体に恐れているからなの?


それとも他に理由があるからなの?


 


御神達は十五分程歩いた。




「ここです」


 


御神君の手の指す方を見ると、黄色い光でライトアップされた豪邸が聳え立っていた。これは現実か。パッと見渡しても敷地面積は有に500坪は超えているだろう。広い全面芝生の庭。五階建ての建物。それはテレビに出て来る豪邸そのものだった。




「・・・・・おっ、お前ん家、金持ちだったのかよ。・・・・・」




半藤が御神を妬んだ。




「いや、父親は普通のサラリーマンだけど、副業で結構儲けているんだ」




「副業?そう言えば、蓮司のお父さんはエンジニアだったわね。その他に何やっているの?」




「作家だよ」




「お前の父親って作家なのか?」




「ペンネームで書いているから、本名は知られていないけどそこそこ人気なんだ」




「なんていうペンネーム何だ?」




「マサジだよ」




「へー、そんなんだ。今度、本屋行ったら探してみよう」




「でも本当に凄い家ね。こういう家に住めるのはほんの一部のお金持ちだと思っていたけど、まさか身近にいたとはね」


 


亜理紗がそう感想を述べた。




「そうですね。羨ましい限りです」


 


南野もそう妬んだ。


 


御神君がこんなにお金持ちの家柄だとは知らなかった。




ますます遠い存在になる様な気がした。




「取り敢えず、入りましょう」




御神君がそう僕達に催促した。




大きい門を通り抜け、庭を歩き、観音開きのドアが待ち構えていた。




御神君が鍵を鞄から取り出し、鍵穴に鍵を入れドアを開けた。




そこには豪勢なラウンジが待ち受けていた。




高級そうなソファーが並べてあり、大きなテレビが目立つ。




壁には高そうな絵画が掛ってあり、棚には観た事のない壺が並べてあった。




「今日は親が両方共いないから、気を使わなくても良いよ」




「そっ、そうなんだ」




大谷さんがそう答えた。




やはり、このオアシスに皆驚いている。




「取り敢えず、パソコンが置いてある部屋に行こう」




「パソコン部屋なんかあるのかよ」




「まぁ、殆ど俺しか使っていないけどね」


 


御神君がそう言ってそのパソコン部屋という恐らく、パソコンがいっぱいあるだろう部屋に僕達を案内した。




二階に上がった。




この家を移動するだけでも疲れそうだ。




御神君が部屋の扉を開けた。




そこにはパソコン五台が置いてあった。




「すげーな、これ皆お前のかよ」




「まぁ、一応そうだけど」




「いいな」




「バイトで貯めたお金で買ったんだよ。俺、今は小遣いとか貰っていないし」




「へぇー、凄いね。何のバイトしているの?」


 


亜理紗が御神に訊いた。




「プログラムの設計とディバックをするバイトだよ」




「プログラムのディバック?」




「うん、簡単に言えば、既存のコードのからプログラムの間違いを探し 設計通りに書き直す作業の事だよ」




「へぇー」




「御神君はプログラムが出来るのですか?」


 


南野が興味津々で訊いた。




「はい、C言語、Visual Basic、COBOL、Ruby、Pythonは一応出来ます」




「そうですか。凄いですね。そんなに沢山。私も実は大学でプログラムを学んでいます」




「そうでしたか。・・・・・南野さん、先程の質問の続きで恐縮ですが、ネットの掲示板に書き込みをしている人達は一般的にどういう性格の人達が多いのですか?」




「蓮司、こんなにパソコン一杯あるのにネットやらないの?」




亜理紗が御神を不思議がった。




「ああ、パソコンは殆ど、プログラムをする為だけにしか使わないから」




「そうなんだ。これ自分の作ったんでしょ。妙子が前、蓮司はパソコンを自作すると言っていたからね」




「そうなのか?これ全部自分で作ったのかよ?」




業を煮やした半藤が会話に割り込んだ。




「作ったといっても既存の部品を組み合わせて、OSをインストールしただけだよ」




「でも、部品に不具合が出たらいろいろと大変だろ」




「そうだな。不具合の部品がどれだかを探す行為が一番面倒だね」


 


そう言い終わると、御神は南野の方を見つめた。




「ああ、そうですね。忘れていました。質問にお答えます。道中で言いましたが、基本的には物事の本質を見抜けない者、他人の意見に看過しやすい者、直ぐに以前言っていた意見と違う結果になったら掌を返す者、主張が激しい者と様々ですが共通している点は何でも面白ければそれで良く、他人の能力を認めようとしない、他人の不幸が好きという性悪です。そして、プライドが高く、傲慢で独善的で実際には陰気で内弁慶な性格な人達が多いです。ネットに嵌ってしまう人達に共通している理由は他にやる事がなく暇潰しの為、日常生活よりもそこに居心地の良さを感じ、一度嵌ってしまうとなかなか抜け出せないからでしょう。そして、物事を難癖付けて面白可笑しくし、中には自虐的で自分を形容し、特殊な言葉を使う変な人達もいますね」




