凄く重いカレー

エリー.ファー

凄く重いカレー

 このカレー、めっちゃ重い。

 何これ。

 うっわ、違うやつだ。

 これ、ヤバい。

 重いカレーって、あるんだなぁ、くらいだったけど。

 全然違う。

 食べると分かるよ、これ。

 凄く重いカレーだ。

 脂っこいとか、具材が大きいとか、そういう意味で重いと思ってた。

 そういうことじゃないんだ。

 違うんだね。

 これ。

 このカレー。

 凄く重いんだ。

 重いっていうイメージが覆されるね。

 だって。

 本物の重さなんだもん。

 こっちが信じてた、重い、重くない、そんなものは関係ないんだね。

 真実の重さって、カレーに出てくるんだね。

 それこそさ。

 ダンベルとかだと思ってたよ。

 カレーなわけないよね、冷静に考えればさ。

 でも、違うんだよ。

 カレーが内包していたんだよ。

 重量、イコール、カレー。

 質量、イコール、カレー。

 重さ、イコール、カレー。

 一キロ、十キロ、百キロ。

 一トン、二トン、三トン。

 全部、違う。

 だって、カレーだから。

 真実を知るために食すカレーだから。

 分かるかな。

 うん、分からないだろうね。

 本当に、凄く重いカレーに会ったことのない皆には、分からないだろうね。

 重いってことをっ、真剣にっ、頭が千切れるほどっ、考えてっ、考えてっ、死ぬ気で考えてっ、カレー最高っ、とか。

 カレー万歳とかっ、カレー反逆罪とかっ、悩んで悩んで悩んで、必死に生き抜いて今を確かめるように食べるから気付けるんだよっ。

 分かってよっ。

 これはっ。

 今っ。

 目の前にあるカレーはさぁっ。

 凄く重いカレーなんだってっ。

 そんじょそこらのカレーと違うんだよっ。

 辛口とかっ、中辛とかっ、甘口とかっ。

 ビーフカレーっ。

 ポークカレーっ。

 チキンカレーっ。

 マトンカレーっ。

 味噌カレーっ。

 湯葉カレーっ。

 秋刀魚カレーっ。

 焼きナスカレーっ。

 ほうれん草カレーっ。

 レモンカレーっ。

 オレンジカレーっ。

 鯖味噌カレーっ。

 海苔カレーっ。

 コーンカレーっ。

 なめこカレーっ

 わかめカレーっ。

 バナナカレーっ。

 パイナップルカレーっ。

 ミネラルカレーッ。

 仏教カレーっ。

 チョコカレーっ。

 キャラメルカレーっ。

 そういうものとは全く違う、真理なんだよ。

 分かってよ。

 これが、カレーにかける人間の意地と誇りなんだよ。

 強さと哲学が、論理という箱舟で現れた結果が生み出した革命のファンファーレなんだよ。

 カレーは重くないんだよ。

 全然っ。

 重くないんだよ。

 ただ、そこには、多くの人の思いを乗せた凄く重いカレーがあるってことなんだよ。

 分かってよ。

 分かってくれよっ。

 凄く重いカレーがなきゃ、やってられないんだって。

 重いだけじゃダメ。

 カレーなだけでもダメ。

 凄いかどうかなんて、どうでもいいんだよ。

 この三つなんだよ、この三つが揃わないとダメなんだよっ。

 なんでっ、そんな死んだ目で、こっちを見るんだよっ。

 何で本気になれないんだよっ。

 だからっ。

 だからっ、お前はっ、いつまで経ってもそこどまりなんだろうがよぉっ。

 気づけよっ。

 この凄く重いカレーがどれだけの世界を築いているか理解しろよぉっ。

 大丈夫だとか、大丈夫じゃないとかっ。

 お前が何をしてきたかなんて。

 お前がこれから何をしようとしてるかなんて。

 全部っ、全部っ、無意味なんだよっ。

 だって。

 凄くっ、重いっ、カレーなんだよぉっ。


 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ。

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