第13話 妹
12月1日
中神と拝島は、いよいよ店を回転させることになった。慣れない制服に袖を通し、静かな店内の空気を感じ取る。
拝島 良「確か、今日からエリック・シンキバの妹たちが来るんだよね。」
中神 恋「そうだったな。しかも、俺たちより1年若いらしい。」
拝島 良「緊張するな…。」
中神 恋「安心しろよ。1日目から関係がうまくいくわけないさ。肩の力を抜いていこう。それよりも、どうにかしてRSの目を掻い潜って立川を出たい…。」
そんな会話をしていると、女性二人組が店に入ってきた。
???「あ、君たちが新人従業員?」
中神 恋「ああ。それじゃあ、君たちは…。」
???「そう、私たちもここの従業員。名前はニコ・シンキバ。こっちは舞浜 水。」
舞浜 水「よ、よろしくお願いします…。」
中神と拝島は互いに軽く会釈しながら答えた。
「よろしくお願いします。」
午前の営業が終わり、昼休憩。厨房にて、それぞれが手際よくまかないを準備していた。
中神 恋「思った以上に慣れてるんだな。」
ニコ・シンキバ「まあ、ここで働いて結構長いからね。」
中神 恋「ああ。ところで気になったんだが、君の姓がシンキバってことは…。」
ニコ・シンキバ「そう、エリックの妹。」
舞浜 水「ぼ、僕もエリックの妹だよ。」
中神 恋「そんな食い気味で言わなくても。エリックって一体何者なんだ?RSを立ち上げる前は何をしてたんだ?」
ニコ・シンキバ「いきなり核心を突くねぇ。エリックはもともと、米原会の三次組織で若頭をやってたの。それで、組織が解散した時にNSを立ち上げたってわけ。」
中神 恋「最近、エリックと話したりしなかった?」
ニコ・シンキバ「そんなにしてないけど…君たちのことを話してたのは確かよ。立川から出しちゃダメだとか。聞きたいのはそれでしょ?」
中神 恋「やっぱりそうなのか。その理由は?」
ニコ・シンキバ「それは知らない。」
中神 恋「そうか…他に俺たちに関することは聞いていないか?」
ニコ・シンキバ「特にないけど…ああ、青梅連合のことを話してたな。本部を移したって言ってたよ。」
中神 恋「マジか。それって遠くないか…。」
拝島 良「いずれにせよ、まずはここでNSの目的を探る必要があるね。」
舞浜 水「もし壮に会いたいなら、立川第3ビルに行くといいよ。あそこが拠点みたいだから。でも、今もいるかは分からないけどね。」
中神 恋「なるほど、それは助かる情報だ。結構話してくれるんだな。」
舞浜 水「…実はね…ええと…いや、なんでもない。」
水の言葉に意味深なものを感じたが、中神は深追いしなかった。
午後の営業中。客が少なくなり、店内は静寂に包まれる。
中神 恋「思ったよりRSの構成員が来ないな。」
ニコ・シンキバ「今、主力はほとんど都内だからね。」
中神 恋「そうなのか。」
ニコ・シンキバ「特に歌舞伎町。ナンバー2と3が直接取り仕切ってるから、動きが激しいんだよ。」
中神 恋「なるほどな。そのナンバー2と3の名前を教えてくれないか?」
ニコ・シンキバ「会津高原 千秋、女性でRSのナンバー2。牛浜 元はナンバー3で、エリックの義兄弟よ。」
中神 恋「その二人が都内にいるのか。会うのは難しそうだな。」
ふと、寿司屋でエリックに聞いた斑目 渡の名前を思い出した。
中神 恋「ニコ、斑目 渡を知ってるか?」
ニコ・シンキバ「?知らないわね。」
中神 恋「そうか…。」
エリックと斑目が関係しているとすれば、RSの上層部に限定される可能性が高い。結局、エリックと直接話すしかないのか…。
営業終了後、薄暗い店内で片付けをしていると、ニコがふと声をかけた。
ニコ・シンキバ「今日はエリックの話ばっかりになっちゃったね。今度は恋君の話も聞かせてよ。」
中神 恋「ああ、済まない。俺も急にここに連れてこられて、頭の中が疑問だらけなんだ…。今度は約束する。」
舞浜 水「…それじゃ、またね。」
店を出て、夜風に当たりながら帰路につく。
拝島 良「意外と優しかったな。ただ彼女たち、信頼できると思うか?」
中神 恋「正直、わからない。ただ、信じるしかないだろうな。」
拝島 良「結局は自分たちで調べるしかないってことか。」
中神 恋「ああ。RSが敵か味方か…明日からが本当の勝負だな。」
冷たい風が頬をかすめる中、中神の目には強い決意が宿っていた。
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