女友達が神社に行ってからおかしくなった。そいつは俺に執着してる。

夕焼 空

開封

俺は今年21になる専門学生だ。高校を惰性で過ごし大学に行けるような頭もなくこれまた惰性で受けた学校だ。




でも、学校には最近行けてない。ようやくできた彼女とも最近別れた。てか、あいつの方からいなくなった。いなくなったんだ。俺は知らない、あいつがどこに行かれたのかも。




手紙だ…手紙がポストに入ってる。手紙なんだよな、いつも。ポストに入ってるんだよ。俺はその手紙を必ず見なきゃならないんだ。見なきゃならない。絶対に。




多分、俺はもう長くないと思う。なんとなくそう思う。確信はないけど本当に自然と自分は長くないと感じてしまっている。




手紙が届く頻度が日に3回になった。メンヘラめ。あいつは小さい頃からその気があったんだ。昔はそんなところが可愛かったんだが、今じゃな…。いや今でも心の隅で愛おしいと感じてるのかもしれない。そうじゃなきゃこんなにアイツのところに行きたいなんて思わないだろ?




この手紙を読む君へ。たぶんたっちゃんへ。




これはもう俺には必要ないことかも…しちゃいけないことかもしれないけれど。これを読んだら出来るだけ多くの人に伝えて欲しい。俺のような、俺たちのような人達が増えないためにも。




ここに書くのは俺の後悔の証だ。そして警告でもある。


肝試しには行くな。行こうなんて考えるな。そんなこと言いだす奴は殴ってでも止めろ。




これを、どうか活かしてくれ。














ことの始まりはたぶん俺が小3ぐらいのときの夏休みだ。


なにぶん小さい頃の話だから曖昧だが需要なところは押さえてあると思う。




俺の両親は共働きだったんで、夏休みになると決まって父方のじいちゃん家によく預けられた。


そこはいわゆるド田舎もド田舎なものでコンビニどころか、駄菓子屋すらないところだった。でも毎年俺はそこに行くのがとても楽しみだった。




じいちゃんは一人暮らしで俺のことを程々にかわいがってくれたし、なにより勉強しろなんて言わないもんだから最高だった。


近所に俺と同年代の子たちが数人ぐらい住んでて、その中でも特に二人の子たちとよく遊んで回っていた。


俺はいつも二人のことを「りっちゃん」と「たっちゃん」と呼んで一緒にいた。




俺たち三人は、時には山へ行って秘密基地を作り、木に登るのが誰が早いかを競ったり、海へ行って三人して全身ずぶぬれになって遊んだ。


それはもう毎日のように遊びまわった!あの頃は三人いればどんなことだってやれると思ってたし、どんなとこへだって行けると信じてた。めちゃめちゃ楽しかった。




俺とたっちゃんは同じ歳だったけどりっちゃんは一つだけ歳が上だったけど俺たち男二人と同じような身長だったしなにより、俺たち男どもより根性があった。蛇の死骸をぶんぶんと振り回して俺たちを追いかけまわしたりもしていた。




でも、りっちゃんはすぐ息が切れて苦しそうにするのもあって俺たちもそれに合わせたりしてた。今考えたらりっちゃんは喘息かなんかだったんじゃないかな。今となっちゃ分らんけど。






ある日、昼間にたっちゃんが「兄ちゃんから『怖い話特集』借りてきたからシンジん家で見ようぜ」と誘われたのでりっちゃんも呼んで三人してびくびくしながらじいちゃん家の居間のテレビで見てた。




