第573話

燻製が出来上がった頃、ファフニールがクロードの元を訪ねていた。


「これは師匠。どうしましたか」


「いや、何・・・。イフの奴がクロードの作った燻製は絶品だとうるさくてな」


「あぁ・・・。なるほど」


どうやら出かけて行ったイフさんはファフニールに自慢しに行ったようだ。


「よろしければ少し持っていきますか」


「おぉ。やはり、出来る弟子は違うな。それも嬉しいがよければ燻製の魔道具の作り方も教えてくれんか」


「構いませんよ」


ファフニールに教えながら燻製の魔道具を組み立てていく。


鍛冶に関して完璧であるファフニールは流石と言うべきか魔道具の作成にも才能があるようだ。


「流石と言うべきか言うことはありませんね」


「ネツァルに昔、手ほどきを受けてな」


「あぁ・・・。お二人は仲が良かったですものね。これで後はチップと燻製したい物をセットすれば大丈夫です」


「おぉ。だが、肝心の素材とチップがないのぅ」


「それでしたら私の手持ちをお分けします」


「何から何まですまんのぅ」


「いえいえ」


二人で話し込んでいたら丁度イフさんが帰ってきた。


「あら、やっぱり我慢できずにきたのね」


「あれだけ言われたらな」


「ところで1つ疑問なんだけどいいかしら」


「なんでしょうか」


「錬金術でも作れるんじゃない」


「・・・・」


「・・・・」


ファフニールさんと2人、固まってしまう。


「イフさん、流石にそれはないかと」


「そうじゃそうじゃ」


かつて地球で料理とは科学だと言った人がいた。


一流の職人は素材の状態、湿度などから調味料などを微調整していた。


しかし、それが出来るのは一握りの人だけだ。


ならば、分量を守れば一定のラインの料理ができるというわけだ。


だが、一言いいたい。


料理を作っていてそれは楽しいのかと。


今世では料理を趣味としているクロードとしては認めるわけにはいかなかった。


「・・・・」


「・・・・」


「はぁ・・・。私が悪かったわ」


「わかればいいんじゃ」


「さて、イフさんのことは置いといて早速試してみますか」


「うむ」


それからクロードはファフニールに肉の大きさやチップの量。


燻る時間をレクチャーした。


「これでいつでも美味しい燻製が食えるの」


クロードとしては限定的とはいえ同士が増えて嬉しい限りだ。


「そうじゃった。クロードは明日もダンジョンに行くのだろう」


「はい。その予定ですが」


「明日は儂も同行する。調整するのに使用者の戦闘力を見ときたいからの」


「わかりました。明日はよろしくお願いします」

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