「・・・・・となると彼らの人間心理としてはこうですか。プライドが高いという事はこちらが下手に出れば、その人達に高揚感を与える事が出来、懐柔しやすくなると言う事です。また、傲慢で独善的だという事は、何か人生の中で大きな出来事を経験し、自分の価値観に対し絶対的な自信があるから、意思を貫徹していて、そういう人達を手懐けるにはその相手の本心を知り、同じ価値観の共有出来れば、味方になりやすいと言う事です。そして、陰気で内弁慶という事は小心者という事ですので、こちらが何か強気に出たら、相手が怯み、恐怖を与える事が出来るという事です。つまり、こちらが偽善的な事をすればある程度洗脳出来るという事が言えるでしょう」




「何でそんな事詳しく訊くの?」




「さっき道中で南野さんと会話していて、その話の中でこのMDには参加者が合計八人いて、その参加者達はネットに依存している人達が選ばれているそうだ。つまり、その人達の特徴を知る事がこのMDの意義や意味を調査する事に繋がると思ったから詳しく訊いてみたんだ」




「だけどネットの某最大掲示板等に書き込む人達の気軽さ、顔を曝け出さない事に対する安心感をやはり大きな障害となるべきものかな・・・・・。ああ、早速、メールを見せて頂けませんか?南野さん」




「そうですね。但し、送信元は海外のメールサーバーを何個も経由して送られて来ていますので、何処だか判りません。つまり、このMDを企画した主催者が誰なのか、どこに居るのかは判りませんが・・・・・」




「ええ、でも取り敢えず、MDの内容を把握してみたいので見てみます」


 


御神がそう言うと南野が立ち上げたパソコンからインターネットブラウザを開き、自分のメールアカントでログインし、そのメールを開いた。








南野 浩平 様




貴方はこの度開催される第二回MDのプレイヤーに当選しました。




誠におめでとう御座います。






このメールの送り主である私が今回のゲームの主催者のXで御座います。




さて、今回、南野様が当選したゲームは殺人ダウト 通称 MD (Murder Doubt)であります。




早速、今回のMDの説明をさせて頂きたいので、添付してあるファイル名「MD 概要」というPDFファイルの開いて下さい。




そのファイルに今回のゲームの詳細が記載されていますので、良く披見して下さい。




よろしくお願い致します。










ここまで読み終わると、御神がメールに添付してある「MD 概要」PDFファイルを開いた。










「MD 概要」




拝啓 MDの当選の皆様へ。




 


左記に今回のMDの概要について示めさせて頂きましたので、良く披見して下さい。




但し、MDに関する質問等は一切受け付けないものと致します。




 


MDとはその名の通り、殺人が行われるダウトである。




プレイヤー同士達がダウトをやり、その敗者が殺されるという陳腐なゲームではなく、ダウト自体が異質な為、後に示すゲームの概要やルールを良く熟読する事をお勧めする。




まずは、このゲームの参加者の人数と殺人について説明する。




今回のMDに招待した人数は八人で、その八人にはそれぞれ、ゲームの参加資格であるIDと初期パスワードがメールの続きに記載され、配布されてある。




プレイヤーは後で各自確認する事。そして、プレイヤーは




http://www. XXXXXXXXXX.ne.jp




というサイトにアクセスして頂き、そこに配布されたIDとパスワードを入力すると、MDの参加出来るサイトにアクセスする事が出来る。




そのMDの参加者八人の中に主催者Xが極秘に個別に指定した「フクマデン」と呼ばれる殺人鬼が存在する。




そして、このゲームの敗者にはMDのプレイヤーの中に紛れたフクマデンに殺害され、優勝者には賞金一億円を贈呈する。




しかし、当然フクマデンは他のプレイヤー同様、同じ条件でゲームに参加して貰い、もしフクマデンが敗者となった場合は、その時点でゲームは全て終了し、生き残っているプレイヤー全員で一億円を分け合うものとする。




そして、その条件やゲームの敗者の定義やゲームの概要やルールついては左記及び、別ファイルに示す。






まずは、MDの概要から説明する。




MDとは先にも記載したが、通常のダウトとは少しルールが異なる。




それは何故か?




まずはトランプを使わないからである。




「トランプを使わない?ではどうやってダウトをするのか?」と今これを読んでいるプレイヤーはそう思っている者が大半である事は主催者Xも予想している。




では、トランプの代わりに一体何を使うのか?




それは主催者X側が予め用意した質問とプレイヤーがゲーム開始前に回答する筈であるその質問に対しての回答である。




まず、プレイヤー全員は主催者X側が用意した質問項目に事前に回答し、ゲーム最中に質問をプレイヤーがその中から一つ選び、その質問を選んだ者やフクマデンも含め、八人全員がその質問の回答を発表するのである。




そして、その中に任意に事実とは異なる回答をしたプレイヤー、つまり、事前に主催者側に回答したのとは異なる回答をした、言い換えれば嘘の回答をしたプレイヤーをその任意に嘘を付いたプレイヤーも含め、プレイヤー同士が任意に「ダウト宣言」をし、その者を探り合うゲームである。




つまり、主催者Xがプレイヤーのダウト宣言後に回答の正誤を発表するのである。




また、主催者Xはあくまで正誤を発表するだけで、嘘だった場合、その本当の回答の内容までは明かさない。




そして、質問項目は今、プレイヤーが開いているこのPDFファイルが添付してあるメールに、その質問項目のdocxファイルに添付してあり、ゲームが始まる前に主催者側にその質問項目に対するそれぞれの事実の回答を添付し、今、プレイヤーが開いているこのPDFファイルが添付してあるメールに返信して頂く。








次にどうやってMDの勝敗、つまり、優勝者と敗者を決めるのかを説明する。




それは漠然と言えば、ゲーム終了の時点でプレイヤーが持っているライフポイントが一番高い者が優勝、ゲーム最中やゲーム終了時点でライフポイントが0になった時点で、そのプレイヤーは敗者となり、フクマデンによって殺害される事になる。




そして今、「ライフポイント?一体何のポイントだ?」と思っているプレイヤーも大勢いる事だろう。




したがって、今プレイヤーが抱えているその疑問を今から解消する。




ライフポイントとはその名の通り、生死を決めるポイントの事である。




そして、そのライフポイントは予めプレイヤー全員に3ポイント配布してある。




MDの本質とはプレイヤー同士によるそのライフポイントの奪い合いである。




つまり、MD全体で見れば、ライフポイントの増減はなく、合計24ポイントをプレイヤー同士が奪い合うのである。




プレイヤー同士のライフポイントの増減は右記に記載した事に繋がる。




それはプレイヤー同士が嘘を見破ったか否か?である。




この説明は定義よりも具体的な例を挙げる方が明解だと思う為、幾つか例を挙げる。




但しここでは、ゲーム開始直後つまり、全員がそれぞれライフポイントを3ポイント持っているフラットな状態の前提とし、ゲームの参加者は2人の場合としてプレイヤーAとプレイヤーBだけがゲームに参加している例を挙げる。




 一、ある質問でプレイヤーAがプレイヤーBの回答に対してダウト宣言をし、プレイヤーBの嘘を言い当てた場合。




この場合はプレイヤーBが持っているライフポイント1ポイントがプレイヤーAに加算され、プレイヤーAのライフポイントは4ポイント、プレイヤーBのライフポイントは2ポイントとなる。




二、ある質問でプレイヤーAがプレイヤーBの回答に対してダウト宣言をし、プレイヤーBの回答は実は予め、主催者Xに提出した回答と同じ回答で、そのダウトが間違っていた、つまりプレイヤーBの回答が正しかった場合。




この場合はこの場合はプレイヤーAのライフポイント1ポイントがプレイヤーBに加算され、プレイヤーAのライフポイントは2ポイント、プレイヤーBのライフポイントは4ポイントとなる。




つまり、プレイヤーが別のプレイヤーの嘘を言い当てた、または、ダウト宣言されたプレイヤーがそのダウト宣言したプレイヤーを騙した、つまり、事前に主催者Xに提出した回答とゲーム中に発表した回答が一致したら1ポイント加算され、プレイヤーが別のプレイヤーのダウト宣言により嘘を言い当てられた、または、ダウト宣言したプレイヤーが騙された、つまり、ダウト宣言されたプレイヤーの回答が事前に主催者Xに提出した回答とゲーム中に発表した回答が一致したら1ポイント減算するのである。




そして、ライフポイントが0になった時点でその者はフクマデンによって殺される事となる。つまり、この行為を八人で行う場合が今回のMDであり、このゲームの本質は八人が騙した、騙されたで合計24ポイントを奪い合うのである。




