第447話

屋敷に戻ったクロードは父様であるファイネル。


そしてニーパス領の留守を預かる兄様のファールファイトを交えて冒険者学校の構想を詰めていた。


「言いたいことはわかった。しかし、プロミネンス領では難しいかもしれないな」


「何故ですか」


「優秀な騎士団を抱えている弊害というべきかな。冒険者組合との繋がりが薄すぎる。我々が冒険者学校を作ると言っても冒険者組合は首を縦に振るとは考えにくい」


「では、ニーパス領ではどうでしょうか」


「鉱山都市グローリアでの冒険者支援の件があるからね。他領と比べれば実現しやすいだろうね」


「その言い方だと問題があるように感じるのですが」


「実力のある者を家臣として採用しているのはクロードも知っているよね。冒険者組合は元冒険者と辺境伯家との契約だから表立って非難はしていないけど面白くは思っていないのは事実だね」


「そこに冒険者学校を開けば恩を受けた冒険者は辺境伯家の影響を少なからず受ける。そう心配する人が出るということですか」


「そういうことだね。いきなり学校を開くのではなく冒険者組合に依頼という形で講義を設けることから始めたらどうかな」


「実績を作りそこから信頼を積み上げることで最終的に学校を開くということでしょうか」


「これならばプロミネンス領でも受け入れられるんじゃないかな」


「ファールハイトが言うことも尤もだな。資金には余裕があるしそちらの方面で検討してみよう」




その後、話し合いの結果、Bランク冒険者を指導者として新人冒険者への講習を依頼する形で話はまとまった。


全ての新人冒険者をカバーすることは難しいだろうが冒険者として最低限知っておくべきことを学ぶ機会を与えられたことで少しでも新人冒険者の生存率を高めることを目的としたこの取り組みはプロミネンス侯爵領とニーパス領で同時期にはじめられることとなる。


新人冒険者もお金を貰って技術を習得できるということで受ける者も出たが殺到するほどではなかった。


講義の内容も講師役を引き受けた冒険者によってバラバラであり当たり外れがあったのも良くなかった。


ファールハイトは人をやり講義を受けた新人冒険者から話を聞き評判の良かった冒険者に指名依頼を出すことで対応しそれだけでなく講師役の冒険者を領主館に呼び出し情報を共有し指導マニュアルと言ってもよい物を作り出していた。


こうした努力の甲斐もあり新人冒険者の講習会は少しずつではあるが成果を出しはじめたのである。

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