第14話 『良いお話』

「私からも、お礼させていただきます。『克也と私の作品』を飾っていただいてありがとうございます。」


「今回は、特別だからね。礼には及ばないよ。ところで、克也君の様子を聞きたいんだが、落ち着いたかな?」


克也と智恵さんが階段を降りていったのを確かめた寺本さんから、心配そうな様子で尋ねられた。


「かなり、不安定です。誰かが着いていないと危ないですね。」


正直に、私が感じたままを、伝えた。


「……………………そうか、わかった。早急に解決しないとな。」


寺本さんは、独り言のように、つぶやいて、


「解決?ですか?」


思わず聞き返すと、


「ああ、すまん、この後克也君も交えて話すから。克也君の身のまわりを、誰かに任せられそうかな?」


「昨日、沙友理さんに『慰めて』もらってましたよ。今日は、この後私が『慰めてあげる』予定です。」


「慰めるって?」


「昨日、不合格を確認した後、克也君は一人で沙友理さんのアトリエに行って『慰めて』もらって、帰ってきてから克也君の家族と私も交えて食事会して、その後私は沙友理さんのアトリエ訪ねて今後の対応を『話し合って』きました。

沙友理さんから色々アドバイス頂いて、今日これから私が『慰めてあげる』つもりです。」


「そうか、沙友理君もか……………………」


寺本さんは、私の『話し方』から察してくれたのか、


「もし良ければ、克也君に智恵を着けようと思っていたのだが、必要ないか……………………

若いって、良い事だな。」


寺本さんが智恵さんを克也に着けようと思っていたなんて、本当に克也は皆に好かれてるんだなと思ったけど、少し嫉妬してしまって寺本さんに意地悪したくなってしまった。

だって、智恵さんが克也に好意を持っているのは見ていれば分かるしね。

寺本さんも、それを知っていてそうするつもりだったんだろうしね。


「そうですよ、若いって、良い事なんですよ?

寺本さんも、まだまだ『お若い』みたいですよね?」


「……………………沙友理君から、『聞いた』のか?」


「はい、昨日沙友理さんからうかがいました。」


「……………………何処まで?」


思ったより、動揺を隠せない寺本さんに、


「多分、全部ですね。克也にとって、必要な『情報』だと思ったので、聞き出して、教えて貰いました。」


そう、全部、克也の為なんだからね!


「……………………克也君が羨ましいよ。もう一つ、克也君が戻って来る前に君に話しておきたいことがあってね。」


「何でしょうか?チョット怖いんですけど。」


「克也君にとっては、『良いお話』だ。ただ、この話が纏まると、君にとっては悪い方向へ進むかもしれんが。」


「克也にとって良いお話なら、勧めてください。私のことはお気になさらずに。」


「そうか……………………この話を君にする前に、もう一つ聞いておきたい。」


寺本さんが、改まって、真剣な表情で話し始めた。


私をモデルにして克也が描いて寺本さんに預けた、『もう一枚の絵』に関する事だった。


寺本さん、それだけはお断りしましたよね?

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