秋の連短詩集

「寝床」

夏場 一階で寝ている老猫が

朝、二階の部屋で眠っていた

スヤスヤと

腹を見せず 少し、丸まって眠るその姿が

私にとっては 秋の訪れ



***



「自転車」

どこまでも走って行きたくなる

秋に 心躍るままに

登り坂を 青空に向かって 駆け上がる

平地を 地平線に向かって 突き進む

そうして 一息 吸い込んだ秋の空気は

どんな料理よりも 体に染みこみ おいしいのだ



***



「窓辺」

夜 涼しさに誘われて

縁側に えいや、と 腰を下ろすと

網戸の向こう 夜の庭から

草と 大地の匂いが

涼しさとともに すすすーっと

鼻腔をやさしく潤してくる

ああ そのまろやかな涼気を 肺で咀嚼すると

勝手に、ため息が漏れるのだ

秋だなあ。

ああ 嬉しい 秋だなあ。と



***



「秋」

秋よ ああ、秋よ

俺がどれだけお前を待っていたか

分かるまい

分かるまいよ

でも、 もういい

お前は 夏を季節の土俵から押し出して ちゃーんとやってきてくれたのだから

ここに 空気に 青空に 雲に 夜に 草木に

世界の ありとあらゆるところに 秋よ お前はやってきた

俺は 明日、 また お前に会えるのが、楽しみだよ

おやすみ 秋よ

おやすみよ……

また 明日…………

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