第277話

ネツァルとクロードはお互いの研究成果を報告しあい大いに盛り上がっていた。


二人の研究の成果を合わせれば転移門の実用化も難しくないのではないかと思わせるほどだ。


コンコンと扉がノックされる。


「クロードが帰ってきていると聞いてね」


「父様。お久しぶりです」


「学園にはちゃんと言って出てきたのかな」


「いえ。研究の成果を報告したら帰るつもりだったので」


「そうか。なら夕飯を食べたら帰りなさい。御飯は用意させているから」


「お心遣いありがとうございます」


「ネツァル殿もたまにはどうだね」


「お言葉に甘えさせていただきます」


3人で食堂に移動すると母様は席に着いていた。


「クロード。帰ってきてるなら先に顔を見せてほしかったわ」


「すみません。母様」


「愚痴は後にして食事にしようじゃないか」


「父様。よかったらこちらのワインをお試しください」


クロードはスパークリングワインをアイテムボックスから取り出して父様に手渡す。


「これは悪いね。早速飲ませてもらうよ」


父様は使用人に手渡して封を開けさせてグラスに注がせる。


「なんだか泡がいっぱいでているね」


「試飲してもらった人の話ではさっぱりして料理とよく合うとのことでした」


父様は一口スパークリングワインを口に含む。


「ふむ。この泡の刺激はいいね」


使用人は母様とネツァルさんにもスパークリングワインを提供していた。


「なるほど。この刺激が肉などの油を押し流してくれるというわけじゃの。よく考えられておるの」


「クロードにはいつも驚かされるわね」


「製造する魔道具も説明書と共に王都から送ったのでもう少しで届くはずです」


「気を使わせてすまないな」


「いえ。僕がしたくてしていることですから」


クロードはファールハイト兄様のもとにも炭酸を注入する魔道具を手配していた。


「そうか。今は食事を楽しもう」


料理長の料理は相変わらず美味しく食が大いにすすんだ。




食事も終わったクロードはしばし団欒の一時を過ごした。


「いつでもこれるとはいえあまり学園を抜け出さんようにな」


「はい。父様」


「クラウスやアイリスにもよろしくね」


「それでは僕はそろそろ帰りますね」


クロードは父様と母様に見送られて学園の寮へと転移魔法で飛んだのだった。




学園の寮に戻ったクロードは早速ネツァルさんの研究結果を元に簡易的な転移門の試作品づくりをはじめる。


転移距離が伸びなかった原因の一つは魔石の出力不足ではないかと思っておりクロードが開発した方法を使えば克服できるのではないかと考えていた。




当然のことながら夜更かしをしたクロードは翌日の授業を欠伸を噛み殺しながら過ごすこととなる。

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