洗濯していきなよ。

@remonkaju

名前教えて。

ピーピーピー


 イヤフォンをつけていてもわかるくらいの大きさで洗濯機から音がなった、何年も前から使っているiphonの有線イヤフォンを取り立ち上がった。

 外から20分前よりも勢いが強くなった雨音が聞こえる、家に変えるのがますます憂鬱になった、コインランドリーのドラム式洗濯機の蓋を慣れた手つきで鬱憤を晴らすかのように勢いよく開けた、中には十分にすすぎ洗いされ濡れてびちょびちょになった服や下着が大量に入っていた。


 ポケットの中から小さく小さくまとめられた、広げるとすごく多いなビニール袋をとりだした、その大きさにはこのコインランドリーを使い始めで2年経つがいまだに周りからの視線が気になるほどにだ、大きく広がったビニール袋の穴の中にドラム式洗濯機から1つずつ濡れた洗濯物を入れていった。



 黒の地味なTシャツ、ヨレヨレになったボクサーパンツ、まだ幼げな妹のショーツにスポーツブラ、母の少しだけおばさんくさくなった下着、穴の空いた靴下、制服のシャツ、色々な洗濯物を素早く丁寧にビーニール袋に入れた。 

 水を含んだビニール袋は当然のように重かった、だがこの生活をもう何年も暮らしているのでそこまで苦ではない。



 だが今日はあまり少ない雨の日、時刻はもうすぐ24時になる。

 あまりない街灯の明かりを頼りに今日も家に帰る、帰ったところで気分が沈むだけだが帰らなければならない、家族のために。



 いや自分のために。



 重い大きなビニール袋を持って、重りがつけられたように重い足を引きずり外に出た、雨が降っているのでボロボロの透明のビーニール傘を手に持ち、ゆっくりと広げた。

 最初はボタン式だったが一ヶ月もしない間に錆びて手動ではないと開けられないようになってしまった。



 右手に傘を持ち、左手に重たくて大きなビニール袋を持ち、まるでクリスマスに雨が降った時のサンタみたいな状況だった。

 少なくともうちにサンタが来たのは2年くらいだなとふと頭によぎった。

 別に親は悪くないと思う。



 よく思えばこの生きてきた17年間、特にいいことなんてなかったし嬉しいことなんて、恋人ができたくらいだった。

 初めてできた恋人だからと大切にしている形だけの関係。

 


 途中、すき家のなぜあるのかわからない時計が街灯のわずかな灯りで見え、もう24時をまわり今日だったはずの日は昨日になっていた。

 家まではまだ1キロぐらいある、ますます足は動かなくなった。



 歩いている隣には道路が広がっている、道路と言ってもそんな大層に広く大きな道路でもない小さな道路だった、設備もそこまでで水たまりがたくさん出来上がっていた。

 ちょっと歩くと微妙な灯りと、ともに屋根のついたベンチがあった。

 もちろん、座った。



 ポケットからハイライトのメンソールの箱を取り出し、中を確認するとちょうどあと一本残っていたので一本口に咥えた。

 もう片方のポケットからいつも使っているライターを取り出した。

 カチッ カチッ

 何回も押したがあらわれるはずの炎があらわれない、おそらくもう使えなくなったようだ。



 ついてるようでついてない。

 


