第556話

「やぁ。クロード。今戻ったよ」


「イフさん。お帰りなさい」


帰ってきたイフの鼻を食欲のそそる匂いが刺激していた。


「何やらまた美味しそうな匂いがしているね」


「時間があったので色々試したんですけど自信作ですよ」


そう言ってクロードはキッチンへと戻り複数の椀とパンのようなものを持って戻ってきた。


椀の中に入っているのは赤や緑、茶色といったスープのようなものだ。


「これはカレーっていう南方の食べ物です。スープにナンっていうこれを浸して食べてみてください」


イフは恐る恐る赤色のスープに浸して食べてみる。


次の瞬間、辛さで目が飛び出るかと思った。


クロードは慌ててで果実ジュースを差し出していた。


「ふぅ・・・。酷い目にあった」


「これでも辛さを抑えたんですけど・・・。ちょっと邪道ですけど蜂蜜を加えてっと」


蜂蜜を加えられたカレーを再び食べてみる。


「うん。これならなんとか食べられそうかな」


イフは果敢にも他のカレーにも挑戦する。


辛かったのは赤いカレーだけで他は野菜の甘さを生かしていたりと大変美味しかった。




「さて、食事も終わったし渡すものがあるんだ」


そう言ってイフが取り出したのは腕輪が2つに足輪が2つとベルトとペンダントだった。


「これは・・・」


「まずは着けてみようか」


クロードは言われるままに全てを身に着ける。


すると体がガクンと物凄い重量に襲われた。


立っているのも難しく床にへばりつくような状態だ。


「魔力を全部に流してごらん」


クロードは言われるまま魔力を流してみる。


すると徐々に軽くなっていった。


とはいえ、全力で魔力を流していなければ再びペタンと床に逆戻りしそうではあるが。


「これはとある戦の神がファフニールに作らせた道具でね。修行用の道具だよ」


「神が修行ですか・・・」


「まぁ、その戦の神はこんなもの着けてられるかってファフニールに投げていたけどね」


神すら投げ出すほどの修行道具とは恐れ入る。


正直、こんなもの着けてどうしろというのか。


恐ろしいペースで魔力が消費されていく。


「いや、君ならなんとかなるかと思ったんだけど、そんなにきついのかい」


「正直外していいなら今すぐ外したいぐらいですけど」


「まぁ、魔力を調整すれば適度な重りになるし魔力を枯渇させれば魔力も鍛えられる。一石二鳥だと思ったんだけどね」


「イフさんなりに考えた結果だったんですね。もう少し頑張ってみます」


こうして神すら嫌がる修行を開始したクロードだった。

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