たっちゃんは「こわくねーよ、こんなもん全然怖くないし」っていう割には肝心な場面で目つむってのは笑ったな。俺もつむってたが。


りっちゃんはガンガン見ててキャーキャーと騒いでは「二人とも見てみ!顔が映ってるよ!ほらぁ!」なんて言いながらはしゃいでた。




肝試しをするって言いだしたのはたっちゃんだった。


りっちゃんに目つむってるのを見られて「男のくせに情けないんやねぇ~」なんて言われて怒ったんじゃないかな。


そこで怒るんじゃなくて肝試しするっていったのはたっちゃんらしかった。




「今から神社でなんか物を置いて、それを夜になったら取りに行く!」




たっちゃんはたしかこんなことを言っていた。




ぶっちゃけて言えばビビりだった俺はめちゃめちゃ嫌だった。夜の便所すら怖いってのに。


でも俺は二人に、特にりっちゃんにはビビりやって思われたくなかったから「いいじゃん!賛成!」っと言って楽しんでる風を装った。




そんなこんなで肝試しするって決まったわけなんだが神社に置いてくるものを何にしようかということで考えたんだが、おもちゃやお金なんかはさすがに無くなったら泣いてしまうくらい嫌だったんで三人してない頭をひねって考え出して、結局「紙になんか書いてそれを神社まで行った証拠としよう」ってことになった。




実際、置きに行く紙はりっちゃんが持ってきた。


その紙にはなんか風景が書かれていて今ではあまり思い出せないけど、なんとなく幽霊画を彷彿とさせた。この時の俺は前にテレビで見たススキの木の下の幽霊が描かれた絵に雰囲気がどことなく似ていると思った。風景に添えてなんか書いてあったのだけど達筆すぎてなんて書いてあるか読めなかった。




りっちゃんは「肝試しにちょうど良さそうなのが家にあったから」と言っていたのでさっすが考えることが違うなとその時は呑気に考えてた。




目的地である神社は俺のじいちゃん家から自転車でそんなにかからないところにあった。俺たちはいつものように俺のじいちゃん家に集まってから神社に紙を置きに行った。




その神社はあんまし大きくないし、小さな賽銭箱と境内があるどこか寂し気な雰囲気のとこだった。


たっちゃんはこういう神社が肝試しに最適だろということで、なんて子供らしい考えだと今は思う。


別にこの神社は心霊スポットでもなんでもなく、なんとなく寂しい感じがするだけの神社だったし、前にもちらほらと参拝する人を見かけたことがあった。




神社についた俺たちは自転車をそこらに適当において、紙をどこに隠して置くかを話し合いながらよさげな所を探した。


たっちゃんの提案で賽銭箱のあるところの木の床の間に挟み込んでおこうということになった。




三人で「怖すぎて泣いても知らねーぞ」などと騒ぎながら自転車を放っておいた場所へ戻ろうと神社の敷地を出たのですが、いざ自転車に跨ってみるとりっちゃんがついてなかった。




「りっちゃんいないよ!」




俺はたっちゃんにそう呼びかけた。たっちゃんも俺が呼びかけてりっちゃんがいないことに気づいたようで神社のほうに引き返すことになった。




りっちゃんは鳥居の近くで境内のほうを見ていました。




「りっちゃーん、早く行こうよー。置いてくよー!」






俺たちに背を向けているりっちゃんに声をかけてもちっとも振り返らなかった。返事もしなかった。






「そんなに心配しなくても飛んでったりしないと思うぜ。ちゃんと挟んだし、もう暗くなるしはよ行こ!」




そう言ってたっちゃんはりっちゃんをせかした。


りっちゃんはそれでも振り返らなかった。


俺はりっちゃんのそんな雰囲気に怖くなった。俺はたまらず「りっちゃん!!!」と大声で叫んだ。隣にいたたっちゃんが俺の突然の大声にビクッてしてた。




俺の大声にりっちゃんはやっと振り返って、俺たちのほうに走ってきた。


「なんでもない。はよ帰ろ」




早く帰りたかった俺は深く考えずに自転車のところまで向かった。


道中、りっちゃんは




「なんか神社の中から誰か見てた気がしたから。紙取るんかなって思って」




そうはにかみながら話すりっちゃんは困った顔をしてた。たっちゃんは「まぁ、ダイジョブでしょ」といって笑っていた。


俺はたっちゃんが虚勢を張っていることにこの時なんとなくだったが分かった。








あの時、肝試しなんてやめようってはっきり言えばよかった。たっちゃんが虚勢を張ってたからなんだっていうんだ。俺までも虚勢を張ることなんてなかった。紙なんて放っておいて寝ておけばよかったんだ。