主催者Xはここまでの説明で、参加プレイヤーの皆様は全体のMDの概要やルールについて理解したものと望んでいる。




しかし、プレイヤーの皆様も薄々勘づいている方もいらっしゃると思うがまだMDの概要やルールはこれだけではない。特に今から説明する事が重要なのである。




それは、




「プレイヤーは一回のゲームに付き、必ず嘘を二回付かなければならない。」




勿論それ以上の嘘は任意で付いても良い。




つまり、ゲーム中の質問に対して、事前に主催者Xに提出した回答とは一致しない回答を最低二回しなければならないという事である。




これも通常のダウトとは少しルールが異なる事である。そして、先程主催者Xは「一回のゲームに付き」と記載した。




そうこのゲームは合計三回行われるのである。




そして、一回のゲームに付き、質問は八回、つまり、各プレイヤーが順番に必ず一回ずつ質問を選ぶのである。




よって、三回のMDの質問項目は合計24個である。




そして、7月14日10時からを第一回目のMDの開催日時とし、それ以降は毎週土曜日に行うものとする。




つまり、7月21日10時が第二回目のMDの開催日時、7月28日10時からが第三回目の開催日時とする。三回のゲーム終了時点で、ライフポイントが一番高いプレイヤーが優勝で賞金一億円贈呈するものとする。




そして、ここで話は戻すがゲーム中のプレイヤーの他のプレイヤーに対するダウト宣言を何回でも行っても良い。




つまり、どのプレイヤーも一回のゲームで八個の質問全てに対してダウト宣言をしても良いし、一回もダウト宣言をしなくも良い。




そして、ゲーム開催期間中に敗者が出た場合、つまりフクマデンに殺害される者が出た場合もそのままMDは続行されるものとする。




勿論、敗北したプレイヤーもダウト宣言したり、嘘を付いても良い。




つまり、例えば第一回目のMDでフクマデン以外の敗者が一人出たら、第二回目のMDまでの間つまり一週間以内にフクマデンによって殺害され、第二回目のMDの参加者は誠に残念ながら七人となる。




もし、フクマデンがゲーム開催中に負けたら、先にも記載したが全てのMDは終了し、プレイヤー同士が一億円を分け合うものとする。




第三回目のMD終了時点での一人のプレイヤーが持つ最大ライフポイントは24ポイントで、敗者の人数はフクマデンを含むと七人であるが、それは現実的に起こりえない。




何故ならその場合はフクマデンが優勝者の場合且つ、他のプレイヤーは全員敗者になるに限るからである。




ここで、プレイヤーがダウト宣言をする場合とダウト宣言をしない場合のメリットとデメリットについて考察してみる。






まず、ダウト宣言をするメリットだが次のような事が考えられる。




自分のライフポイントが加算しやすい状況を自ら作れる、他のプレイヤーに強きな姿勢を見せられる。




次に、ダウト宣言をするデメリットだが次のような事が考えられる。




良く考えないでダウト宣言をすると、ライフポイントが減算しやすい状況になる、他のプレイヤーに考えなしの無能だと思われる。




そして次に、ダウト宣言をしないメリットだが次のような事が考えられる。




ダウト宣言の失敗によるライフポイントを減算がない、他のプレイヤーに慎重なプレイヤーだと思われる。




次に、ダウト宣言をしないデメリットだが次のような事が考えられる。




ライフポイントが変わらずのまま可能性が高く、優勝する事は困難になる。他のプレイヤーに消極的なプレイヤーだと思われる。




つまり、状況や作戦に応じてうまくダウト宣言を組み合わせて、プレイする事がこのMDで勝利する為に必要なのである。






次にそのダウト宣言の注意事項について記載する。




一、ダウト宣言の方法は、ダウト宣言したいプレイヤーのID名 ダウト の順で書き込みする事である。


 




二、一度ダウト宣言したプレイヤーは如何なる場合でもそれを取り消す事は出来ない。


 




三、一つの質問で一人のプレイヤーを対象に他のプレイヤーは二人以上そのプレイヤーを対象にダウトする事は出来ず、優先権は先にダウト宣言したプレイヤーにあるものとする。




但し、任意でダウト宣言を譲る事も出来、譲られたプレイヤーはそれを拒否する事も出来る。


その場合は先にダウト宣言したプレイヤーに強制的にダウト宣言の権利を有する。


 




四、ダウト宣言する対象のプレイヤーが重複しなければ、一人のプレイヤーがそれぞれ別の質問の際に何回もダウト宣言しても良く、嘘を付いているプレイヤーがダウト宣言しても良い。






五、プレイヤーは一つの質問で複数人にダウトしても構わない。


 




六、プレイヤーは全てのプレイヤーの回答を出し終えた時点から一分以内でダウト宣言を決め、それ以降は如何なる場合もダウト宣言を受け付けない。




 


