第681話
クロードは学園の授業の終わる時間にエリーゼの住む寮にやってきた。
「クロード卿。ようこそいらっしゃいました」
「アイナさん。お久しぶりです」
「エリーゼ様はまだ戻ってきていませんが中でお待ちしますか?」
「そうですねぇ・・・。少し自分の寮が気になりますし戻ったら知らせてもらっても?」
「かしこまりました」
クロードは自分に割り振られている寮に向かう。
といっても目と鼻の先だ。
鍵をあけ自分の寮に入ると少し埃っぽい。
クロードは生活魔法のクリーンを発動し掃除を済ませる。
室内には最低限の家具が置いてあるだけでなにもない。
クロードはアイテムボックスに普段から物を入れているため貴族の住まうスペースとしては殺風景だ。
椅子に座り読みかけの本を取り出してそれに目を通す。
だが、どこか落ち着かない。
理由はわかっている。
不可抗力といえど長期間ほったらかしにしてしまったエリーゼにどんな顔をして会えばいいのかわからないのだ。
コンコンと扉を叩く音がする。
扉を開ければアイナさんだった。
「クロード卿。エリーゼ様が戻られました」
「知らせてくれてありがとうございます」
クロードは本をアイテムボックスにしまい深呼吸する。
アイナさんが先導する形でエリーゼの寮に入る。
タッタッと足音がする。
足音の正体はエリーゼだった。
エリーゼは勢いそのままに突っ込んでくる。
クロードは優しくそれを受け止めた。
「エリーゼ・・・」
「クロード。クロード。クロード」
てっきり起こられるものだと思っていたがそうではなかった。
「エリーゼ。落ち着いてください。僕はここにいますから」
「うん・・・」
よく見ればエリーゼは泣いていた。
「黙っていなくなって申し訳ありませんでした」
「いいの。こうして無事に戻ってきてくれたから」
エリーゼが落ち着くの待ってから室内に移動する。
出来た使用人であるアイナさんはその間にお茶の準備をすませてくれていた。
「それで、クロード何があったの?」
「ロキを見つけて倒したまではよかったんですけどね・・・」
「ロキをって・・・・。邪神ロキ・・・?」
「そうですよ」
「なんて無茶するの。邪神といっても神を相手に戦いを挑むなんて」
「それが必要なことだと思ったんですよ」
「それで・・・。どうなったの?」
「戦い終わったときにある神が干渉してきましてね。この世界から追放されました」
「追放・・・?」
「えぇ。運良く別の世界にたどり着いて戻ってきたんです」
「そう・・・。なんだかスケールが大きすぎて理解しがたいわね」
「こればかりは運が良かったとしか言えませんね」
もし世界樹に行っていなければクロードはこうしてここにはいなかっただろう。
虚無空間とはそれほど危険な場所なのである。
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