第248話

ロマニア・フォン・クラリーネはゲルマン王国の侯爵である。


同じ侯爵家であるプロミネンス家に対抗意識を燃やしていた。


次男であるハバロフと同じ年齢でありながらトントン拍子に辺境伯まで成り上がったクロードが気に入らなくてしかたなかった。


10歳の子供に国の重鎮である辺境伯を任せるなど国王の正気を疑ったが今まで重要視されてこなかったニーパス領の繁栄を見る限り国王の判断は間違っていなかったのだと思い知らされる。


今ではクロードの事業は国中に拠点を構えて利益をあげているほどだ。


多くの貴族が魔人のせいで財力を減らす中羨ましい限りだ。


クラリーネ侯爵領は侯爵家にふさわしく広大な領土を持っているが魔人達が暗躍するせいで兵力が足らずしかたないので冒険者達を雇ったがこれがまた金がかかるのだ。


ロマニアを中心とする貴族派閥は全員戦力の確保に苦労しているのに対してプロミネンス侯爵家とプロミネンス辺境伯家は周辺の貴族に戦力を送る余裕すらありそれがまた妬ましい。


ロマニアもただ手を拱いていたわけではなく手を打っているが効果が小さいのが現状だ。




そんな中冷蔵庫という新しい魔道具が生まれた。


情報を仕入れる速度も貴族には大事なことである。


ロマニアは早速購入したわけだが魔道具ギルドに発案者を聞くとクロード・フォン・プロミネンスであり気に入らない相手の作だと知ることとなる。


魔道具自体は素晴らしい。


だが次々と手柄を立てるクロードが憎たらしくて仕方なかった。


自分も何か手柄を立てられないだろうかと思案するもののそう簡単に思い浮かぶのなら苦労はしない。


今は出来ることを確実にやるだけだと自分を戒め仕事にとりかかった。




王宮から通信の魔道具なるものが届いた。


この魔道具を使えば離れた者同士が会話できるのだという。


しかし開発者を聞いてどうしても嫉妬の炎にかられてしまう。


「クロード。クロード。クロード。またしてもこいつか。どれだけ功績を重ねれば満足するんだ」


新しい通信網が出来上がるのは素晴らしいことだ。


だがこの功績を認めてしまえば私は自分が無能であると認めるようなものではないか。


冷静であらねばならぬと思うがどうしても嫉妬してしまう。


次男であるハバロフと同い年であることを考えて凡庸な息子とどうしても比べてしまう。


プロミネンス侯爵家と自分の子供達はどこが違うのだと思わずにはいられない。


子供達を愛してはいるが優劣の差ははっきりとしている。


欲しがる物は与え教育もしっかり行ってきた。


子供達を比べるのはよくないとはわかっていても考えてしまうのを止めることができなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る