第564話
イフとクロードは世界樹の601層にやってきていた。
601層に住まうのはハイオークというオークの上位種だ。
ドロップ品としては肉を落とすぐらいで金銭的な旨味は全くない。
しかし、ハイオークはとにかく数が多く経験値を得るという意味ではゲーム時代非常に人気のある狩場の一つだった。
クロードは数匹を倒した時点で違和感を覚えていた。
それは筋力が短期間で増えたことと精霊王がクロードの前世の記憶の部屋を修繕したことにより体と精神がアンバランスになっていた為だ。
それでクロードがハイオークに負けるわけではないのだが・・・。
いくつかの群れを殲滅する頃には違和感もなくなりクロードはハイペースでハイオークを殲滅していく。
階層のハイオークが少なくなれば次の階層に移動する。
そんな感じで狩りを続けるクロードをイフは呆れた様子で見守っていた。
普通に考えれば複数のパーティーが狩りをしても大丈夫なようにハイオークが補充されるのだがそれをたった一人で壊滅させる。
それがどれだけ馬鹿げた戦闘力なのかを考えれば溜息も出る。
今までは精霊を育てるという枷があった。
それが外れたクロードはまさに規格外だった。
結局、クロードが足を止めたのは9階層進んだ610層だった。
しかも、その理由が体力が尽きたからではなく剣を休ませる為であった。
稀代の鍛冶師であるファフニールの作ではあるがここまで酷使することは想定していない。
いくら自動修復機能があるとはいえ限度というものがある。
また、魔物を倒せば成長すると言ってもそこは剣に宿った精霊の仕事だ。
精霊がどのように成長させるか決めるためには落ち着いた時間というものが必要だ。
切れ味という意味では現状で十分である。
なればこそ、クロードがもっと長時間狩りが出来るように耐久力に性能をガン振りする。
その結果生まれたのは頑丈な剣である。
自動修復機能にただひたすら耐久力を求められた結果、後の世に折れない剣と呼ばれるようになる。
今までも大量の魔物を討伐してきたクロードではあるがここ数日の狩りでステータスが大幅に伸びていた。
肉体的な成長もそうだが精霊王が前世の記憶の部屋を修繕したことにより漏れ出ている元から持っていた力に順応出来ているのも大きい。
その力は魔力や闘気とは別物であり何なのかは現状では不明だ。
しかし、急速に力を手に入れなければならないことを考えれば利用しない手はない。
その為に自分自身の内側にも毎日のように潜っている。
クロードは今日もクロから講義を受けるのだった。
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