　これまで色々なものを見ましたが、人型はまだ怖くありません。

　人型ならフィクションや作り物の方が断然怖いです。

　私が見た一番不思議で怖かったものは、人型ではありませんでした。

　昔、一年だけ住んでいたアパートの二階の部屋で、電話をしていた時でした。

　足元を黒いものが横切っていきます。

　最初は虫かと思いましたが、大きさが違います。猫くらいありました。

　けれど私は何も飼っていません。

　よく見ると、黒いけれど半透明で、山のような形をしており、目玉が一つだけ付いていました。体の一部分だけが私の部屋の床に突き出ているようです。

　それは部屋をななめに横切って、そのまま去っていきました。

　二十秒くらいの出来事だったと思います。

　電話中の私は、「うわああ」と叫びましたが、なんと説明したらいいか分からず、「変なのが通った」としか言えませんでした。

　あれはなんだったのでしょう。

　強いて言うなら、クトゥルフ的な名状しがたきもの、もしくは妖怪でしょうか。

　不思議なこともあるものです。

　終わり

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい