第436話

「クロード。いらっしゃい」


「クロード。何やらごちゃごちゃ身に着けているけど趣味が悪いわよ」


「これですか。身体能力や魔力を抑え込む魔道具なんですけどダメですかね」


「チャラチャラした感じで成り上がり者とか不良に見えるわね」


「そこまでダメダメですか」


クロードはそう言って指輪と腕輪に足輪を外してアイテムボックスに収納する。


「それで皆は何の話をしていたんですか」


「クロードのことで盛り上がっていたのよ」


「僕のことですか」


「お母様からクロードの小さい頃のお話を聞いていたんです」


「エリーゼ様からは学園に入ってからのクロードの話をね」


知らない間にクロードの情報交換が行われていたようで何となく居心地の悪さを感じてしまう。


「そんなところに立ってないで座りなさいな」


母様に促されて着席し控えていた使用人から給仕を受ける。


「それで呼んだのには何か理由があるのでしょう」


「帰ってきてからのクロードとエリーゼ様の行動を聞くと二人だけで過ごす時間も必要じゃないかって思うのよ」


そう言われると教会の子供達を優先しすぎてエリーゼを蔑ろにしていたかもしれない。


「不満があるわけじゃないのよ。ただ、婚約も決まったことだしもうちょっと二人だけの時間が欲しいってだけで」


「善処します」


「クロードの場合放っておくと次々に何かしらやらかすからね」


「問題児みたいな言い方はやめてくださいよ」


「あら。そう言ってるのよ。前に帰ってきたときも魔道具の開発に明け暮れてほとんど私の相手をしてくれなかったじゃない」


「うっ・・・。そう言われるとその通りなのですが何か釈然としません」


「お母様。あまりクロードを虐めてはダメですわ」


「エリーゼ様は優しいわね」


ここでクロードは形勢を逆転する為に秘密兵器をアイテムボックスから取り出す。


コーヒーの焙煎工場で手に入れたチョコレートの試作品である。


「こちらをどうぞ」


「あら。何かしら」


「試作品ですがチョコレートというお菓子ですよ。健康にも良いとのことなので」


女性陣は恐る恐るつまみ口の中に入れる。


「甘くて美味しいですね」


「わずかな苦みもあってこれならいくらでも食べられそうですね」


「お口にあったようでよかったです」


「これはどこで手に入るのかしら」


「コーヒーの焙煎工場から売りに出されるはずですよ」


「それはよい話を聞いたわ。早速手配させましょう」


「お母様。ズルいですわ」


「貴方達の分も確保するから安心なさいな」


こうしてチョコレートを出しに流れを変えることに成功したのだった。

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