「はぁ」

 溜息ひとつをついてベンチから立ち上がった。

 また、重い足を引きずって歩き始めた。



 ただただ静かだった、何気にこの時間が一番人生で落ち着くのかもしれない。



 ただ、そんな落ち着いた時間もすぐさま奪われていった。

 一瞬だった、隣の道路に猛スピードの車が通りすぎていった、目がおかしかったのか、光の速さだった。

 通りすぎただけなら良かったのだが。



 車が通り過ぎたことによって、雨でできた水たまりが車のスピードにより勢いよく跳ね上がり綺麗に隣を歩いていたら、たまった雨水がかかった。

 着ていた白Tと黒のスウェットパンツがびしょびしょになったしかも土か溶けて泥混じりになりドロドロした汚れがついた。



 相変わらずついてない、タバコにも水がかかって多分二度と火がつかないだろう。

 「ねぇ君、大丈夫?」

 後ろの方から透き通るような声が聞こえた。

 ちょっと怖い気持ちになってゆっくりと振り返った。

 なぜだが声が出なかった、多分綺麗だったからだ。



 雨音が少し弱くなった気がする。

 振り返ってその場にいたのは小柄でちょっと高そうな服を着た、髪の毛が金髪の肩につくかつかないかくらいのいわゆるボブの髪型になるんだろう。

 とにかく言葉では言い表せないほどに綺麗だった。



「いや大丈夫です」

 正直大丈夫ではなさそうだけど大丈夫と答えた、美人に強がりでもしたいんだろうか自分は、あとタバコが口に合ってうまく喋れない。

「大丈夫じゃなさそうだよ、てかなんでこんな時間にうろついてるの」

「いや大丈夫なんで」

もうそういうことしかできなくなっていた。

「でもそんな泥まみれで家まで帰るの?」

「はい」

「良かったら私の家よっていきなよすぐそこだし」

 金髪の美人に強引に手を引かれて、歩いた。

 こんな経験高校2年生でする人はそういないだろう。

 時間は24時20分、静寂の中人生が少しだけ光があらわれて変わったような気がした。



 手を連れられ、質問をされた。

「そのタバコハイライトのメンソールでしょ」

 口に咥えたタバコの銘柄がわかる、つまり同じものを吸っているのかよっぽどのタバコ好きかどちらかだと思う。

「私も吸ってるよ、おんなじの」

「そーなんですね」

「濡れてもう吸えないよねそれ」

「確かにそうですね」



 多分、会話が下手なんだと思う絶対に困らせている。

「てか君何歳?」

「17」

「未成年じゃん」

「失礼ですけど、何歳なんですか」

 やっと会話を頑張る気になって質問してみた。

「二十歳だよ」

「ほぼ未成年じゃないですか」

「立派な二十歳ですー」



 そんなくだらない会話をしていると4階建てのアパートとも言えずマンションとも言えないくらいの家についた、まわりには二階建てアパートが立ち並ぶ中、特に目立つ。



「ねぇ君名前は?」



 家の目の前、ここまでの道自然と足が軽くなっていることに今気が付いた、右斜め上にある蛾が群がる微妙な灯火で光っている街灯を見つめて、視点を移してまっすぐ正面を向いた。



「みなとです」



 17年生きてきた人生で最もシンプルな自己紹介だと思う。



「へーみなとくんね、いい名前だね」

 そういうと、家の方に振り返って歩いていった。

 みなとはとっさに声が出た。



「あなたの、、あなたの名前は」



 とっさに言ってしまった一言でも聞くときは今しかないと思った、多分この行動は間違いではないんだと思う。

 彼女はサラサラ金色の髪はふっわっとさせみなとの方を見つめていった」



「せな」



 一言、ただこの一言だけが聞きたかった、ただ。

 振り返ってこちらを見つめるせながあまりにも美しくて声が出なくなった。

「どした?そんな変な名前だったかな」

 彼女はあざとく頭を右にコクリと傾けて聞いてきた。

「いや、綺麗だったからあまりにも」

 頭で思っていたことがそのまま言葉をして発せられてしまった。



「それは嬉しいなみなとくんに言われるの」

 そうせなはありったけの嘘がなさそうに答えた。

 普通なら絶対に信じることはないがなぜだが信じたくなる。

 信じていないとダメなようなきがしてしまった。

 


 時刻は24時35分。

 時間は一瞬で過ぎ去っていった。

 暗くなり、まわりは少し肌寒く、まわりには誰1人もいない、あたりは静寂に包まれうっすらと聞こえる虫の声。

 唯一自分がありのままで入られた1人の時間がただ1人の女性に良い壊された。



 だが、これが後にどんな風にすぎていくかは誰だってわからなかった。


 

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