第215話

「はっ・・・。えっ・・・」


クロードを取り調べをしていた衛兵は貴族証を見て驚いている。


「僕と一緒にいた女の子は第10王女のエリーゼ王女殿下です」


シスの街は天領であり王の治める土地である。


その娘であるエリーゼを不当に扱えば衛兵の首など簡単に飛ぶだろう。


「少しお待ちください」


衛兵は恐るべき速度で部屋を出ていき一人の男を連れて戻ってくる。


「紋章官。この貴族証が本物か確認してほしい」


「少しお待ちを。プロミネンス侯爵家の紋章に似ていますが貴族の爵位を示す部分は辺境伯のものですね」


「ということは偽物か」


「いえ。プロミネンス侯爵家から辺境伯が出たと通達がきていましたから本物と考えてよろしいかと」


「改めて僕がクロード・フォン・プロミネンス辺境伯です」


騒ぎが起きて取り押さえた者は辺境伯であり連れはこの国の王女だという。


衛兵の顔はみるみる間に青くなる。


「とりあえずエリーゼを迎えにいってよいですかね」


「はい。こちらです」


衛兵の後に続いてエリーゼのいる部屋へと向かう。


「だから何度も言っているでしょ。クロードは襲われたから相手にしただけだって」


「そうはいうがな嬢ちゃん。坊主が暴力を振るったのは事実なんだ」


言い争いをしている途中だったがクロードは平然と話しかける。


「エリーゼ。元気そうだね」


「クロード。解放されたのね」


「どうして容疑者を連れてきた」


怒る男の元にクロードを担当していた衛兵が急いで向かい事情を説明する。


怒っていた男も顔を青くしながら確認してくる。


「エリーゼ王女殿下でいらっしゃいますか」


「えぇ。エリーゼ・ド・ゲルマンよ」


「大変失礼しました」


衛兵達は全員土下座で謝罪をしている。


毒気を抜かれたのかエリーゼは困惑しつつ対応する。


「もういいわ。それより私達を襲ってきた相手を捕まえて頂戴ね」


「はい。必ず捕まえますのでご容赦ください」


「それにしてもエリーゼ王女殿下。護衛も連れずに街に出るなど危険です」


「護衛ならクロードがいるから平気よ」


衛兵たちは大の大人である男達を簡単に倒したクロードの存在を思い出す。


結局二人のことを見送ることしかできなかった。




その頃逃げた男達はアジトに戻り人を集めていた。


「あの小僧。舐めた真似しやがって。絶対許さねぇぞ」


「いくら強いと言っても餓鬼だ。これだけの人数を集めればなんとかなるだろ」


「しかしいくら人を集めても居場所がわからなきゃどうしようもないぞ」


「仲間の一人が衛兵達に連れていかれる所みてた。衛兵詰め所を見張ってれば大丈夫だ」


荒くれ者達の壊滅のカウントダウンはこうしてはじまったのである。

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