第544話
ネツァルが治療を施してからクラウスが目を覚ますのに3日かかった。
「うぅ・・・。ここは・・・」
「目が覚めましたか。お名前はわかりますか」
そう言って問いかけてくるのは以前、陣地で助けたの事ある少女だった。
「クラウスだ」
「どこか痛むところは」
「いや、そういうのはないが腹が減ったな」
「貴方が運び込まれて3日も眠ったままでしたからね。麦粥を用意してあります。今持ってきますね」
そう言って少女は席を外す。
クラウスはゆっくりと自分の体を確認する。
最後の記憶は同僚を庇って大怪我をしたところだった。
痛みはどこもない。
少々気怠い感じもするが3日も寝ていればそう言うこともあるだろう。
「お待たせしました。ゆっくり食べてくださいね」
少女から椀を受け取り麦粥を食べ始める。
塩で軽く味付けされているがそれだけではないようだ。
空腹ということもあるだろうが美味しすぎてすぐに完食してしまった。
「もう。そんなに急いで食べなくても誰も取らないのに」
そう言って少女は笑っている。
「世話になった」
そう言って起き上がろうとするクラウスを少女が止めてくる。
「イリウム団長から伝言です。ゆっくり体を休めるようにと」
「そうか・・・。ならばもうしばらく世話をかける」
「はい。喜んで」
少女は時折、怪我人の治療の為に席を外していたが基本的にはクラウスの近くにいた。
今は運ばれてくる怪我人も減っており時間を持て余し気味だった。
「あの・・・。クロードのお兄さんですよね」
「クロードのことを知っているのか」
「私、元々はプロミネンス領の出身なんです」
「そうだったのか」
「クロードの小さい頃ってどうだったんですか」
「小さい時か。歩きはじめるのも早かったし言葉を覚えるのも早かったな」
「小さい時から規格外だったんですね」
「そうだな。今思えば神童に相応しい片鱗は小さい時からあったんだ。両親はそんなクロードを何かと甘やかしていた」
「両親かぁ。ちょっとうらやましいな」
少女は教会関係者だ。
その関係を考えれば孤児である可能性に辿り着いた。
「両親のことを恨んでいるかい」
自然とそう語りかけていた。
「いえ、教会の方々は皆、優しいですし恨んでなんていませんよ」
少女はそういうがその顔には寂しそうな色が見て取れた。
「そうか・・・」
この時、クラウスは少女を救ってやりたいと思ってしまった。
この感情の意味をクラウスはまだ知らなかった。
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