秋の5題小説マラソン

武藤勇城

月見といえば

 よく日本人は他人に流されやすいと言います。自主性がないとか、集団心理とか協調性とか、共感性心理とか。流行ものに弱いとか、逆に流行に敏感だとか。言い方は色々あります。ですが、これは日本に限った話ではありません。


 今の時期、流行として出てくる言葉に『月見バーガー』があります。某世界的ハンバーガーチェーン店が、秋口から大々的に宣伝して売り出す商品です。バンバンCMを流し、ネットや口コミを利用して流行を作り出します。すると、一般庶民がそれに流され、私も俺もと飛び付いてしまうのです。

 ですが、冷静に考えると、その商品って大したものじゃないんです。普通のバーガーに目玉焼きが乗っている程度でしかありません。我先にと競って買うほどの品物では、少なくともないはずです。

 ハンバーグと卵の相性は、とても良いものです。自分でハンバーグを作って、あるいは出来合いのハンバーグであってもですが、その上に半熟の目玉焼きや温泉卵を乗せて。トロッとした黄身と一緒に頬張れば、ご飯が進みます。しかしながら、これが固めの卵焼きだったら、固ゆで卵だったら、美味しさは半減します。そして、ハンバーガーという食べ物の性質上、月見の卵は半熟には出来ません。

 つまるところ、この流行に乗った、あるいは集団心理に流されて食べた商品の価値は、冷静に見れば低いわけです。それなのに挙って集まってしまう、それこそが共感性心理であり販売戦略であり宣伝効果というわけです。無駄な宣伝費用は、商品価格にそのまま上乗せされていますから、その分も消費者が負担している、という事でもあります。


 これはホンの一例であり、このように作り上げられる流行や宣伝活動はそこら中にあります。一定の広報・告知というのは、何事においても必要で、まず知って貰う努力をしなければいけません。しかし度を越えた広報というのは、品質の低下やコストアップになるだけのネガティブ要素です。最近話題の某男性アイドルグループ事務所もそうです。今まで熱狂していた人達も、真実に気付き冷や水を浴びたのでは。ナチスも同じ手法を利用し民心掌握と戦意高揚を行いました。外食産業でも、音楽やアニメなどのエンタメ業界でも。カクヨムやノベルアッププラスなどの、素人の小説投稿サイトでも、似たような事が言えるでしょう。


 流行や他人の言動に流されず、集団心理に乗っからず、現実を見て冷静な判断が出来るようになりたいものです。

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