第22話 祝石できた?
二日後、荷物を整えてフラーシュオオトカゲの馬車でフラーシュ王国を出る。
ニグム様は後処理があるとのことで、一週間後にサービール王国で合流しようということになった。
数日馬車に揺られ、サービール王国に到着してから貴族街にある屋敷に戻り、アロエの効果を調べて抗炎症の成分を付与できないものかとアロエの果肉を紙に載せて、今まで付与を繰り返してきた幻魔石に巻きつける。
同じく失敗の繰り返しをしてきた幻魔石を使って、紙をしっかり押しつけていく。
「あとは土に埋めて……これで上手くいかないかしら?」
アロエの抗炎症効果が付与できたら、花粉症による鼻水や涙から起こる炎症を抑えられないものかと思ったんだけれど。
そういえば前世ではオリーブやヨモギには抗アレルギー成分があったよね。
もしアロエの果肉の成分付与ができたら、オリーブやヨモギで抗アレルギー成分を幻魔石に付与できるかもしれない。
試してみよう。
合流まで一週間あるし、ぎりぎりまで実験してみよう。
いや、でも別にアロエの成分付与成功を待たなくてもいいかな?
他の失敗してきた幻魔石を使って紙に今まで書いていた効果プラスヨモギ、及びオリーブを紙に載せて張りつけて土に埋めてみよう。
時間を忘れて没頭すると、ハゼランに声をかけられた。
「フィエラシーラ姫様、そろそろお夕飯のお時間です」
「わっ!? も、もうそんな時間? ちょっと待って、この二つだけ土に埋めさせて」
「はい。――そうですわ、これだけご報告です。影の護衛から、ここ数日数人の暗殺者が襲ってきたとのことです。どれも様子を見るのみだったようですが」
「そうですか。まあ、想定内ですね」
実際に手をかければ依頼した者がフラーシュ王国国内にいたとしたら、その者に罰痕が現れる。
私が国外にいても、一度加護を与えられた者に害が与えられ、その原因がフラーシュ王国国内にいればその者が罰せられるのだもの。
「もう、姫様は達観しすぎですわ。もっとびっくりしてください! 命が狙われているんですよ!」
「もちろんびっくりしているわ。フラーシュ王国国内にいる間はフラーシュ様の加護がいかなるものからもお守りいただけるけれど、国外ではそうもいきませんもの。けれど、私はコキアもハゼランも、他の護衛たちのことも信じておりますもの」
「も、もお~~~~」
頬を赤くしてプイ、と顔を背けるハゼラン。
彼女のこういうところが可愛いと思う。
それから四日後。
例の三つ――アロエ、オリーブ、ヨモギを巻き込んで埋めた鉢を調べると、なんとヨモギを巻きつけた幻魔石が
エメラルドカットのエメラルド風の
「できた。でも……効果は……?」
とりあえずハンカチに包んで持って食堂へ行く。
朝食を用意してくれていたコキアから、手紙を手渡される。
これは――ニグム様の字。
「ニグム様からのお手紙でございます」
「先に確認したいわ。ペーパーナイフを」
「はい、そうおっしゃると思っておりました」
「ありがとう」
封を切り、中の便箋を取り出し、開いてみてみる。
うん、
それに、あのあとのフラーシュ王国の後始末の顛末も書いてあった。
私に毒を盛るよう指示をしたのは、ニグム様の叔父様のお一人。
今は家臣になっているが、元王位継承のあるお方。
ニグム様のことは、前々から気に食わないと突っかかってくることが多く、ニグム様にご自分の娘を正妻に――あるいは必ずハーレムに入れるよう圧をかけていたらしい。
なるほど。シンプルに、私が邪魔だったのね。
罰痕が現れたことで、彼を地下牢に入れて沙汰を国王陛下に任せることでまとまった。
いくら国王陛下の弟の一人とはいえ、罰痕が現れた者を殺さずにただ牢に入れておくわけにはいかない。
南海の監獄に送るのが、有力なのではないだろうか――ということみたい。
そこは孤島。
船でなければ行くことはできないし、一応フラーシュ様の加護の範囲内なので迂闊な真似はできないだろう。
見せしめにもなり、なおかつ一般独房に入れられるとなれば元王族は平民の極悪犯に嬲り殺しのような目に遭うだろうな。
仕方がない。
それよりも、
明日にはサービール王国に到着するので、そのまま
休みなくの移動でお疲れだろうに「一刻も早く君のご両親にご挨拶の上、婚約を許してもらいたい」と書かれていた。
婚約なんて書面上でもできるものなのに……直接許しをもらいたい、なんて……。
今時、それに、国の規模的にも、そんなことをニグム様がする必要なんて、ないはずなのに。
「悶絶しておられるところ申し訳ございませんが、そろそろ朝食を。姫様」
「そ! そうですね! 食べます!!」
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