管理外魔法少女は愛されている
雪兎 夜
第一章
第0話 Once upon a time
「なんだ、あれ」
大都会の空に、ぽっかりと開いた穴を見上げながら1人の少年が呟く。
流石、東京。まるで現実みたいに見える。これこそが最新のプロジェクションマッピングというものなのか、と少年は結論付けようとしたが、そんな考えは一瞬で変わる。
悪戯にしては手が混んでいると困惑した表情を見せる少年の隣で、教室ではゲラゲラと笑い声を響かせる少年が無言で、ぽっかりと開いた穴の方に人差し指を向ける。
プルプルと震える指先が指し示す方向へ少年らは目を凝らす。
そこには毎日見ている空の色とは程遠く、真っ暗闇から姿を現した。
「宇宙人?」
宙に浮く人物は全身から眩い光を放ち、身にまとうローブがひらひらと揺れる。
突如起きた不可思議な現象に人々はスマートフォンを構え、その場に立ち止まる。中には何かの撮影かと話す者もいた。
待ちに待った修学旅行最終日のグループ行動を楽しんでいたが、大人しく状況を観察していた少年は薄々勘付いていた。
これはフィクションやCGなんかじゃないと。
その証拠に冷静に指摘しようと吐き出した息は声帯を震わすことが叶わなかったのだから。
「この国を治める者。全国民達よ。聞け!
我は大魔法使い、
謎の人物をひと目見ようと数え切れない人々で交差点はごった返す。
困惑が広がると同時にあちこちから野次が飛び、状況を面白がった配信者が配信開始ボタンを押す。
コメント
:「枠取り感謝」
:「これってCGとかARって奴?」
:「有識者、説明よろ」
:「大魔法使いだってw」
:「おばあちゃん。おとぎ話は終わったでしょ」
:「どうせ合成だろ」
:「魔法はデタラメ。乙」
大魔法使いと名乗る者は、こうなることを予測していたのか冷静に言葉を紡ぐ。
「少しばかり、説明が必要なようだ。
我は魔法使いであり、独自に開発した魔道具と時間操作魔法を使って過去からタイムリープしてきた、と言ったとしても君達は当然疑うだろうな。
──ならば、証明しよう。我の
そう言うと右手を前に出し、目を瞑りながら頭にイメージを膨らませる。
すると、大魔法使いの目の前には1秒も経たずに眩しい塊が生まれ、その周りに白い光の帯が何本も絡み付く。
彼女は躊躇うことなく、出していた右手を邪魔な埃を祓うような感覚で軽く手首の関節を上に曲げる。
その動きに従い、すぐさま上昇していった光は、交差点にいた者達の遥か頭上で弾け、透明な光となった記憶は降り掛かった。
全ての絵の具が混じり合ったような不可思議なグラデーションを描く空。
跡形も無く崩壊し、瓦礫の山が幾つも積み重なるビル群の残骸。
あちこちで地面がひび割れ、土が見えてくるほど剥き出しになったアスファルト。
人々の目の前に立ち塞がる小さな娘と何十メートルもの体格でこちらをじっと見つめている、優に100は超える数の怪物。
群れの先頭に立つ一際大きい怪物の足元に転がる1人の少女。
身に纏う服はぼろぼろに破け、真珠のような肌も傷だらけ。これで出血していないなんて。
まるで魔法だ。
そして、人々は嫌でも察してしまうだろう。今観た景色は魔法で再現された悲劇であり、いずれ訪れる日本の未来だと。
強い衝撃を受けた群衆の喧騒は静まり、体が固まって動けなくなる様子を見た大魔法使いは、サッと手を振って魔法を解くと、再び声を張り上げた。
「──君達が今、目にした怪物らを倒し、
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