俺たちは親たちが寝静まってから、物音を立てないようこっそりと家を出た。


その時は非日常を味わっている気分で、夜に隠れて出かけるようなことはこれまでしたこともないのでぞくぞくするようなスリルを味わえて恐怖なんてなかった。


嘘。じつはちょっぴり怖かった。




昼間と同じように二人が俺のところに集まるのと同時に神社へ向かった。


昼間通った神社への道は結構不気味で怖かった。たぶん二人とも怖かったんじゃないかな。田舎だから街灯もあんまりなかったし、神社なんか木がいっぱいあって余計怖く感じた。


光はたっちゃんの持ってきたちっちゃな懐中電灯しかないので心細かった。




鳥居から紙を挟んだ場所までおよそ数十メートルくらいの距離があったと思う。暗い場所、しかもよりいっそう恐怖を掻き立てる要素があるところを進むのは本当に勇気が必要だった。


俺は背中が汗びっちょりの中りっちゃんの手を握っていた。自然とりっちゃんの手を握ってたんで恥ずかしいとか考える暇も無かった。


まぁ、俺はたっちゃんの手も握ってたわけだし。




三人で手をつなぎながら神社に向けて歩き出した。先頭は以外にもたっちゃんでりっちゃんに向けていったこと覚えてるんだな~と考えてた。




敷地の中は風の音や木々の騒めきも嫌にはっきりと聞こえた。


たっちゃんは「おしっこ漏らすなよ~」なんていいながら緊張を紛らわそうと冗談を明るく言ってましたが声が震えているのが分かった。


りっちゃんはこんな時、たっちゃんと一緒になって喋るのにこの時は一言もしゃべらずついてきていた。


俺?俺はアンパンマンの歌をおもいっきり心の中で熱唱してたよ。だから、普段と違うりっちゃんの様子も気にしなかった。




賽銭箱のところにつくと、たっちゃんが「あっ!」と叫んだ。


床の板の間に挟んでおいたはずの紙が賽銭箱の上にあったからだ。




「んだよ、りっちゃんがいってた奴が置いたんかな?」




たっちゃんはそういって紙を手にとったけど「うわっ!」って叫んで、勢いよく紙を落とした。




俺はたっちゃんの落とした紙を見て、絵の描かれた方を見て心臓がきゅってなったのを覚えてる。




まるで血でも塗りたくったかのように紙に書いてあった風景画が真っ赤に塗りつぶされてたんだ。それも、塗り残しがないように徹底的に。




誰かのいたずらかと思ったけど違うと思った。そのときはなんとなくだったけど、今にして考えたら悪戯じゃないってことがはっきりわかる理由がある。あの日は一日中、結構な勢いの風が吹いてたんだ。だから、たっちゃんは飛ばされないようにって気の板の隙間に紙を差し込んだんだ。なのに、賽銭箱に置かれただけの紙がどうして飛ばされてなかったんだ。




