第553話

まずは果物採取からだ。


イフは通い慣れているらしくそこらに散歩に行くかのような気軽さだ。


時たま魔物が現れるがその度にイフがあっさりと蹴散らしている。


「なんだかご機嫌そうですね」


「やはり見ているだけというのは暇じゃしの。我の頑張っている姿をお主に見せられるしの」


「で、本音は」


「また料理を作って欲しい」


だいぶイフのことがわかってきた。


普段は軽いノリではあるが世界を長いこと見てきた見識を併せ持つとても頼れる人だ。


「ご所望なものとかありますか」


「うむ。甘いものがいいのう」


女性というのは古今東西甘いものが好きらしい。


うん、知ってた。


前にフルーツサンドをご馳走したときも美味しそうに食べてたからね。


今回はあれにしよう。


きっと気に入ってくれるはず。


そんなことを考えつつ採取を続けて天樹の里へと戻ってきた。


イフの家の調理場を借りて早速作業に入る。


イフ待望のメインと言えるデザートづくりを開始する。


まずはワイバーンの卵の卵白と卵黄を分離してボウルに卵黄を入れて解きほぐしながら砂糖を加えていく。


この時、泡立てないのがポイントだ。


次に前に作っておいた生クリームに牛乳を加え火にかける。


十分に加熱できたら卵黄に生クリームと牛乳を少しずつ混ぜながら加えてこし器でこしていく。


大きな泡があれば取り除き容器に入れて蓋をする。


容器を再び低温で蒸して様子をみる。


その間に卵白を泡立て砂糖を少しずつ加えてメレンゲを作成する。


蒸し終わったら荒熱を取り最後に魔法で冷やしておく。


メイン料理は鯨肉を程よい形にカットして各種調味料で味を調えたらフライパンで焼き上げる。


人参やナスにズッキーニ、トマトなどを軽く炒め最後にオリーブオイルをかける。


これで調理は完了だ。


イフがいる居間に料理を運び並べる。


「なんじゃ。甘いものがないではないか」


「食後にちゃんと持ってきますから安心してください」


「今日の料理はなんじゃろな」


「鯨のステーキと野菜の炒め物です」


「ほう。鯨か。また珍しい物を出してくるのう」


世界樹の低層に大量にいたがわざわざ取りに行ったりはしないらしい。


「うむ。美味じゃ。噛めば噛むほど味が染みてくる。それにこちらの野菜の炒め物もうまいのう」


料理はどちらも満足してもらえたようだ。


それではいよいよメインであるあれを取り出すとしよう。


調理場へといそいそと取りに向かった。

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