第246話

王宮から通信の魔道具の大量生産を請け負ったクロードだったが職員室を訪れていた。


エリーゼから言われた貴族当主としての気構えを聞くためである。


「レイシャ先生。こんにちは」


「こんにちはクロード君。どうしました」


「エリーゼから貴族の当主として自覚が薄いと言われてしまいまして」


「なるほどね。確かに貴族の当主とは思えないほど気軽に動いているわね」


「それで高等部の授業にそういった授業があるって聞いたんですけど」


「そういうことならちょっと待ってね」


レイシャ先生は一人の教師を呼びに行く。


「こちらはフローレンス先生よ」


「クロードです」


「君がクロード君か。神童ともてはやされているから苦手な教科はないと思っていたが私の助けを必要としているのは喜ばしい限りだね」


「よろしくお願いします」


「貴族当主として自覚が足りないとのことだったがまずは簡単な質疑応答からはじめよう」


フローレンス先生が質問することに答えていく。


「なるほど。これは確かに貴族当主としては危ういね。放課後私の時間が空いてるときに特別授業をしてあげよう」


「ありがとうございます」


「今日は時間はあるのかな」


「大丈夫です」


「ならば早速最初の授業を行おう」


「はい。よろしくお願いします」


こうしてクロードは貴族当主としての心構えやルールにマナーを学んでいくこととなる。




フローレンス先生の特別授業を終えたクロードは寮に戻り休むことなく通信の魔道具の生産を行っていた。


材料に関しては大量に所持しているので足りなくなる心配はない。


「材料の心配はないけどもっと小型化したいな。と言っても今は生産優先だけど」


宰相のリッチマンからは出来る限り大量にと頼まれているので時間の許す限り制作を続ける。


作業を続けていたクロードはお腹が空いたことで作業の手を止めるが辺りはすっかり真っ暗になっていた。


「明日も学園だし夕食を取ったら寝ないと」


慌てて食事の準備をして床に入るのだった。




次の日教室に入るとすぐに多くのクラスメイト達が寄ってくる。


雑談しながら過ごしているとレイシャ先生がやってくる。


「クロード君。ちょっといいかしら」


「なんでしょうか」


「フローレンス先生から渡してほしいって頼まれたのよ」


何か持っているなと思ったらクロードのための教材だったようだ。


「わざわざありがとうございます」


「いいのよ。担任としてしてあげられることは少ないしね」


数冊の本を手に席に戻るとエリーゼが話しかけてくる。


「それは何かしら」


「貴族としての心構えやルールにマナーをまとめた本みたいだね」


「クロードは何でも出来るからそうやって新しい物にチャレンジしている姿を見るのは新鮮ね」


「僕にもできないことはいっぱいありますよ」


「そういうことにしておくわね」


雑談を切り上げて次の授業の準備をするのだった。

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