第370話

クロードは夕食も終わり温泉につかっていた。


以前会った男性も酒を飲みつつ温泉に入っている。


「よう。またあったな。連れの嬢ちゃんが猿共に大人気らしいじゃないか」


「えぇ。なぜか列までつくって対戦待ちまでしていますよ」


「それに対してお前さんの評価は下がりまくりだな」


「他人の評価とかは気にしていないからいいんですけどね」


安全地帯でもよく聞く話だ。


エリーゼが頑張っている一方で何もせずにただ見ているだけの子供だと言われているのだ。


それに対してエリーゼは怒っていたりするのだが。


「嬢ちゃんの修行は順調といったところか。強くなりたい理由があるんだろうが1週間以上も続けられるのは大したもんだ」


周りの人々は消耗品や食料の買い出しに街まで降りたりしているようだがクロードのアイテムボックスには大量の食料品があるので関係がなかった。


「まぁ。わかってる奴らはわかってるけどな。猿共は強さに敏感だ。武芸者として己を鍛える習性があるが敵わない相手にはそもそも勝負をしかけねぇ」


クロードは湯霧山に入ってから1度も武道猿に勝負をしかけられていなかったのである。


「戦いを挑まれていたらここまで余裕をもって見守っていられなかったので助かってますけどね」


「そういうもんか」


そこに男の武芸者達が温泉につかりにくる。


「なんだ。女に戦わせて見てるだけの軟弱者じゃねーか」


「お。ほんとだ。湯霧山の品位が下がるから消えてくれねーかな」


そこに酒を飲んでいた男性が立ちふさがる。


「おいおい。酒がまずくなるような話をするんじゃねーよ」


「酒飲んでるおっさんには関係ないだろ」


「相手の実力も測れん武芸者擬き共が。俺が教育してやろう」


男性は酒の瓶を置いてずかずかと武芸者達に近づいていく。


男性の顔は憤怒と言っていいほどの表情だ。


男性の顔を見て武芸者達は思い当たる相手があったのだろうか恐怖に包まれている。


「あんた。鬼島津か」


「おう。俺のことを知ってるとは感心だな。いっちょもんでやろう」


鬼島津と言われた男性は素手で男達の顔を掴むと放り投げ武芸者達は体を壁にめり込ませていた。


「ふん。一発で駄目だとはな。受け身も取れん中途半端な連中だぜ」


鬼島津と呼ばれた男性は戻ってくると酒を飲み始めた。


「ご迷惑をおかけしたようですみません」


「何。俺が気持ちよく酒を飲みたかったからしただけだ」


鬼と呼ばれていた先ほどとは違い穏やかな表情をしていた。


クロードはアイテムボックスから酒を取り出し贈呈する。


「よかったらこれも飲んでください」


「おう。悪いな。もらっておくぜ」


クロードは先に上がったが男性の酒盛りはまだまだ続くようだった。

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