19 王立アカデミー(1)
朝。
アカデミーのゲートには、多くの馬車が連なる。
殆どの生徒が貴族であるこのアカデミーは、寮生半分、馬車通学半分だ。
アカデミーは、王都の外れにある。王都の端から、丘を一つ登った場所。
塀で囲われているものの、塀を見た事がない生徒も多い。
それだけ、広い敷地であるということだ。
校舎、教師棟、音楽棟、訓練場、魔術棟、ダンスホール等の建物群があるだけではない。
寮生も多いだけあって、中は庭園、散歩道、カフェ、雑貨屋等ちょっとした町のようになっている。
元々、とある貴族が一人で立ち上げた学園だったけれど、紆余曲折あり、今では王立アカデミーという事になっている。
けれど、国王自身は、今でも運営に関わる事はなく、学園長が直々に次の学園長を選ぶ。
現在学園長なのは、元平民のリンドベル子爵だ。
リンドベル子爵は、どうやら優秀な人物で、町の学校で学んでいたところ、一人の貴族の目に留まり、補助を受けながらアカデミーに通った努力と運の人だ。
アリアナも、例に漏れず、馬車でアカデミーへ入る。
高等科の校舎は、アカデミーの中でも中心、一番目立つ場所にある。
このアカデミーの象徴が、この高等科なのだ。
今年から高等科に上がったアリアナも、高等科の校舎へ入るのはワクワクしていた。
中等科も同じ敷地内にあるとはいえ、あまり関わりはなかった。
ジェイリーにエスコートされ、馬車を降りる。
そもそも、ジェイリーと兄のロドリアスと共に、通学するのは初めての事。
去年までは中等科と高等科と分かれていたので、馬車も別々にしていた。
右にジェイリー、左にロドリアスを従え、校舎へと向かう。
階段を登った先に聳えるのは、校舎だと知らなければ何処かの宮殿かと思ってしまうほどの、威厳ある大きな建物だ。
緊張する……!
緊張はするけれど……!
騎士二人を引き連れての登校!
悪くないんじゃないかしら。
なんて思いながら、校舎へと向かう。
ドキドキと心臓が鼓動を打つ。
大きな扉をくぐると、そこは天井の高いホールだった。
「わぁ……」
ロドリアスがにっこりと微笑む。
「ここに初めて入った時を思い出すよ。このホールは凄いよね。天井の装飾も、大きな階段も」
「ええ……!本当に」
「アリアナも驚いてくれて嬉しいよ」
「ええ……。ここで学ぶのが夢だったんだもの」
にっこりと二人と向かい合う。
1年生の教室は左側。二人と居られるのもここまでだ。
「一人で大丈夫?」
「もう、子供じゃないもの。中等科のみんなも一緒だし」
それでも、心配してくれるのが嬉しくて、「へへっ」と笑って見せた。
「もし、一緒に帰れたら帰ろう。またね、アリアナ」
「ええ、お兄様」
一人になると、くるりと1年の教室に向かった。
カツカツと、石の感触のする廊下を歩く。
高等科の校舎。高等科の制服。
扉の前で一つ息を吐いて、今朝から何度もチェックしている髪型と制服を、小さな鏡でもう一度チェックした。
動きやすさ重視の、広がったスカート。
大きな襟には校章が入っている。
気が引き締まるキッチリとしたネクタイ。
ボタンには一つ一つ家紋が入っている。
基調の色は家の色に従う。
アリアナの場合はワインレッドだ。
髪の乱れも無し!
よし!
扉を開けようと手を伸ばしたところで、
ぽふん!
「きゃっ!?」
背中に、柔らかな衝撃を受けた。
◇◇◇◇◇
ここから本格的に学園ラブコメを始めようと思います!
どうぞよろしくね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます