第696話

オーディンは蘇ったエインヘリャル達を人間界に派遣した。

エインヘリャル達の魂はオーディンに縛られておりいくら殺られても復活が可能だった。

だが、派遣されているクロードの配下達はそんなエインヘリャル達を片手間で倒せるぐらいに強かった。

エインヘリャル達は決して弱くない。

元々は英雄と言われた人間達の集まりだ。

酒や女に溺れてもその腕は落ちていない。

「ぐぬぬ。これでは嫌がらせにしかならんではないか」

オーディンは憤怒で顔を赤くする。

「オーディン様。神獣達の準備ができました」

「おぉ。ならば解き放て」

「本当によろしいのですか?」

「構わん」

オーディンが解き放とうとしている神獣達は普通の人からすれば災害と変わらない。

そんな神獣が複数解き放たれれば人間界に与える影響は計り知れない。

解き放たれた神獣達は人間界の南側で大いに暴れまわった。

クロードの配下達はこのままではまずいと集結し、神獣達の相手をする。

神獣達とクロードの配下達の力は拮抗していた。

戦場となった地ではあちらこちらにその爪痕を残し、人が住める環境ではなくなっていた。

「このままでは・・・」

クロードの配下達はそう呟いたときどこからともなくクロードが現れた。

「これはまた酷いですね・・・」

クロードは散歩をするように神獣の一体に歩みよっていく。

歩み寄られた神獣は警戒するように距離を取ろうとする。

だが、まったく身動きが取れなかった。

クロードの発する神力によって体が言うことを聞かないのだ。

「よしよし。いい子ですね」

クロードが神獣の頭を撫でる。

その時、神獣はオーディンとクロードの格の違いを感じ取った。

自分達ではどうあがいても勝てない。

膝をつき頭を垂れる。

クロードは神獣の主と認められたのだ。

クロードが手懐けた神獣はここにいる神獣達のまとめ役だったようでほとんどの神獣はクロードを主として認めることになった。

従わなかった神獣も結局はクロードを前に何もすることができず配下に加わった。

「主よ。感謝します」

「いえ。神獣達を殺すわけにもいかないですしね」

神獣達はただの獣ではない。

この世界の均衡を保つ役割を持っている。

下手に殺せば今後、どのような現象が起こるかわからなかった。

それを理解していたクロードの配下達は殺さないように手心を加えていたのだ。

「さて。これ以上、面倒なことになる前に乗り込みますか」

「はっ。お供します」

援軍はまだだがクロードは配下達を連れてオーディンの待ち構える天上界に攻め入ることにした。

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