第473話
昼食後も森の中での探索は続きスモールウルフの群れに襲われたがクロードが指揮を執る中、槍衾を形成し守備を固め少ないチャンスで突きを繰り出して数匹を仕留め撤退に追い込み自信をつけることに成功していた。
夕方近くまで探索は続き薬草や木苺に木の実を採取したり首尾は上々であった。
村まで戻ったクロード達は成果物を分け合い明日も森に探索に出ることを確認して解散した。
村長の家に戻ってきたクロードはそのまま村長の家の中に入る。
家の中には村長と鉄製の鎧を着こんだ男がいた。
「ただいま戻りました。お客人ですか」
「おお。クロード殿、丁度良い所に」
「貴方がこの村に滞在しているという冒険者のクロード殿ですか。私はこの地を治めるご領主様に仕えるスタロンです」
「これはご丁寧に。クロードです」
「ご領主様の命でこの地の住民を退避させよと言われてきたのだが来てみれば村は防壁に囲まれ下手な場所よりも安全な状況。どうしたものかと村長殿と相談しておりましてな」
「スタロン殿がおっしゃる通り非常に困っております。ご領主様の命令は絶対ですがこの村以上に安全な場所は領都ぐらいでしょう」
「計画では兵士を派遣している村にこの村の住民を分散して保護する予定でした。ですがこの村の状況を考えればその必要はないでしょう。ここで問題となるのはご領主様の命令を無視できないということです」
「なるほど。それでしたらどこまで効果があるかはわかりませんが私が一筆したためましょう」
「高ランク冒険者であるクロード殿が口添えしてくださるならご領主様も耳を傾けてくださるかもしれませんな」
クロードは早速手紙を書き始める。
手紙には村が困っていた為、勝手に防壁を築いてしまった謝罪からはじまり現在の村の状況の説明。
そして署名にはこう記してあった。
ゲルマン王国辺境伯 クロード・フォン・プロミネンス と。
外国貴族であると正体を明かした上でのこの手紙を受け取った領主は大いに悩むこととなる。
勝手に領内の村に防壁を築かれたのは内政干渉とも捉えられる。
しかし、この行動のおかげで守るべき領民が守られているのも事実。
領主はゲルマン王国の存在を知らなかったため外務省にこの手紙を持ち込み王国上層部の判断を仰ぐこととなる。
この時この国担当のゲルマン王国の密偵達はクロードの届けた指令書に基づきこの国の外務省と接触を果たしていた。
クロードが各国に散らばる密偵に渡した指令書には人類の危機の為、協力してこの事態を解決すべく友好的な接触を図るように記されていたのであった。
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