そして、右記にも示したが全てのプレイヤーは一回のゲームで嘘を必ず二回付かなければならず、途中で抜け出し、それに違反したプレイヤーは失格とする。




失格の場合については後述する。








次に、プレイヤーの委細について記載する。




まずは、一つ重要な事がある。




それは各ゲーム開始前であれば何時でも、メールが送られて来て、最初にこの文章を読んでいる者つまり、メールが送られて来たプレイヤーは任意に他人を、その当人の代わりにこのMDに参加させる事が可能という事である。




つまり、初めから、MDに参加しなくても良いし、ゲーム開催期間中にMDを抜け出しても良いという事になる。




但し、その行為は自己責任とし、もし、そのIDを使って優勝したらその時点でのプレイヤーに賞金を贈呈し、もし途中でライフが0つまり敗北したら、その時点でのプレイヤーが死するとし、今後のそのIDは削除される事とする。




しかし、プレイヤーが変わってもそのライフポイントはそのまま引き継がれる。




但し、プレイヤーはゲーム最中に変わってならず、あくまで各ゲームが始まる前に変わらなければならない。




勿論、プレイヤーの変更を希望する場合は前日までに主催者X側にこの変更届とその変わった者の質問内容に対する回答も出す事になる。




その変更届はこのPDFファイルが添付しているメールに別途ファイル名「プレイヤー変更届」というdocxファイルに添付してある。




また、主催者X側はプレイヤーが変わった事を他のプレイヤーには教授しない事とする。




プレイヤーが変わった場合、質問項目による回答はその時点で必要な分だけ記載し、提出すれば良い。




つまり一回目のゲームの前に変わったのならば24個、二回目のゲームの前に変わったのならば、まだ一回目のゲームで質問されていない16個、三回目のゲームの前に変わったのならば、まだ一回目と二回目のゲームで質問されていない8個を回答し、主催者X側に提出すれば良い。




ただし、プレイヤー自体はMD期間中、棄権は出来ない。




また、このファイルの最後の記述として幾つか細かい注意事項を挙げておく。




 


一、プレイヤーが質問を指定してから、質問者を含むプレイヤー全員は五分以内に回答を出さなければならない。




もし、五分以内に回答を書きこまなかったプレイヤーは失格とする。






二、プレイヤー全員が回答を出し、主催者X側がダウト宣言の有無を確認し、事前の回答を発表し終えてからプレイヤー全員は次の質問まで十五分の雑談が許される。




それが終えてから次の質問に移行する。


 




三、プレイヤーが質問する順番は各ゲーム毎にランダムに決める。


 




四、プレイヤー同士は秘密で任意で個人的な約束をしても良く、騙し合っても良い。


 




五、主催者X側は一人のプレイヤーを特別扱いせず、事前の回答も正確に発表する。


 




六、ID名(プレイヤー名)とパスワードは各ゲーム開始前であればプレイヤーが変更しても良い。




その際、変更名を主催者X側に届け出る事。




変更届を提出したら、主催者Xが手続きをする。その変更届はこのPDFファイルが添付してあるメールに別途ファイル名「ID(プレイヤー名)、パスワード変更届」のdocxファイルに添付してある。




また、そのIDとパスワードを変更した事も他のプレイヤーには教授しないものとする。


 




七、プレイヤー名は例えば、プレイヤーが交代しなくても、ID(プレイヤー名)、パスワード変更届を主催者Xに提出すれば、自由に変更出来る。


 




八、ゲーム開催期間中に敗者となったプレイヤーが出現し、殺害された場合、その敗北者が選ぶ質問はなくなる。




つまり、例えば二回目のMDの際に敗者のになったプレイヤーが出現し、三回目のMDが始まる前までに殺害された場合、三回目のMDの質問は全体で七つだけしか使われないという事になる。






次に今この文章を読んでいる者が執るべき行動として、今までのルールを纏めた、或いは新たに細かいルールを纏めたものをこのPDFファイルが添付してあるメールにファイル名「MD 規約」というPDFファイルに添付してあるので、このファイルを閉じ、そのファイルを開く事である。




そして、その規約を読み終わったら、メールの内容に戻る事。


                                  


