第206話

いよいよ武闘祭も大詰めの決勝戦である。


クロードの前に立っているのはクラウス兄様だった。


お互いに何も語らず審判の開始の合図を待っている。


クロードは今までと同じように帯剣したまま抜刀術の構えをとる。


それに対してクラウス兄様は正眼に剣を構え迎え撃つ体勢だ。


「それでははじめ」


審判の合図でクロードは抜刀術を放つがクラウス兄様はバックステップすることで射程外に逃れる。


クロードが剣を振りぬいた形で固まったのを確認してクラウス兄様が飛び込んでくるがクロードは振りぬいた勢いのまま体を回転させることで連撃を繰り出す。


クラウス兄様は慌てることなく剣で受け威力を殺す。


正面で向き合う形になりクロードは一度距離を取るためにバックステップで下がるがクラウス兄様は逃がさぬと言わんばかりに追従してくる。


距離を開けるのを諦めたクロードは即座に反転して突きを放つ。


クラウス兄様はその突きを剣で受け流す。


クロードは勢いのままに突き抜けクラウス兄様の背後を取ろうとするが今度はクラウス兄様が距離をあけるべく前進する。


試合は仕切り直しとなるがクロードはこの状況を楽しんでいた。


王宮騎士団のもとで鍛えられているとは思っていたが前に戦った時とは別人である。




観客達は二人の戦いに見惚れていた。


激しい攻防を繰り返す二人の様子に興奮するように話し合う。


「クラウスの奴ちょっと見ない間に腕を上げたな」


「私達の試合とは別次元ね」


だが観客達はこの後衝撃的な場面を見ることとなる。




クロードは怪我させないように力をセーブしていたがクラウス兄様の様子を見て少し緩めることにしたのである。


クロードは無造作にお互い攻撃できる距離に近づくと連撃を繰り出していく。


それに対してクラウス兄様は剣で防御するが徐々に攻撃速度をあげていく。


次第にクラウス兄様は動きについていけなくなり必死に回避するが無情にもクロードの剣がクラウス兄様に突き刺さる。


「はぁはぁ。参ったな。完敗だ」


「クラウス兄様がそこまで強くなっていて驚きました」


「伊達に騎士団で扱かれていないさ。とは言え。手加減されていてこれではな」


「ばれてしまいましたか」


「試合であって殺し合いではないからな。怪我しないように配慮していたんだろ」


「見抜かれるとは僕もまだまだですね」




「それでは本年度の武闘祭はこれにて閉幕とする。素晴らしい技術を見せてくれた皆に感謝する」


こうしてサイネル理事長の言葉で武闘祭は終わったのである。

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