第538話
ゴブリンの出現ポイントに到達した各騎士団は人工ダンジョンへの突撃を開始していた。
一体一体は弱いがとにかく数が多い。
時間はかけられないと、精鋭を惜しみなく投入しゴブリンを討伐していく。
ゴブリンを討伐し抜けた先には饐えた匂いが漂っている。
匂いに顔をしかめながら足を進めると被害者と思われる女性達が囚われていた。
手足は拘束され身動きがとれない状態で現在進行形で行われている非道。
騎士達は怒り容赦なくゴブリンを斬り飛ばす。
同じ人間だというのにどうしてこんなことができる。
女性達の拘束を解き、羽織っていた外套をかける。
歩ける状態ではないと判断し、安全を確保しつつも囚われていた女性達を抱き抱え外を目指した。
救出した女性達を前に王国第一騎士団の団長であるフォーネストは頭を抱えていた。
予想されていたとはいえ囚われていた女性の数が多い。
他のゴブリンの出現地点も放っておくわけにはいかないが女性達を放りだすわけにもいかない。
一度、戻るしかないだろう。
そう考えていた時、背後から声をかけられた。
「失礼、救出された女性達は我々に任せてもらおう」
油断していたわけではないが、気配を感じなかった。
あきらかに手練れだ。
フォーネストが振り返ると覆面をつけた得たいのしれない人物がいた。
「貴方は・・・」
「我は皇帝陛下直轄の暗部だ」
噂には聞いたことがある。
シンラ帝国には凄腕の汚れ役がいることを。
しかし、フォーネストとしても引くわけにはいかない。
「彼女達をどうするつもりだ」
「安心なされよ。奴隷階級とはいえ、帝国の民に変わりない。我らが保護する」
そう男が言った瞬間、覆面をつけた人物が複数現れる。
戦えば負けるとは思わないが大きな被害を受けるだろう。
そう思わされるだけの凄みがある。
フォーネストは剣に手をかけつつ詰問を続ける。
「それを信用しろと」
「我らは数が少ない。事態を知った時、既に手が出せない状態だった。貴殿らの行動に紛れる形で救出部隊が動いている」
「我らを利用したというわけか」
こちらの密偵達が自由に動けていた理由。
それは今回の件を片付けるために泳がされていた。
「皇帝陛下より伝言だ。囚われた人々が解放されれば停戦の用意があるとのことだ」
皇帝の名を出したということは信用してもよいのかもしれない。
なにせ、彼等は皇帝に逆らえない。
契約でそう縛られているのだから。
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