以上








意見が変わった。




このゲームが本気な気がした。




とても悪戯とは思えないゲームの細かさだ。そう思う程手が込んでいる。




「どっ、どうですか・・・・・みっ、御神君。私の代わりにこのゲームに参加して頂けませんか?」




一瞬自分には関係なくて良かったと思った自分を嫌悪した。




「ちょっと、どういう事ですか!」






大谷さんがそう叫んだ。




それは当然だ。




南野さんが大谷さんの顔を見て、何も言葉を発せなかった。




「いや、亜理沙、良いんだ。実は道中で南野さんに今回のゲームの内容を少し訊いて、俺の方からそう南野さんに提案した事なんだ」




「・・・・・れっ、蓮司・・・・・」




「本当に御神君には申し訳ないと思っています。只、こういうゲームはやはり私の稚拙な頭脳より御神君みたいな優秀な頭脳の持ち主がやった方が・・・・・」




「私は別に特別優秀という訳ではありませんが・・・・・精一杯代わりを務めるつもりです」




「そんな、もし蓮司がゲームに負けたらフクマデンに殺害されるかもしれないだよ」




「うん、でもそうならない様にするだけだよ」




「そっ・・・・・」




今まで黙っていた秋山さんが声を発した。




心配そうな顔だ。




僕はただそれを傍観するしかなかった。




「大丈夫だよ、妙子。俺はそう簡単には負けない」




「勿論、優勝したら賞金は御神君に全額差し上げます」




「いえ、それは結構なのですが・・・・・」




「いいえ、受け取って下さい」




「まぁ、それは優勝してから決めましょう」




「それはそうですね。・・・・・話は変わりますが、ところで主催者Xはどういう理由でフクマデンを指定したのですかね?」




南野さんが御神君に訊いた。




「これは、建前上フクマデンはランダムで指名した風に書かれていますが、実はそうではなく、今、誰かしらに対し殺意を持っている者とその相手をこのMDに参加させ、前者を主催者X側がフクマデンに当選させるといった裏で取引しているのかもしれませんね」




「ええ、そうかもしれませんね。だとしたら、私も心当たりはありませんが誰かに恨まれているのかもしれませんね。取り敢えず、規約のファイルを開いてみます」 




南野さんがそう自分を貶し、マウスを動かした。








「MD 規約」




規約一  プレイヤーが付かなくてはならない嘘はゲーム一回に付き、二回でそれ以上の嘘は何回でも付いても良い。






規約二  プレイヤーは自由に他人に助けを求めても良いし、プレイヤーを代行させても良い。




但し、その行為は自己責任とし、もし、そのIDを使って優勝した場合、その時点でのプレイヤーに賞金を贈呈し、途中でライフが0つまり敗北したら、その時点でのプレイヤーが死するとし、今後のそのIDは削除される事とする。




但し、プレイヤーはゲーム最中に変わってはならず、あくまで各ゲームが始まる前に変わらなければならない。




勿論、プレイヤーの変更を希望する場合はゲーム開始までに主催者X側に変更届とその変わった者のまだこれまでのゲームで選ばれていない質問内容に対する回答も提出する事とする。




変更届はこのPDFファイルが添付してあるメールに「ID(プレイヤー名)、パスワード変更届」添付してある。




そして、主催者X側はプレイヤーが変わった事を他のプレイヤーには教授しない事とする。






規約三  一つの質問が終わる毎にそのプレイヤー全員の回答の正誤と事前に回答した内容つまり、本当の回答の内容も発表する。


 




規約四  このゲームの傍観者は自由で何人でも良い。


 




規約五  警察等にこのゲームの存在を告げ、このゲームを中止させる行為を執ってはいけない。


 




規約六  プレイヤー全員、ゲーム終了後に任意の時間まで雑談が許される。


但し、勿論それはプレイヤーの任意であり、その雑談に強制的に参加しなくても良い。


 




規約七  優勝者が複数人出た場合、賞金は均等する。


 




規約八  主催者Xは如何なる場合、例えばプレイヤーが直接、主催者Xに訊いてきた場合でも、各プレイヤーが事前に回答した情報を教授しない。


 




規約九  もし、ゲームの途中で敗北してしまっても、そのプレイヤーはその回のMD終了までゲームを続けなければならない。


 




規約十  もし、ゲーム中にライフポイントが0になったプレイヤーに対してダウト宣言しても、その結果に関わらず、両者ともライフポイントの増減はない。


 




規約十一 もし、ゲーム中にライフポイントが0になったプレイヤーが他のプレイヤーにダウト宣言しても、その結果に関わらず、両者ともライフポイントの増減はない。


 




規約十二 MDの優勝者が第一回目若しくは第二回目に出た場合、その回のMD終了時点で今回のMDは終了する。


 




規約十三 あるプレイヤーがダウト宣言し且、他のプレイヤーからダウト宣言された場合によって、ライフポインが一時期0になっても、その質問が終了した時にライフポイントが0でなければ敗者にはならない。






規約十四 ゲーム開催期間にプレイヤーがもし、MD以外の理由で亡くなった場合、プレイヤーのIDは消滅され、ゲームに参加出来なくなる。ただし、「ID(プレイヤー名)、パスワード変更届」をプレイヤーが亡くなる以前に主催者Xに提出すれば、そのIDは継続されゲームに参加出来る。


 




