第253話 攻略参加依頼。
「わーい、お出かけにゃ」
ということで晴田市に向けて出発する。
今日は軽トラに乗り、助手席は人型の
マナミサンは空間拡張された後部荷台(
マナミサン曰く、「走行中の足場で剣を振るのは修行になりそうです!」とのたまっていた。
まあ、不思議な力で走行中でも揺れないんだけれども。
道中は何事もなく平和であった。
ただ、人型で助手席に乗ってはしゃいだ
猫のしっぽもうれしいと動くのかな?
といった疑問もあったが、それを言うと『犬野郎と一緒にするなにゃ!』と美剣を怒らせそうだから胸の内に秘めておいた。
そんな平穏な時間の中、オレのスマホから着信音が。
そして、それと同時に軽トラのフロントガラス、
そう、オレもつい最近知ったのだが、いつの間にかこの軽トラ、Bluetoothのような機能を搭載していた。
オレンジカートリッジをビルドインしたときからなのか、それともさらなる異質化の時からなのか定かではないのだが、とにかくスマホがハンズフリーで通話できてしまうのだ。
オレはめったにスマホで通話などしないので、先日たまたま運転中に着信があって初めて気が付いた。
本来のBluetoothなのか。それに似た不思議な何かの機能なのかはよくわからない。とにかく、オレとマナミサンのスマホは使用可能であることは確かだ。
そのうち、美剣にもスマホを買って使用可能になるか確かめてみたいと思っている。
おっと、電話に出なくては。
この番号は――、
「はいもしもし」
「おおう! あんちゃん! 元気かい!」
隊長ズの片割れ、自衛隊のほうの隊長さんだった。
「この前はどうもです。何か動きでもありましたか?」
隊長さん達とはこの前、我が家のダンジョンが拡張したときに調査に同行しに来てその時会話をして以来だ。
「おう、この前の話だが、いよいよ実行の日程を打合せしたくてな! そろそろダンジョンがあふれそうなヤバイ感じなんだ!」
この前の話とは。
丸舘市から車で1時間ほどの距離にある、熊岱市とは反対側の鹿爪市にある通称ストーンダンジョン。
環状列石の遺跡の真ん中に出来たこのダンジョンは、自衛隊の晴田駐屯地の部隊が攻略を進めていたのだが、5階層のボスを倒せずに攻略が滞っていたのだ。
5階層までの魔物の間引きはそれなりに行なっていたそうなのだが、いかんせんそれより深い層に立ち入ることが出来ずにいたためか、ここ最近は魔物のPOP間隔が日に日に短くなってきていたようだ。
そのダンジョンは【脅威度C】と、日本最大の釧路ダンジョンの【脅威度A】に比べれば2段階は低い。
そのため、地方の部隊でも対応可能と判断されて晴田県の駐屯地部隊で攻略が始まり、最初は順調であったのだが、5階層でつまづいた。
何度も5階層までのアタックを仕掛けているうちに部隊のメンバーも熟練度を増して行き、全国でも屈指の精鋭部隊へと上り詰めた実力を持ってはいるのだが、いかんせん5階層のボスとは相性が悪いらしい。
いまだ人的被害は出ていないのが幸いだが、じつはこのダンジョンでは、発生当初に魔物がダンジョン外に出てきたことが確認されている。
遺跡であり、観光地でもあったことが幸いし、そのダンジョン外に出てきた魔物は観光案内所の職員たちがいち早く気づき、連絡を受けた警察や猟友会などが迅速に撃退している。
そのような経歴のあるダンジョンで、前述の通り魔物の湧き方に異変が出てきたとなれば、
「わかりました。ちなみに、いつ頃の予定ですか? こっちは動かせない予定はそうそうないので合わせられると思いますけど?」
「そうか、助かるぜ! じゃあ、今日からちょうど1週間後でどうだい? それなら東北管区の小賀城駐屯地からの応援も十分間に合う。」
「はい、1週間後ですね。大丈夫です。なにか特別準備しておくこととかありますか?」
「いや、その軽トラとお嬢ちゃんたちがいれば十分だ。ガソリンとかは食料はこっちで準備しておくし、近くだから宿泊は必要ねえだろうからな。ああ、しいて言えば風邪ひくなよ! そんくらいだ!」
「了解です。では、詳細な時間とかはまた近くなったら教えてください。」
「おう、ちゃんと報酬も払うからな! よろしく頼むぜ!」
自衛隊隊長との通話は切れた。
来週という話なのでそれほど切羽詰まることはないな。
今日これから行く探索者センターでなにか有用そうなものが無いか見て見ようか。
あとは、攻略の日までにダンジョンのカエルのドロップの『金鞠』を多めにためておけばいいかな。
ところで。
気になった点がひとつ。
さっきの電話の会話の中で、軽トラと美剣とマナミサンがいれば大丈夫という事は、オレは特にいらないという事だよな……
ちくせう。
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