第516話

「精霊達を・・・。彼等は大事な仲間なんですが」


ここまで来るのに絆を築いた精霊達を守ろうとクロードはカランの前に立ちふさがる。


「ふむ。精霊達が君を気に入るわけだ。だが、勘違いしないでほしい。上級の精霊の力は君が思っている以上だ。これからも世界樹を攻略するならルールに従ってもらいたいものだな。郷に入っては郷に従えというだろう」


「それでも彼等を引き渡すわけには」


クロードは慕ってくれている精霊達を守る義務があると考えていた。


しかし、それは当の本人である精霊達が否定してきた。


「クロード。ここまで連れてきてくれてありがとう。だけど、僕らは自分達がやらなければいけないことを理解しているんだ。それに上級の精霊になったら力を制御できずクロードを傷つけるかもしれない。僕らはそんな未来は望んでいないんだ」


「わかりました」


「別れを惜しんでるところ悪いんだが君が500層まで辿りつけたら預かっていた精霊達は返すよ。上級の精霊になった精霊達に力の使い方を教えるのも我々の仕事だからね」


世界樹の500層はフロアボスがいる以外にもその外界にハイエルフ達の住まうエリアが広がっている。


彼等、ハイエルフはそこで上級の精霊達に力の使い方を教え共に1000層まで至るのが役目となっている。


とはいえ、実際に1000層まで至ったハイエルフは指で数えられるほど少ない。


世界樹の難易度が高すぎるのもそうだがハイエルフ達に与えられた仕事は実に多岐に渡り数の少ないハイエルフ達はそれらの仕事をこなすので精一杯なのだ。


最近はエルフ達の怠慢で500層より下に出向き精霊達を鍛えあげるという役目もあり完全にオーバーワークだった。


「それでは彼等をよろしくお願いします」


「確かに預かったよ。君ならそう遠くないうちに500層に至るだろう」


そういってカランと上級精霊になれる精霊達は去っていった。




クロードは残った精霊達と200層の安全地帯に留まっていた。


疲労感はそこまで感じていなかったが精神的な疲れというのはどうしても溜まってしまう。


そこでしっかりと休養を取ろうと考えたのだ。


本来であれば世界樹の外、つまりエルフ達の住まう領域まで足を延ばすべきなのだろうが排斥に動いたエルフ達がいたようにエルフ達には歓迎されないだろう。


ということで不本意ながら安全地帯に留まり久々にしっかりとした料理を作ろうと考えていた。


今までは効率を考えすぐ食べられるものや携行食を食べていたが元日本人としてはやはり米を食べたいと思うのは仕方ないことだろう。


米を炊きながら何を作ろうかと頭を悩ませるのだった。

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