第392話

ゲルマン王国とシンラ帝国の話し合いは平行線だった。


ゲルマン王国は侵略し獲得した北方の国々の領土を返還するように求めシンラ帝国がそれを突っぱねる事態となっていたのである。


ゲルマン王国も全ての領土を取り戻せるとは考えていないが北方の国々との関係を考えればここで譲歩するわけにもいかない。


シンラ帝国も失った将兵の命と国民感情を考えれば一歩も引くわけにはいかない状況となっていた。


両国とも本格的な激突を望んでいるわけではないがそれも辞さずという態度を貫く構えだ。


ゲルマン王国としては航空騎兵の配備も進み運用方法も含め研究がなされている。


時間はゲルマン王国の味方でありこのまま解決できぬならシンラ帝国を相手に実戦テストを行うのも悪くないという意見すらある。


それに対してご自慢の重装歩兵を失ったシンラ帝国はこのままぶつかり合えば勝てぬとまではいわないが苦戦は免れないのは明らかだった。


折れたのはシンラ帝国側となった。


交渉を担当した者は悔しさを隠し切れていなかったが獲得した領土の8割を返還し残り2割を中立地帯とすることで合意したのである。


交渉は無事締結され賠償金を支払う形で捕らえた指揮官を含めた捕虜は返還されることとなった。


返還された指揮官は『アイシャルリターン』と叫びそれに対してその場にいた兵士は『ご旅行ならいつでも歓迎です』とジョークで返し指揮官は顔を真っ赤にして帰っていったという。




シンラ帝国との交渉も無事終わりゲルマン王国では戦役に参加した者を集めて叙勲式が行われていた。


「クロード。そなたの活躍は見事であった。敵重装歩兵を切り崩し中央突破をして敵指揮官を捕らえ短期間で戦争を終えるきっかけを作った。それゆえに勲章と報奨金をそなたに送ろう」


「謹んでお受けします。これからも国のために全身全霊をとして尽くす所存です」


「これからもそなたの働きに期待する」


その後も王宮騎士団の団長はじめ多くの軍人が称えられ褒美を受け取ったのだった。


叙勲式が終わりその後は立食式のパーティーが開かれた。


下手をすれば全面戦争も覚悟していただけに軍人達はそれが回避されたこともあり大いに飲んで食べ羽目を外していた。


「クロード卿も酒が飲めるとよかったのだが残念だ」


「あはは。さすがに未成年で飲酒はまずいですからね。代わりに料理を楽しんでいますよ」


「勝利の美酒は格別だぞ」


王宮騎士団の3人の騎士団長もこの時ばかりは喜び大いに飲んでいた。

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