真っ赤に塗りつぶされた髪を見た後、俺たちはぎゃーと叫びながら自転車のところまで駆けだした。


鳥居を過ぎたところで




「リツコがついて来てない!」




とたっちゃんが叫んだ。俺も言われて初めて気づいた。自分のことで精いっぱいだったんだ。




また神社のところまで行くのかと思うと足がすくんだがりっちゃんを想うと足が動いた。たっちゃんも一緒に来てくれた。




りっちゃんは賽銭箱の前でうずくまっていた。体をダンゴムシみたいに丸めて。




「りっちゃん!なにしてるんだよ!早く帰ろう!」




「リツコ!早く立てって!」




神社の異様な雰囲気もあって、恐怖にかられた俺とたっちゃんはりっちゃんを呼んだが、りっちゃんはうずくまったまま動かなかった。




俺はもう怖くて怖くて泣いていた。隣にいたたっちゃんも泣いてたと思う。




俺たち二人はりっちゃんを何とかして起こしたが、りっちゃんは紙を片手に持ったまま、おえっおえっとえずいていた。




たっちゃんはりっちゃんの腕を引っ張って「リツコ!早く!」と言ってせかしていたけど。りっちゃんは丸まろうと抵抗してげほげほとせき込んでいる。




俺は、りっちゃんのお母さんに聞いた発作のことかと思い、




「りっちゃん、薬は?薬飲んだら苦しいの治るから!薬どこ!?」




とりっちゃんに尋ねたけど、りっちゃんには聞こえてないようでなおも苦しそうにするだけだった。しまいに唸りだして、苦しそうに地面を掻き出した。




「俺、とっちゃん呼んでくる!」




たっちゃんはそう言い放ち俺とりっちゃんを置いて神社を出ていった。


俺は神社に残された恐怖よりもりっちゃんが死んでしまうじゃないかと思ってそのことが何よりも怖かった。


俺はりっちゃんの背中をさするぐらいしかできなかった。




突然、りっちゃんが俺の腕をぎゅっと掴んできた。突然のことだったのでびっくりした。それからりっちゃんは俺に顔を近づけて






「んびょあん」






といった。多分、こんな感じだったと思う。




俺は、りっちゃんのその時の顔がいまでも忘れられない。こればっかりは忘れようもないくらい鮮明に覚えてる。


りっちゃんは口を半開きにしてよだれを垂らし、白目を剥いてりっちゃんが普段話すような声ではない低い声で言っていた。




本当に今でも夢に出る。






「あほか!こんな夜中に肝試しなんかやるからじゃ!二人はどこにおるんや!」




大人の怒鳴り声がしたから振り向くと目から大量に涙を浮かべ泣いているたっちゃんと数人の大人たちがこちらに歩いてくるところだった。






そこで俺はやっと泣くことができた。たぶん大人が来てくれたことによる安心からだろうな。


りっちゃんはあの変な声を出すのをやめてまた苦しそうに呻いている。


りっちゃんはたっちゃんのお父さんに抱っこされて俺たちは無事に帰ることができた。






俺とたっちゃんは翌日これでもかと思うほど怒られた。


俺はじいちゃん、たっちゃんはたっちゃんの両親に。じいちゃんがあんな怒るとこなんて初めて見たよ。


説教が済んだ後でりっちゃんはどうなったのか、あの『紙』はどうなっているのか聞いても何も教えてはくれなかった。




じいちゃんは「りっちゃんは病気が悪化したんだ」と言っていた。








数日して俺はりっちゃんの家を訪ねた。俺はりっちゃんの病気が悪化したのを知ってお見舞いの気持ちで行ったんだ


でも、りっちゃんの家には上げてもらえなかった。




「律子は、新司くんたちとはもう会えないから」




玄関で会ったりっちゃんのお母さんは、冷たくそう言った。


りっちゃんのお母さんはいつもにこにこしているのにこの時は俺のことを憎々し気に睨みつけていた。俺はその目で見られることにショックを受けた。




りっちゃんと会うのを断られたけど、俺はどうしてもりっちゃんに会いたかった。会って大丈夫?って言いたかった。




だから、りっちゃんの家の裏に回ったんだ。りっちゃんの家は大きな平屋で窓からなら、りっちゃんの部屋が見えるし気づいてくれるかと思ったんだ。


りっちゃんの部屋を部屋を覗くとりっちゃんは布団に座ってたよ。両足を伸ばして、チョコンっていう風に。




「りっちゃん」って声をかけようとして、俺はやめた。




りっちゃんが突然自分の体搔きむしり始めたから。




パジャマをまくって腕を掻きむしり、顔をがりがりと激しく掻いたり、掻いたところは遠目からでもわかるぐらい血が出てた。俺はただ見てることしかできなかったよ。そのりっちゃんは俺が知るりっちゃんじゃなかったから。




