第142話 ウサギがわたしにくれたもの。
テレポーターによって飛ばされたオレたちは、未知のフロアの中を軽トラに乗って進んでいく。
「玄室に入ると魔物と出くわしやすいから、まずは回廊部分から周っていこう。」
マップは進んでいけば埋まるが、問題はこのフロアの敵がどれだけ強いのかという事だ。
ゲームの中でも、同じように罠にかかった時等は、石の中は免れても飛ばされた先の強い魔物によく瞬殺されて
通路の扉を開けなくても周れる範囲のマップを埋めていく。
といっても、それでは移動できる範囲は限られるので、あっという間にその範囲のマップは埋まってくる。
「そこの角を曲がると行き止まりっぽいですね」
「まあ、行ってみないと何とも言えん」
そして、曲がり角を曲がる。
―なにものかにであった!―
「うさぎだにゃ」
「ずいぶんと歯がご立派なうさぎさんですね」
「気をつけろ! こいつら、首を狙ってくるぞ!」
そう、この
「人型じゃないので『
ウサギ共は合計13匹。今後の事を考えると魔法はもったいない。
よし、幸いウサギどものサイズは通常のより少し大きい位。これくらいならば、軽トラで轢いてしまえー?!
プシュゥ~
「なっ! パンクだと!」
しまった、油断した!
ウサギの歯が刺さって軽トラのタイヤがパンクしてしまった!
軽トラの『結界防御』で相手の攻撃は大丈夫だと思っていたが、どうやら轢くときに丁度ウサギの歯が刺さる角度になってしまったらしい。
こちらからの攻撃の時は『結界防御』は作動しないのだ。
パンクしてもホイールをゴリゴリいわせて走行できないことはないが、速度はほとんど出せない。それに、予想が正しければここは地下2階。
軽トラの自動修復が出来る『
ということは、軽トラをこのフロアに置いて、徒歩で脱出しなければならないことになる。ハードルがまた一段上がってしまった。
「とりあえず、目の前のウサギ共を片付けなきゃな」
美剣の攻撃はウサギの首を狙うが、人型と違って的が小さい。それに、ウサギの毛皮が爪の斬撃を滑らせ、なかなか一撃では有効打を入れられず苦戦している。
マナミサンも、
オレはと言えば、盾の面での攻撃は、『
そうして、時間をかけてウサギ共を殲滅した後、そこに宝箱が残されていた。
その宝箱の中には……
「なんだこのご都合主義は……」
「タイヤだニャ」
「軽トラのと……同じサイズですね。」
なんと、軽トラのタイヤだった。
ダンジョンの魔物からタイヤがドロップするなんて聞いたことねえよ! 宝箱から出てくる大きさじゃねえだろ! なにか? これから先、このウサギは延々とタイヤを落とすのか! オレにタイヤ屋になれとでもいうのか!
「まあまあ、先輩。おそらくこれは
「そうにゃ。たぶん、ご主人が倒した奴からのレアドロップだと思うニャよ? だって、わたしはタイヤなんて想像もしてなかったからにゃ」
たしかに、オレは自分のミスでパンクさせたタイヤの事を気にしながら戦闘していたのでそういわれればそうなんだろうが……
なんだか納得できない気持ちのまま、ジャッキアップしてパンクしたタイヤを交換する。工具一式があって良かった。ちなみに軽トラのジャッキは運転席の座席の下にあるぞ!
ちなみにスペアタイヤも積まれていた。くっ……オレの心労はいったい……。
ご丁寧に、ドロップしたタイヤはこの前交換したばかりの冬タイヤと同じメーカーのタイヤだったのにはびっくりした。
「どうせだったらブリザッ〇が4本出て欲しかったな」
「オート〇ックスのタイヤは安いですからね」
「よくわからないのにゃ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
未開のフロアの玄室の扉を開けていき、元の階に戻る階段を探す。
次の玄室では、また齧歯バニーがポップした。
ウサギとの戦いに慣れてきた美剣はウサギの首を刎ね、マナミサンは脳天への一撃を与え、床にたたきつけることでダメージを増幅してウサギを倒す。そしてオレは、盾の下部を打ち付け床と挟むことで前足などを切断して部位欠損ダメージのほか、首にもヒットして一撃死クリティカルのダメージを与えることに成功する。
「ふう、ウサギの対処には慣れてきたな。もはや軽トラで轢かなくても大丈夫そうだ。」
「まだパンクの事を気にしてるんですか? あれは事故ですから、先輩が気に病む必要はないですよ?」
「にゃー、こんなん出てきたニャよ?」
美剣が宝箱を開けて取り出したドロップアイテムは……缶切りだった。
「……なんなんだ? このウサギは何でも屋か何かなのかな?」
このままでは雑貨屋が開けてしまう。
「今年の干支と関係があるのかニャ?」
「いや、お正月も終わりましたし……缶切りやタイヤは干支とはなんの関係も……」
「ところで、このウサギの共通のレアドロップってなんなんだろうな?」
「えーと、今調べますね。んー、牙? 歯? らしいですね。
ちなみにこのウサギのドロップ品の牙は、性質がセラミックに似ている事から歯科医師会によって
「みんな、歯磨きはちゃんとしような」
「「はい(なのにゃ)」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます