第17話 怪談

 小学生の頃の話です。だいぶ昔の出来事なので、うろ覚えです。


 小学校で怪談が流行っていました。

 私はあまり得意ではなかったのですが、面白い事が好きな友達に誘われて、学校で怪談を聞かされていました。


 宿泊学習の時も、ルームメイトで怪談をしようという事になりました。

 私は早く寝たかったのですが、部屋にいる全員で参加しようと言われ、しぶしぶ参加しました。

 百物語形式で、円になって布団の上に座ります。

 座ったメンバーを見ると、他の部屋の人もいました。面白そうだから参加するそうです。


 一人ひとり、持っている怪談を話していきます。大抵はテレビや雑誌で見聞きした話らしく、「それ知ってるー」とか「オチが読めた」とか、からかう声がよく上がりました。

 私は怪談を一つも持っていなかったのですが、どうしても話してくれと言われ、第16話で記載した布団の中の顔の話をした気がします。けれど「見間違いでしょ」「それって怪談なの?」と一蹴されました。


 全員が話し終えました。

 「何も起きないね」「解散しようか」とクラスメイト達が言っていると、部屋の電気がふっと消えました。

「きゃあ!」

「ホントにダメって!」

「電気つけて!」

 クラスメイト達が叫んでいる間に、電気はつきました。

 電気をつけた一人以外のクラスメイトは、座ったままです。

 誰かがイタズラで消したんだろう、とみんなは特に気にする素振りはありません。

 オチもついたし寝ようという流れになり、みんなが順々に立ち上がっている時です。


 あれ、こんな子いたかな。

 未だに座っている人の中に、最初はいなかったがいます。

 みんなと変わらない服装で、おかっぱのような黒髪の女の子です。年齢も変わらないようですが、少しだけ小柄でした。

 私はその子に

 一学年に三クラスしかない学校なので、たいていの顔は見覚えがありますが、転入生も多い学校でした。

 別のクラスに来た転校生が、誰かに誘われて途中で参加したのかな、と思いました。

 でも「この子も参加するから」と誰も言ってなかった気がします。私が聞き逃したかな。


 立ち上がっていくクラスメイト達は、その子を気にしていないようです。

 その女の子の扱いに少し違和感を持った私は、女の子に声をかけようとしました。

 しかし、その前にクラスメイトに話しかけられ、「先生が来るから、早く寝たふりをしないと」の言葉に、私はバタバタと就寝準備をしました。

 全員が布団に入った頃に、先生が点検にやって来ました。

 先生の点呼は何事もなく乗り切り、周りを見ると、さっきの女の子はいなくなっていました。

 先生が来る前までこの部屋にいたのなら、先生とすれ違っているはずなのに、先生は特に何も言ってませんでした。


 私は布団に入ったクラスメイト達に、「さっきまで一緒に怪談を聞いていた女の子は、部屋に戻れたの?」と尋ねました。

「Aちゃんなら怪談が終わってすぐに帰ったよ」

 クラスメイトは他の部屋の子の名前を挙げます。

「Aちゃんじゃなくて、名前は分からないんだけど、途中から参加した子。髪が短い感じの」

 私は再度尋ねます。

「そんな子いたっけ?」

「やめてよーこわーい」

「減るなら分かるけど、増えるなんて聞いたことがないよ」

「ほらー寝るよー」

 その夜はそれでお開きになりました。


 翌朝。

 私は学年一同が集まる場で、あの女の子を探しましたが、該当する人はいませんでした。


 私はそれ以来、怪談やホラーが苦手になりました。


 終わり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る