第537話
ゴブリンの出現を止める為、各騎士団は夜陰に紛れゴブリンを迂回する形で散っていった。
密偵達が突き止めていた出現場所を強襲し、これ以上の出現を止めるのが役割だ。
目標の地点はシンラ帝国の奥深くに点在しており相手側に悟られずに強襲するのは難しいだろう。
潜入した密偵達が知っている限りでも潰さなければならないポイントはかなりの数だ。
シンラ帝国側が対応してくるまでにどれだけのポイントを潰せるかはスピード勝負となってくる。
各騎士団の団長は歴戦の猛者であるが全員が厳しい戦いになるだろうという予感があった。
「おやおや、相手は早速動いてきたようですな。騎士団と思わしき集団が陣地を出ました」
そういって語りかけるのはシンラ帝国第二皇子の腹心に収まっている魔人の男、カールマンである。
「ほう、相手は陣地に引きこもり動かない臆病者と思ったが」
「アルカバン様。何か、対策はいたしませんので」
「放っておけ、どうせ奴らにはどうにもできんさ」
「左様でございますか」
カールマンは内心、溜息をついていた。
圧倒的な数があるとはいえ所詮はゴブリンだ。
陣地をいくら攻めても攻め落とすのは難しいだろう。
繁殖実験を繰り返し他の人型の魔物も増やしていたがそちらは圧倒的に数が足りない。
オークはまだいいがオーガクラスとなると苗床が壊れてしまう。
最近では苗床を確保することさえ難しい。
シンラ帝国では奴隷制度が存在する。
侵略された土地の住民は全員奴隷となり奴隷の子は強制的に奴隷だ。
奴隷から抜け出すのは恐ろしく難しい。
シンラ帝国の南部はアルカバンの統治が認められているがその傘下には数多くの貴族が名を連ねている。
貴族達が抱える奴隷を供出させようと思えば可能だろう。
しかし、それは諸刃の剣となりかねない。
彼等は皇帝に忠誠を誓っているのであってアルカバンの資質を常に見極めている。
統治者としての資質なしと判断すれば簡単にアルカバンのことを見捨てるだろう。
現に圧倒的な戦力差があったにもかかわらず先の戦争で敗北を期したせいで貴族連中はアルカバンに対して懐疑的だ。
アルカバンは貴族連中に対して負けたことを理由に褒美を渋った。
正当な報酬を得られなかった貴族達は表面上は協力しているが腹では何を考えているかわからない。
貴族という手足を失ったアルカバンに手を差し伸べたのが人間に紛れ込んでいた魔族のカールマンだった。
甘い言葉に騙され踏み入れてはいけない領域にアルカバンは簡単に落ちていった。
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