第434話
工場の視察を終えて屋敷に戻ったクロードは工場の焙煎設備を参考に小型の焙煎用の魔道具を製作していた。
肝になるのは温度管理と全体をムラなく焙煎するための機構だ。
何度も出来上がった焙煎機に豆をセットしては焙煎具合を確かめ失敗しつつも焙煎機は完成した。
クロードは完成した焙煎機の魔道具を持って再び焙煎工場を訪れていた。
自分としては完璧な物を作ったつもりだが専門家の意見を聞きたいと思ったからだ。
「あれから数時間しかたっていないのにもう完成したんですか」
「えぇ。ベーテの意見を聞きたいと思いまして」
クロードは焙煎機の魔道具に豆をセットして稼働させ出来上がった豆でコーヒーを入れる。
「なるほど。悪くない味ですね。ですが拘る方からは不満が出るかもしれません」
「どうしたらいいでしょうか」
「焙煎具合を変更できるといいのですが」
「なるほど。焙煎具合ですか」
「うちの工場でも浅炒り・中炒り・深炒りの3種類を使い分けています」
「では、焙煎具合を変更できるように調整してみましょう」
クロードはその場で焙煎機の魔道具を改良して再びコーヒー豆を焙煎しコーヒーを淹れてみる。
「今度はどうでしょうか」
「これなら大丈夫でしょう」
「ふぅ。合格を貰えて何よりです」
「ところでこの焙煎機はどうするのでしょうか」
「そうですね。魔道具ギルドに生産を依頼することになるでしょうか」
「出来ればうちの商会で独占したいのですが」
ベーテがこういうのも頷ける。
商会を通さず焙煎機の魔道具が広がれば打撃を受けるのは間違いない。
「それでは独占契約を結びましょう。ずっとというわけにはいかないと思いますが数年保持できるだけで利益はそれなりに入ってくるはずです」
「ご配慮いただきありがとうございます」
「それでは魔道具ギルドに向かいましょうか」
「はい」
クロードとベーテは早速魔道具ギルドに向かい手続きを行う。
「ようこそ。魔道具ギルドへ。本日のご用件は何でしょうか」
「新しい魔道具の登録と独占契約をしたいのですが」
「かしこまりました。少々お待ちください。今担当の者を呼んでまいります」
そういって受付の人は奥に下がり担当の者が出てくる。
「お待たせいたしました。どうぞこちらへ」
担当の者は応接室にクロードとベーテを案内する。
「新しい魔道具とのことですがどういった物でしょうか」
「コーヒー豆を焙煎する専用の魔道具となります」
「なるほど。コーヒーは貴族の方々を中心に人気ですからね」
担当者としても乗り気なようで安心するクロードなのだった。
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