規約十五 フクマデンは全てのゲームにおいて、IDは変わらない。ただし、フクマデンのプレイヤーの交代は通常のプレイヤーと同様、認める。


 




規約十六 ゲームに敗北し、フクマデンによって殺害されたプレイヤーは殺害された死体だと判る様に現場に目印を示す。


 




規約十七 もし、フクマデンが敗者となった場合は主催者Xが指定した者によって殺害される。






規約十八 もし、フクマデンが殺害された時点で残りのMDが消化されず残っている場合、残りのMDで敗北された者がいた場合、主催者Xが指定した者によって殺害される。






以上、規約に違約したプレイヤーは失格とし、そのプレイヤーは如何なる場合でもフクマデンによる殺しの対象となる。


                                  


以上








「そんなに殺人がしたいのか?このフクマデンという奴は」




「そうだな、半藤。しかし、取り敢えず言われた通り、メールに戻ろう」


 


そう、御神君が言うと、ディスプレイにメールの内容を映した。




 


如何だったでしょうか。




ある程度MDの内容についてご理解して頂けたでしょうか。




主催者Xは勝敗のポイントは雑談で如何に相手の考えを見抜けるかであると考えています。




そして、南野様のID(プレイヤー名)と初期パスワードは下記の通りです。






ID      DAI




初期パスワード LF23FG74KO9532 






また、質問項目はこのメールにファイル名「MD 質問項目」でdocxファイルとして添付してありますので、ゲーム開始前にそれに全て記載し、添付してこのメールに返信して下さい。




また、主催者Xは全ての質問に対する各回答は事実を記載して欲しいと考えています。




また、何か紛失やデータの消失等のトラブルがあった場合、その内容を記載し、個別にメールアドレス「xxxxxxxxxx@murder doubt.com」にメールして下さい。




そして、全てのゲームが終了後にある追加ルールを課す事にし、そのルールはある期間まで極秘とし、後々発表します。




最後に、「MD 概要」のPDFファイル内に挙がった失格についての定義ですが、もし勝手にゲームを途中で抜け出したり、規約を違反してしまったら失格となり、その時点でライフポイントが0になり、フクマデンに殺害される事になります。




また7月14日、土曜日の午前10時から第一回目のMDを開始されますが、その一時間前にはログイン出来ますので、その時間帯になりましたらご自由にログインして下さい。




それでは南野様のご健闘をお祈り致します。


                                  


敬具






「何だろうな。ゲーム終了後に発表される追加ルールって」


 


半藤君が切り出した。




「そうだな。気になるよな。・・・・・取り敢えず、質問のファイルを開くよ」


 


そう言って御神君が「質問項目」と書かれているdocxファイルを開いた。




どんな質問が賞金一億円の獲得者と死者を決めるのか?




恐怖を抱えながらも気になった。








「MD 質問項目」




プレイヤーは質問項目二十四個に対し、全て現在の本当の情報を回答とする事。






質問一、本名は?


回答






質問二、生年月日は?


回答






質問三、性別は? 


回答






質問四、出身地の都道府県は? 


回答






質問五、現在の住所は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問六、最終学歴は?(現時点で、学生の方はその学府を在学中と回答する事)


回答






質問七、職業は?(現時点で、無職の場合は無職と回答する事)


回答






質問八、年収は?(現時点で、無収入なら無収入と回答する事)


回答






質問九、好きな食べ物と嫌いな食べ物は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十、 好きな芸能人と嫌いな芸能人は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十一、好きなスポーツと嫌いなスポーツは?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十二、好きな異性の外面と内面は? (現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十三、初恋の相手の氏名は?(現時点で、いなければいないと回答する事)


回答






質問十四、現在、好きな人がいればその相手の氏名は?(現時点で、いなければいないと回答する事)


回答






質問十五、現在、異性に対して思っている事は?(現時点、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十六、行った事のある外国数は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十七、歴史上、最も尊敬する人物は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十八、過去、または現在の憧れの職業は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問十九、自分で点ける自分の容姿の点数は?  