「キャハハハハハハハ キャッハハハハハ」




りっちゃんは掻きむしりながらけたたましく笑い出した。外にいる俺でもうるさいくらいの甲高く大きい声だった。






りっちゃんは笑ってたけど、目が笑ってないのが見ていて分かった。


俺は震えてみているだけだ。りっちゃんがこんなに怖く感じるなんて初めてだった。




やっとのことで、転びそうになりながら家に帰ったよ。りっちゃんの甲高い声を背に。


それからはもう早く夏休みが過ぎて家に、両親と暮らす家に早く帰りたいと思いながら過ごした。夏休みが早く終われなんて、初めて思った。




その後はまぁ、りっちゃんはもちろん、たっちゃんとも疎遠になったしじいちゃんのところへ行くこともなかった。あんな体験してもう行くことも嫌になったからな。




ここまではよかった。べつに、良くはないが専門学校に入学して一時はあの日のこともろくに思い出さなくなってたし、二人のことも忘れかけてた。




問題はここからなんだ。






専門学校入った年の秋ごろ、たっちゃんから電話があった。




「リツコがいなくなった」


たっちゃんは電話口でもわかるほどに焦りながらそう言った。




りっちゃんはあの日以来地元の学校にも来なくなり、ずっと家で療養という形で過ごしていたそうで、ただたっちゃんも中学卒業後に上京していたらしく中学以降のりっちゃんの様子はわからないとのことだった。




「急に電話して悪いな。でもな、あんなことあったし俺もせん方がいいって言ったんやけどリツコのお母が


律子は新司くんのところにいってるかもしれんって、連絡しろって聞かないんだよ」




「え、俺は知らないよ。りっちゃんにあってもないし」




「そんなこと知ってるよ俺は、一応念のためだって」




りっちゃんのことを電話口で聞くほど俺はあの日の豹変したりっちゃんを思い出す。




「りっちゃんのお母がさ、りっちゃんは新司君のこと好きだったし、あの後も律子がシンジはいつ来るん?って夏になるたび言ってた、なんて言ってくるから俺も断れなくてな」




握っている受話器はいつの間にか汗で滑ってた。りっちゃんが俺のところに?




俺もりっちゃんは好きだったし、たぶん今も好きだ。でもそれは、あんな姿のりっちゃんじゃない。あの状態のりっちゃんには俺は会いたくなかった。


ひどい話だよな。でも、あの日のりっちゃんの姿はそれぐらい強烈だったんだよ






結論から言うと、りっちゃんは来なかった。来なかったけど、電話があった数日後に郵便受けに一通の手紙が届いてた。子供が書いたようなへたくそな宛先と宛名、


そして、差出人として「なかやま りつこ」って書いてあった。




手紙を裏返すと、裏面は真っ赤に塗りつぶされてた。まるっきりあの日と同じように。


多分俺たちが肝試しに使ったあの紙と同じものだと思う。そう俺は思う。




質の悪い悪戯かと思った。でもたっちゃんがこんなことするわけないし、このことを知っている人間は思いつく限りこんなことはしない人たちばかりだ。それに文字が、このへたくそで特徴的な文字はりっちゃんの字だったから。


捨てようかと思ったけど、捨てられなかった。捨てたらたぶん、もっとひどくなってただろうから。




それから夏になると毎日届くようになった。いっつもへたくそな字で書かれた真っ赤な裏面の手紙が。


引っ越ししても届くもんだから逃げられないなって悟ったよ。へたくそな字で部屋番まで書いて。


りっちゃんはメンヘラ気質な女の子だったんだ。






りっちゃんは行方不明のまま、今も見つかってない。未だにたっちゃん経由でりっちゃんが来ていないかの連絡が入る。


でも、分かるんだよ。手紙が届くたびりっちゃんは俺に会いに来てるんだってね。




りっちゃんはああ見えてまぁまぁの美少女だと思うよ。そう考えたらいいんじゃないかって最近気づいた。気が少しでも楽になるかと思ってね。






想えば俺たち二人は相思相愛だったんだよ。りっちゃんに会いたい。


笑顔な所も泣いてるところも悔しがってるところも怒ってるところも手が早いところも体が弱いところも、狂って傷ついているところもメンヘラチックなところも




すべてりっちゃんなんだ。




もう心の準備万端だ。最後の手紙が来た。りっちゃんが持ってきてくれた。






















































この手紙は俺の親友、佐藤新司の遺体のそばにあったものだ。新司は数えきれないほどの手紙の上に倒れるようにして死んでいた。片手には中山律子だと思われる右手を握りしめて。


新司は安らかな顔だったよ。最後は幸せだったんじゃないかな。少なくとも。






中山律子の遺体は右手以外、今もまだ見つかってない




俺は手紙の通りに、この話を投下しようと思う。新司の最後の頼みだ。叶えてやるのが親友ってもんだろ。なぁ、リツコ。





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