第563話

「ふあ~ぁ」


クロードは規則正しい生活を送っており朝も弱くない。


しかし、今日はいつもに比べ体が軽く調子がよかった。


それは精霊王が前世の部屋を修復していった結果だった。


北欧の神々が強引に前世の部屋をひっかきまわした結果、本来の力を発揮しきれていなかったのである。


「今日は何を作ろうかな」


クロードの朝は顔を洗ってから朝食を作ることからはじまる。


料理は嫌いではないし食べてもらって喜んでもらえるとなればなおさらだ。


結局、この日の朝食は無難な所に収まった。


あらかじめ焼いておいたパンをトーストしそこにバターを塗って新鮮な野菜とスクランブルエッグにハムを挟んだサンドイッチにコーンスープという組み合わせだ。


食事も終わり食後のコーヒーをイフと楽しんでいるとドアを叩く音がした。


今までこの家を訪ねる者はいなかったのだがイフが代表して応対する。


来客の正体はファフニールだった。


「師匠。お久しぶりです」


「うむ。元気そうだな。今日はお主の剣が打ちあがったから持って来たぞい」


よく見ればファフニールは1本の剣を持っている。


クロードは剣を受け取り早速抜いてみる。


刀身は普通の剣と違い銀色に輝いている。


「おい。ちょっと待て、素材に何を使った」


イフが声を荒げる。


「うん。儂が普通の剣を打つはずなかろう。妖精銀を使った特注品じゃ」


「特注品じゃじゃない。どれだけ貴重なのかわかってるの」


妖精銀は年に少量しか取れない貴重な金属だ。


剣1本を打つのにも何百年分もの期間が必要となる。


「わかっておるよ。だが、どうせ貯めこむだけなのだからよかろう」


「はぁ・・・。使ってしまったものはしかたないけれど・・・」


「ごっほん。剣の説明をしてもよいかの」


「もう好きにしなさい」


「その剣は鞘に戻せば自動的にメンテナンスされる。それだけでなく、魔物を倒せば倒すほど成長するおまけつきじゃ」


「おまけつきじゃじゃないわよ・・・。また、世界のバランスを壊しそうな物作って」


最初は剣に宿った精霊を損なうことなく打ち直すという話だった。


クロードは2人のやり取りを横目に剣のバランスなどを見ていた。


「うん。流石師匠ですね。とても使いやすそうです」


「そうじゃろ。そうじゃろ」


「はぁ・・・。この師匠にしてこの弟子って・・・。もういいわ」


「イフさん。試し斬りに行きたいんですけどいいですか」


「えぇ。武器があるなら問題ないわよ」


クロードは新しい剣を手に入れてご機嫌であった。

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