回答






質問二十、他人には言えない過去の秘密は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問二十一、過去の自分の中で一番大きな罪は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問二十二、現在、自分自身が抱えている不満は?(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問二十三、もし、一億円が手に入ったらその使い道は?((現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






質問二十四、世の中に対して一言(現時点で、無ければ無しと回答する事)


回答






以上






「この質問内容は非常興味深いものですね。野暮な質問や、人間心理の本質を突いた質問、一見どうでも良いが実は重要な質問が混在していますね」


 


御神君がそう評論した。




「そうですね」


 


南野さんがそう答えた。




「どういう事、御神君?」


 


秋山さんがそう訊いた。




「人間は誰でも他人の今の幸せと自分の今の幸せを比べ、測りたがる生き物なのさ。ほぼ全人類が、他人より上に立ちたいと思っている。だから、たまにしか会わない友人や久しぶりに友人と会った時に相手の現在の事を執拗に訊いたり、さりげなく訊いたりする事が多いんだ。これは自分が相手の情報を知りたいからが目的ではなく、自分が相手よりも人間としての幸せ、価値、優劣を知りたいが為に訊くんだ。例えば、年収、仕事、学歴、結婚、恋人、子供そういったものを自分なりで優越を付けて判断する。そして、例えば「質問二十二、現在、自分自身が抱えている不満は?」という質問はまさにその象徴だ。この質問の回答が今の自分の幸福度と他人の幸福度との物差しに出来るから、そういった人間を形成する上で根本にあるものを探したいという欲にうってつけだと言う事だ」




「これは駆け引きやリスクを取る事が大事なゲームだな」


 


半藤君がそう言い出した。




「ああ、例えば、もし、嘘をゲーム中に全て消化したとしても、嘘を三回以上付く事で余計な情報を他のプレイヤーに与えず、今後のMDを有利に進める事が出来るからな」


 


御神君がそう補足した。




「取り敢えず、質問項目の提出期限まで、後、三日ありますから、それまでに回答しておきます。南野さん、このメールに添付してあるファイル一式、俺のパソコンにダウンロードしても良いですか?」




「はい、勿論です・・・・・御神君、このゲームでの勝敗ポイントや必勝法なんかはないでしょうかね?」




「それはまだ分かりませんが、今、一つ言える事はこのゲームは質問する順番が重要になってくると思います」




「そうなんですか?例えば、どの質問を最初にしたら良いというのがあるのですか?」




「そうですね。まず本名、年齢、性別は最初の方には訊かない事が正しい選択ですね」




「それは何故ですか?」




「何故なら判断材料となる質問が沢山あるからです。例えば質問十三の初恋の相手は?という質問から、もしそれが本当の回答をした者なら、そのプレイヤーと異性の名前が判る事となり、そのプレイヤーの性別が判る事となります。性別が判ったら、本名も女性か男性の本名か位は大体判断出来ますから、もし、初恋の相手は?で女性の名前を書き、それが本当で、質問一の本名は?で女性の名前を書いたプレイヤーがいたのならばそれは確実に嘘という事になります。ですから本名、年齢、性別は最初の方には訊かない方が良いと言えるのです。しかし、途中でプレイヤーが変わったらまたそれはやり直しになりますが」




「そう言われれば、そうですね」




「しかし、プレイヤーが金銭目的で変わるのならば、ある程度信頼関係がある仲でなければ出来ない事ですし、信頼関係が脆い関係ならば何かしらの必勝策はあると思います」




僕達は御神君の家を後にした。




このゲームに対して、恐怖の感情しかなかった。








翌日、七月十一日。




「蓮司何で、こんな危険な事引き受けたのよ」




「・・・・・俺には主催者Xの心当たりがあり、それを突き止める為に今回の危険な船に乗ったんだ」




「えっ、そんな。あれだけのメールだけで首謀者の心当たりがあるの?」




「その主催者Xの名前や素性等は分からない。しかし、俺達が今探しているある犯罪者と今回の主催者Xが同一人物という可能性が高いと思っているんだ」




「・・・・・まっ、まさか、れっ、蓮司、ツインホテルの影の共犯者が今回のMDの主催者とでも言いたいの?」




「恐らく、そうに違いないと思う。今回のMDの記載されていたメール内容とあのツインホテルの影の共犯者の計画とで犯罪の手口が似ていると思ったんだ。その共通点とは殺人自体は他人に委ねる事だ。となると、あの南野さんという人は影の共犯者と繋がっている事となる。だとしたら、彼がフクマデンである可能性が高いな。フクマデンがプレイヤー交代をしてはならないという事は規約には記載されていなかったし、自分が殺害されるかもしれないという危機感がなかったしな。それに何よりも南野さんが俺がこの間のツインホテルの事件に関わっていた事や俺が秀明館高校の生徒だという情報をどうやって手に入れたのか不思議に思わなかったか?」




「・・・・・いっ、言われてみれば」




「影の共犯者が主催者Xで南野さんは主催者Xから俺の事を教えて貰ったとしか考えられない」




「だっ、だったら、良いの?南野さん野放しにして」




「まだ、何も証拠がないし、取り敢えず様子見するしかないな」


 


御神はそう言って、真っ直ぐ前を見つめた。






「ふっ、ふふふ」




ある部屋で男がベッドに横たわりながら、写真を見つめながらそう微笑んでいた。

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